第4話

「どういたしまして。ところでお前は何者なんだ?」

「俺は、伊達輝宗だ」

「伊達輝宗?」

「ああ、俺は奥州探題に任命されたんだ」

「へぇ、すごいじゃないか」

「そうか、ありがとな」

「それで、どうして倒れたりしたのさ」

「それは……」

と、その時部屋の外から足音が聞こえてきた。そして勢い良く襖が開かれた。そこに立っていたのは、

「父上!ご無事でしたか!」

と叫んだのは政宗だった。

「おお、小次郎。心配かけたな」

「いえ、私は大丈夫です。それよりも、一体何があったのですか」

「実はな……」

と、伊達親子が話し始めた。

「なに、黒死病だと!?」

「ああ、この国でもかなり蔓延しているようだ」

「なんてことだ」

「そこで、頼みがある。俺の代わりにこの国を治めてくれないか」

「しかし、私には荷が重すぎます」

「そんなことはない。お前はこの国一番の武将になる男なのだぞ」

「分かりました。やってみましょう」

「頼もしいな。よろしく頼む」

「はい」

二人は固く握手を交わした。

「じゃあ、頑張ってな」

と言って僕はその場を去った。

「待てよ」

と、またもや引き止められてしまった。今度は何だろう。

「まだ何かあるのかい」

「ああ、お前に礼を言いたくてな」

「お礼?」

「この国を救ってくれたこと、感謝するぞ」

「別に、僕は何もしていないよ」

「そんなことは無い。お前が来てくれなかったら、きっと国は滅んでいた」

「そうなの?まあ、とにかくこれからも頑張れ」

「ああ、任せておけ」

「それではさらばだ」

と言って立ち去った。

その後、僕は自分の部屋に戻ったのだが、そこには誰もいなかった。あれ?おかしいな。みんなどこに行っちゃったんだろう……と不思議に思っていると、廊下を走る音と共に、誰かが部屋に飛び込んできた。

