武器購入

 それから歩くこと10分ほど。二人はまたもや道行く人に場所を尋ねながら、ようやく武器屋に辿り着いた。


「出来るだけ早く地図とか手に入れたいわね…」


 どこかへ行くたびに毎回人に聞くのも面倒くさいので、シャルロットは早く地図が欲しいと言う。


「そうだね。そういうのはどこに売ってるんだろ」


「冒険者ギルドの建物に売ってるらしいわよ。狩りをした後に素材売りついでに寄ろうかしら」


「冒険者ギルド?」


「ええ。現地人の組織で、冒険者と呼ばれる人たちが市民とか貴族とかの依頼を受けて、魔物の討伐や薬草の採集、護衛なんかをする組織ね」


「なるほど。それって私たちもなれるのかな」


「なれるらしいわよ」


「そうなんだ!じゃあ、素材売りに行く時に私たちも登録しようよ」


「いいわよ。依頼も受けれるし、別に縛られることがあるわけでもないらしいし。まあそれはともかく、早いとこ武器を買いましょ」


 二人は予算を確認するために、自分の所持品から最初に配布されている金額がいくらかを確認する。


「1万ゴールド…相場がわからないからなんとも言えないわね」


「さっき道の店にあったリンゴは150ゴールドだったけど」


 現実世界のリンゴはだいたい160円くらいで買えるため、この世界の通貨は現実世界とほとんど価値が同じらしい。

 

「じゃあ1万で武器なんて買えるのかしら…」


 置いてある武器は値札がついていないので値段がわからない。おそらく買えないであろう武器の値段を聞くのも冷やかしのようで少し気が引けるが、どうしようもないのでカウンターの店員に鉄製の普通のロングソードの値段を聞いてみる。


「この剣はいくらになるのかしら」


「そちらでしたらちょうど1万ゴールドなりますね」


「あら?意外と安いのね」


 予想外に低い値段に驚く。これであればリシアの武器には困らないし、ダガーならこれよりも安いだろう。


「見たところ異邦人の方ですよね?1ヶ月ほど前に創造神様から異邦人が現れるとお告げがあったらしく、大量に売れるだろうからって多くの店で作りすぎた結果だいぶ値段が安くなったんですよ」


 プレイヤーは現地人から異邦人と呼ばれているらしい。

 そして、現地人にとって運営が創造神と認識されていることがわかった。


 何はともあれ、武器がシャルロット達にも買える値段になっていることは助かった。


「なら、このダガーはいくらかしら」


「こちらは5000ゴールドですね」


「ならこれをいただくわ」


 5000ゴールドを取り出し、店員に渡す。


「わっ、お買い上げありがとうございます。鞘とベルトもサービスしておきますね!」


「本当?ありがとう。これからも贔屓にさせてもらうわね」


 ダガーを鞘に収納し、ベルトにくくりつけて腰につける。


 シャルロットは後ろで武器を物色しているリシアに声をかけた。


「リシア、いい剣はあったかしら」


 リシアはこのゲームではロングソードを使うらしい。刀もあるそうなので、そちらにしないのかと聞いたが、竹刀とはまるで勝手が違うらしく、使うなら使いやすいロングソードにするということだ。


「あるんだけど、さっきシャルちゃんが聞いたロングソードがちょうど1万ゴールドなら買えないだろうし、1万ゴールドのロングソードでいいかなあ」


 ということで、リシアは鉄製のロングソードを購入した。





「買った武器のステータスを確認してみましょう」


 店から出てすぐに、シャルロットが慌てたようにステータスを確認しようと言った。


「…あれ?それって買う前にしたほうが良かったんじゃ」


 ぎくっとした表情でシャルロットがそっぽを向く。


「んー?さてはシャルちゃん忘れてたな?」


「…リシアだってそうでしょ」


「まあそうだけど。次から気をつけよっか」


「そうね」


 購入前にステータスの確認を忘れていたことを反省すると、早速武器のステータスを開いた。



[ステータス]

名称:鉄のダガー

種類:ダガー

耐久値:100%

必要STR:5

STR:15

DEX:0

INT:0

スキル:なし


 

 なんの変哲もない鉄製の武器なので、特に面白みのない予想通りの性能だった。

 DEXやINTは、鍛治師の使う鎚や魔法使いの杖などにあるのだろう。

 ちなみに、鉄のダガーなので必要STRは5と低いが、これが大剣になれば30ほど要求されたり、素材によっては50になったりするらしい。


 ここで、シャルロットはある疑問を抱く。


(このSTRって自分のステータスには関係するのかしら)


 自身のステータスも確認してみると——



[ステータス]

名称:シャルロット

種族:ダークエルフ〈1/50〉

職業:暗器使い〈1/30〉

武器:ダガー〈1/100〉

HP:110/110

MP:160/160(+50)

STR:11

VIT:11

DEX:21(+10)

AGI:61(+40+20)

INT:41(+30)

スキル:なし

称号:なし

装備:【鉄のダガー】


 

 装備の欄が増えていたこと以外は変化していなかった。


(ああでも、考えてみれば当然ね)


 もしこれで増加していれば、武器を使っていない素手の状態でも攻撃力が高くなるということだ。

 

「確認は終わった?」


「うん!STRが30もあったよ」


「それはいいわね。…予想はしていたけど防具は買えないでしょうし、狩りに行ってみることにしましょうか」


「そうだね。よし、頑張るぞ」


 二人とも武器の確認を終えたので、ついに狩り出かける。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る