北の森(2)

「うーん…困るまで防具買わなくても大丈夫、かな?」


 リシアももちろんレベリングをしているため、セイリスの北の森にいた。


 目の前で2体のオークの死骸が消えて行く。


 今日のシャルロット達は朝食と昼食をまとめて摂り、10時ごろにログインした。


 昨日素材を売って手に入れた資金で装備を購入しようとしていたのだが、現実世界と時間の流れが違うことを忘れおり、ログインした時セリウスの街はまだ真夜中だった。


 流石に何もせず3時間以上待つのはアホらしいので、森で狩りをすることにしたらしい。


 このゲームでは種族レベルが15になるまでデスペナルティが存在しないため、特にデメリットがないからとの判断だ。


 現実では夜の森なんて暗すぎて周りが見たものではないが、この世界は月が以上に大きく、それに伴って光量も増えている。それこそ、夜に光源なしで狩りに出れるほどには。


 興の乗った二人はすでにゲーム内で8時間ほど狩りを続けているので最早関係ないのだが。


「まだゲーム初めて私はダメージ受けたことないし、シャルちゃんは私よりダメージ受けることないだろうし…と、魔物かな」


 特に音がしたわけではない。

 リシアはなんとなくそこにいるような気がする、という直感だけで右側に目をやると、そこには剣を持ったゴブリンがいた。


「ん?剣持ってる…棍棒持ってるゴブリンならたまにいたけど、剣は初めてだな」


 リシアはNWOの情報を特に集めているわけではないので、魔物については全て初見で対応するしかない。


 今回も、ゴブリンソードマンのことを剣を持ったただのゴブリンだと認識している。


 まあ、フィールドの中の魔物はある程度何が出るのか決まっているので、一通り戦闘すれば対応できるはずである。


「何はともあれ先手必勝!」


 リシアは脇構えの状態で駆け出し、すぐさまゴブリンソードマンが剣の間合いに入り込む。


 ゴブリンは中段に構えた剣をリシアに向けているが、リシアはその剣を斜め上へと巻き上げる。


 剣の重さに振り回されて隙だらけのゴブリンの首を一閃。首を切り落とした。


「筋肉ないのに待ちに入るから…次だね」


 次に現れたのは盾を持ったゴブリン、ゴブリンガードマンだ。


「君、さっきの剣持った子と一緒に来るべきだったんじゃ…?」


 特に語ることなくゴブリンガードマンは仕留められた。


 本来であればゴブリンソードマンがもう少しは持ち堪えるはずだったのだろうが、一瞬で仕留められてしまったためゴブリンガードマン一体での戦闘になってしまった。


 ソードマンとガードマンで移動速度に差があったのも原因の一つだろう。


《[シャルロット]の種族、職業、武器LVが上昇しました》

《[リシア]の種族、職業、武器LVが上昇しました》


「あ、もうレベル上がった。シャルちゃんもたくさん倒してるんだろうなぁ。よーし、がんばるぞ」


 リシアは再び剣を持って森を徘徊し始めた。

 シャルロットに比べて殺傷力の高い武器を使用しているリシアは魔物たちにとってだいぶ恐ろしいはずだ。


 そのうちリシアの亜麻色の髪を見るだけで逃げ出す魔物達も出てきたとか。









「なんか、犬の顔した魔物って倒すの躊躇う…」


 目の前には十数体のコボルトが横たわっていた。

 が、すぐに消滅する。


「今レベル幾つくらいだっけ」


 リシアが自分のステータスを確認し、顔を上げた瞬間。


「…は?」


 リシアは限りなく広がる水面に立っていた。

 

 



 *





「…どういうこと?リシアのHPバーが消えた…死んだ?いや、死んでも表示が薄くなるだけで無くなりはしなかったはず。…じゃあ何かの操作ミスでパーティ解消したとか?」


 リシアが森から消えたその時、シャルロットの視界からリシアのHPバーが表示されなくなっていた。


 その時、スライムがうねうねと足元に近づいてくる。


「ああもう邪魔ね。大した経験値にもならないのよあなた達」


 鬱陶しそうにスライムの核をダガーで突き刺すと、すぐに消滅した。一体しかいなかったらしい。


「って…もう、なんなの…」


 ポリゴンと化したスライムから目を外した途端。

 シャルロットもまた、水の上に立っていた。





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