第6話 お金と光魔法

 翌朝目を開けると、膝の上にユキが丸くなって寝ていた。


 いつの間に来たんだろうと思いながら、ユキを起こし立ち上がると。


「起きたか、ロナン草集めておいたぞ」


 朝食の支度をしていたザックが声をかけてきた。


「ありがとうございます。おはようございます」

「キュッ!」

「おう、2人ともこっちに来い飯を食ったらアイロスに向かおう」


 ザックは、一晩中見張りをしていたのに眠そうな様子が見られなかった。


 ザックはテキパキと朝食の干し肉とスープを用意し渡してくれた。


「すいません、何から何まで」

「いやいい、こちらからお願いがある」

「お願いですか?」

「夕べの酒を分けてくれないか?」


 なるほど、酒か流石酒好きな種族といったところか。


「いいですよ」


 アイテムボックスから1ケース出して気づいた。1ケースしか買ってないはずなのに、もう1ケースがアイテムボックス内にある気がする。試しにもう1ケースだしてみるとやっぱり出てきた。でもまだアイテムボックス内にある気がする。


 頭上に“???”が浮かぶ中、創造神ユスチナが“持ってきた物に関してはいくらでも増やせるので問題はないのです”と言っていた。こうやって増殖するのかな?

 

 試しに夕べ使ったスコップを思い浮かべると、買った分の1個じゃなく2個ある気がする。とりあえず、持ち込んだ物資は無限に使える事が判明した。薬とかケチらずに使えるならそれでいい。


「こんなにくれるのか?」

「いいですよ」


 無限に増える酒だし問題ないだろう。


「ならば買い取る形でいいか?」


 思えばこの世界のお金は持っていないな、ここでこの世界のお金を貰えるならそれでいいかも。


「お願いしていいですか?あと、この世界のお金について教えてもらえると助かります」

「お安い御用だ」


 その後、缶チューハイを元にこの世界の貨幣について色々と教わった。


白銀貨   1,000,000円相当

大金貨   100,000円相当

金貨    10,000円相当

大銀貨   1,000円相当

銀貨    100円相当

銅貨    10円相当

石貨    1円相当


 缶チューハイ1本大銀貨1枚で買い取ってくれることになった。ザックは、未知の金属があるからもっと価値があるとか言っていたが、それ以上は貰わなかった。1ケース24本、2ケースで48本分を、自分が細かいのを持っていないからという理由で合計金貨5枚で引き取ってもらった。


「ありがとうございます」

「いやいい、こちらこそ安く譲ってもらったからな」

「ところで誠明、お前さん光魔法の使い方は解っているのか?」

「全然……、一応浄化で色々な物を綺麗にする事が出来るくらいですか?」

「ふむ、光魔法に攻撃魔法はないが、ライトボールで光源を作ったり、今おまえさんが言った浄化はアンデットや呪いを消滅させることが出来る」


 アンデット……、ゾンビ映画みたいな事がおきるのか?


「使い方は?」

「イメージして詠唱すれば使える、たまに詠唱なしで使う者も居るがな」


 昨夜ユキの傷口の時はただ“浄化”と言っただけだった気がするが、ちょっと試しにライトボールが使えるか試してみるか。


「ライトボール」


 と、言うと目の前に野球ボール大の光の玉が現れた。


「無詠唱が出来るのか……」

「みたいですね……」


 ライトボールを見てて思った。これ手術するときの光源として使えそうな気がする。


「ライトボール・ライトボール・ライトボール・ライトボール・ライトボール・ライトボール」


 目の前に7個の光の玉が現れた。試しに1つ1つ位置をずらしてみたりすると、思い通りに動いてくれた。これは使える、お腹を切り開いた際に、患部に影を作らないように位置調整ができる光源とか優秀過ぎる!この部分は懐中電灯とかランタンで何とかするしかないと思っていたが、光魔法は思っていた以上に使える!


「教える必要がなさそうだな……」

「いやいや、教えてもらわなければ、ライトボールなんて知りませんでしたし、浄化とライトボール以外になにかあります?」

「いや、外れ属性と言われるくらいだからな、それ位しか知らんな、教会やエルフ達ならもっと知ってると思うが、一般的に使われるのはその2つだ」


 光源と除菌、消毒として使えるなら医者としては当たりの魔法だけど!


「そうですか」


 その後、朝食を済ませ、野営地撤収準備をしていると、先の缶チューハイ48本が消えていた。


「ザックさんもアイテムボックス持ちなんですか?」

「いや、わしはマジックバッグだ、アイテムボックスよりは要領が小さいがが便利なものだぞ」


 そう言うと、ザックの腰にあるウェストポーチの様な革製カバンから色々な物を出し入れして見せてくれた。


「へぇ」


 アイテムボックスが無ければ必需品になりそうだな。

 色々雑談しながら撤収準備を終えてアイロスに向かって歩き始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る