「兄貴!大変だ!」

と叫んでいるのは、政宗だった。

「どうかしたのか」

「大変なことになった。すぐに来てくれ!」

「分かった。すぐ行く」

政宗の後に続いて部屋を出た。するとそこには、大勢の人々が集まっていた。

「一体何事ですか」

と聞くと、政宗が答えた。

「今、城の外で戦が起こっていて、援軍を要請されたのだ」

「なるほど、それで、その相手はどこの国なんだい」

「それが分からないんだ。突然攻め込まれてきて、皆応戦しているんだ」

「なるほど、状況は理解できた。だけど、なんで君がいるんだ?」

と政宗の後ろに隠れている女の子に向かって言った。すると彼女は恥ずかしそうにして、こう呟いた。

「だって、政宗様と一緒に戦いたかったんだもん……」

「なるほどね。じゃあ、一緒に行こう」

「うん」

こうして僕らは城の外へ向かった。

「ここが戦場なのか」

そこは荒れ果てた土地であった。草木は枯れ、動物の姿は見当たらない。まさに死の大地といった感じである。

「これはひどいな」

「ああ、こんな光景を見る日が来るとは……」

「政宗、この国の民たちはどうなっている?」

「それが……ほとんど殺されてしまっているみたいだ……」

「そうか……」

「くそっ、許せない……」

「落ち着け。まずは敵の情報を探らなければ」

「ああ、そうだな」

「とりあえず、敵を見つけよう」

「おう」

こうして僕らは、情報収集を始めた。

「そこの者、止まってもらおうか」

と声をかけたのは、一人の兵士だ。

「おい、あいつらは誰だ」

と政宗に聞かれたので、僕は答えた。

「彼らは僕の家臣たちだよ」

「えっ、そうだったの?」

「ああ、そうだよ」

「すまんな。疑ってしまって」

「いやいや、気にしなくていいよ」

「ところで、お前は一体何者なんだ」

と兵士が聞いてきたので、僕はそれに答えることにした。

「僕は織田信長だよ」

「信長?聞いたことがないな」

「まあいいじゃないか。それより、君は一体誰だい?」

「俺は前田慶次だ」

「そうか。よろしくな」

「ああ、よろしく」

「ところで、戦況はどうなってる?」

「ああ、今は膠着状態だな」

「なるほどね……」

「まあ、お前さんが来たからにはもう安心だな」

「そうか?まあ、頼りにしてくれ」

「ああ、期待してるぜ」

「じゃあ、また後で」

と言って、その場を離れた。そして、次に見つけたのは、一人の男だ。

「ねえ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「ん、俺のことか?」

「ああ、そうだよ」

「で、一体何の用だ」

「この国で起こっていることについて教えて欲しいんだよ」

「この国で起きていること?一体何のことだ」

「実は、この国で疫病が流行っていて、多くの人が亡くなっているみたいなんだ」

「それは本当なのか!?」

「ああ、だから情報を集めているんだ。何か知らないか」

「悪いが何も知らんな」

「そうか、ありがとう」

「礼には及ばんよ。それよりも気をつけろよ」

「何をだ?」

「この国には恐ろしい奴らがいるらしいぞ」

「どんな風に恐いんだい」

「それは分からんが、とにかく注意しろ」

「分かった。忠告感謝するよ」

「じゃあな」

と言って男は去っていった。さて、次はどこに行こうかな。と考えていると、政宗が話しかけてきた。「兄貴、こっちに来てくれ」と手招きをしているので、僕はそちらに向かった。

「どうかしたのかい」

「ああ、向こうの方を見てみてくれないか」

「どれどれ」

と、言われた方を見ると、そこには巨大な城があった。

「あれがどうかしたのかい?」

「ああ、あの城は伊達輝宗の居城なのだ」

「へぇー、そうなんだ」

「ああ、だが先程の戦いで破壊されてしまったのだ」

「なるほどね」

「そこで頼みがあるのだが……」

「ああ、分かってる。僕に修復を手伝って欲しんだろう」

「そうなんだが、頼めるだろうか」

「もちろんだとも。任せてくれ」

「助かる。では早速始めてくれ」

「了解」

こうして、僕の初仕事が始まったのだった。

「よし、これで終わりだな」

「ああ、そうだな」

「お疲れ様です」

「おつかれさま〜」

「おめでとうございます」

「みんなもお疲れ様。今日はゆっくり休んでくれ」

「はい」

「では、失礼します」

「おやすみなさいませ」

「お休み〜♪」

こうしてみんなは帰っていった。

「ふう、終わったな」

「ああ、そうだな」

「政宗はこれからどうするつもりなんだ?」

「私は、しばらくここに残ろうと思う」

「そうか。なら僕も残ることにするよ」

「兄貴、本当にいいのか?」

「ああ、構わない」

「そう言ってくれると嬉しいよ」

「それじゃあ、明日に備えて寝るとするか」

「分かった。じゃあ、おやすみ」

こうして、僕らは眠りについた。

翌日、僕らは城の外に出た。するとそこに、一人の男が立っていた。その男の姿を見て、政宗が叫んだ。

「父上!」

「おお、政宗か。久しぶりだな」

どうやらこの人が伊達政宗の父である伊達政道らしい。しかし随分若いな……

「はい!元気にしてましたか?」

「ああ、まあまあだな」

「そうですか……ところで、なぜこちらにいらっしゃったのでしょうか」

「ああ、この国の様子を見に来たんだ」

「なっ……まさかこの国に戦争を仕掛けるつもりなのですか」

「いやいや、そんなことはしないよ。ただ単に様子見をしにきただけだ」

「そうでしたか……安心しました」

「ところで政宗、そいつは誰だ?」

と、政宗の後ろにいた僕に気づいたようだ。

「あっ、紹介が遅れてしまい申し訳ございません。彼は織田信長殿で、私の命の恩人でもあるのです」

「ほう、お前が織田信長か。よろしく頼むぞ」

「はい、よろしくお願いします」

「ところで信長、お前は一体何者なんだ?」

と政宗が聞いてきたので、僕はそれに答えた。

「織田信長だよ」

「織田信長?聞いたことがない名だな」

と言われて、僕は驚いた。信長といえば、歴史の中で有名だと思うんだけど、この時代はまだなのかなぁ。と考えていると、目の前にいた男に向かって質問が飛んでいった。ちなみにその人は政道の妻のようだった。名前は晴宗と言うらしい。それで、その内容はこうだ。

(一)どうしてこんなところにいるの?→(二)3年程前から病気がちになってしまってな……。少し療養したいと思っているからだよ

(三)なるほどね。大変ですね というものだった。とりあえず返事をしておいたほうが良さそうだ。

「まあ確かに大変なこともあるけれど、なんとかやっていけてるから大丈夫ですよ」

と答えたが、それに対して妻はこう言ってきた。

「でもあまり無理しないようにしてね」

……なんか勘違いされてない?と思ってると、夫が妻の口を塞いだ。

そして小声で、「余計なこと言うんじゃねえよ……」と言ったのを聞いてようやく理解したのだった。それからしばらくして話が終わったと思ったので、会話に入ろうとするも上手くいかなかった僕に政宗が声をかけてくれた。

そしてその後、無事に話しに加わることができた。そして、話は僕たちがどこから来たのか、ということに移っていった。僕たちは奥州藤原氏が治めていた陸奥にある館に住んでいるという嘘の設定を伝えたのだが、二人は全く疑わず信じているようでよかった。さらにこの後、3年間会っていない間に何をしていたかについても聞かれたため、こちらも同様に偽の話を作ったのだが、これも信じられていそうな感じだった。

こうして僕らはこの日も一日が過ぎていったのであった。

翌朝、目を覚ますと外から激しい音が聞こえてきたので何事だと思い外にでてみると、大勢の兵士が訓練のようなものを行なっていた。その中で中心で指揮をとっていた人物がいたので話しかけてみることにした。「君たち一体ここで何をしているんだ」と話しかけたのだけれど、兵士からは反応はなかった。

しかも、周りの兵士たちには見えないように攻撃してくる始末だったため面倒な相手だということがわかった。そこで作戦を変えてみることにしよう。僕たちはまずその兵士の中に紛れ込み相手の出方を見ることにした。そしてそのまましばらく経つと、指揮官らしき人物が話しかけてきたため僕が話しかけてみることにした。その人に色々と話しかけたのだけれど相手にしてくれなかったため結局その場を離れたのだ。その後はまた、別の場所に行っても似たような光景が続いているだけだったので、飽きてしまった僕達は帰ることにした。城に戻りみんなと一緒に過ごす毎日が続いていたある日、僕は政宗と共にとある場所に来ていた。その場所とは輝宗公の居城である青葉山城だ。僕たちはその天守に登り、辺りの様子を確認してから床に入った。

もちろん何も起こらないわけがないと思っていたのだが特に異変は起こることなく、2週間が過ぎた頃になってようやく何か起こりそうだなと感じるようになったので外に出でた時のことだった。城門の方を見ると数人の敵兵と思われる者たちが現れたので戦闘になるかなと考えてると、その中から聞き覚えのある声の者達が出てきた。そうあの4人の兵士達である。彼らの言葉を聞き、城の中の者を避難させようとしたその時突然爆発が起きたと同時に敵の大軍が現れ、それを食い止めるも苦戦していたところで、今度は輝久と輝久の母が連れていかれそうになるという事態に陥ったものの、僕の活躍により母は守ることができ、輝久もまた無事だったが……そんな時母が僕に向かって、

「貴方を見ていると思うことがあるの……なんのためにここに生まれてきのかって……本当にあなたは幸せなの?」

と言い始めた。それに対し僕の答えは一つだけ……その問いに対し、

「幸せだと感じられるならどんな世界でもいいんだよ」

と伝えることだけであった。そう決意を胸に秘めていると再び母さんが口を開いた

「ねぇ政宗くん、本当にこっちに来ていいの?」

「ああいいよ、だってお前は私にとっても大切な人なんだから」

「…………政宗ちゃんありがとう」

「気にすんなって」

というやりとりがあり、それからは時間が進んでいったが政宗はどうやら行ってしまいそうである……このまま見捨てたくないと思っていると、突然後ろから足音を感知した僕は急いで階段に上に向かったのだか、少し遅かったようだ。しかしその直後、政宗の前に立ちふさがっていた男は倒れたのである。誰が倒したのかわからない状況で、政宗はそのまま駆け出していってしまったが今度こそ守り通せただろうか……?そんなことを考えながら僕はその場に倒れ意識を失ってしまった……気づくと見知らぬ天井が見えたので、僕はすぐに自分が気を失っていたことを理解した

「目がさめたようだね……良かった」

「あれ?君は……」

…………まさか!!

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