第7話 勇者なる者が再び現れた
「まだ続くそうよ」
「なんの話だ?リリーベル」
「文字数が足りないのよ!!そして、ここからはカクヨムオンリーよ!」
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第7話 勇者なる者が再び現れた
「あら?そうなの?」
私は日が昇らず朝なのか夜なのか判断がつかない薄暗い寝室で副官のガリウスからの報告をベッドの上で耳にしました。
「はい。そういうことですので、本日“天月の刻”に会議が開かれますので、リリーベル将軍に招集がかかっています」
「わかったわ。今日は満月だったかしら?」
「はい。ですのでお時間はまだございます」
報告してきた副官ガリウスに手を振って退出していいという合図をしますと、頭を下げて寝室を出ていきました。
会議。面倒ですわね。
「リリーベル。“天月の刻”というのと満月は関係するのか」
アベルが後ろから抱きしめて来ました。私は身を捩り、アベルに視線を向け、柘榴の色をした瞳を見つめ笑みを浮かべます。
「日は昇らないけれど、三つある月の内、一つは暗黒大陸の上に昇ってきますから、時刻を決めるには月の満ち欠けと位置で決まっているのよ」
「ん?それだと毎日の時刻が変わってくることになるが?」
「いいのよ、それで。ここに来て時間に縛られることなんてなかったでしょう?」
「確かに」
アベルは納得したようにつぶやきます。この暗黒大陸に時刻というものは基本的には存在しません。しかし、各種族のトップである将軍が集合しなければならない時がでてきますので、その時は月の位置で決めているのです。
まぁ、適当ということですね。
「そもそも種族ごとに活動する時間が違うから、時刻なんて決めても仕方がないのよ。人族のように太陽と共に生きているわけではないのだから」
そう言って私はアベルに口づけをします。人として生きていたアベルにとってこの国に来てよかったかどうかは未だに聞けないでいます。
しかし、アベルがこの暗黒大陸に来て半年経ちました。その半年の間にアベルの身体は魔王様と同じぐらいにひと回り大きくなり、二本の角も幾分か伸びています。魔の者として成長している証拠です。
ただ、この私の手を取ることを選んだのはアベル自身ですので、後悔するのであれば、己を責め恨むことでしょう。
「しかし、また勇者なのか」
アベルは私の首筋を甘噛しながら聞いてきました。こそばゆく思わず笑い声が漏れてしまいました。
「ふふふっ。今度の勇者はどのような者なのかしらね」
以前の勇者は第一将軍の堕天使サイザール様に命乞いをしたものの、始末されてしまいました。
物語であれば、あの勇者はサイザール様を相手にすることなく世界を平和に導きましたけれど、魔王様からの我々のやり方がヌルいとのお言葉の所為で人類側への攻撃が一気に過激になったことで、世界を平和に導くはずだった勇者は命を落とすことになったのです。
全て私が行ったことがきっかけではありますが、なんとも皮肉なものです。あの時死ぬはずだった私が生きており、世界を救うはずだった勇者が死んだ。
ですが、たった半年で勇者と呼ばれる者が現れたということは、恐らくこれは世界の修正力が働いたのかもしれません。
魔王様はこの暗黒大陸を統べる王として存在しています。それを世界が“良し”としなかったとすれば、この短期間に勇者が現れたことにも納得がいきます。
世界が相手となりますとこの強敵に敵う存在などいるわけはありませんので、潔く負けを認めるしかなさそうですわね。
今日の会議でどのような話が出てくるのか楽しみです。
“コンコンコンコン”と寝室の扉がノックされる音が室内に響いてきました。
「ご主人さま。そろそろお着替えをされませんと、会議のお時間に間に合いません」
あら?もうそんな時間になるのかしら?アベルと遊んでいますと時間が経つのが早いですわね。
「入ってきていいわ」
私が入室の許可を出しますと5人の使用人が入ってきました。
「ご主人さま。本日のお召し物は如何いたしましょうか?」
「このアーザイという民族衣装はいかがですか?」
「東の島国のこの神を祀る者が着るという衣装はいかがですか?」
「この布地の刺繍が美しいチョーサンはいかがですか?」
「今日は会議とういうことですのでゴシック調のドレスはいかがでしょう?」
私が身体のラインを強調した衣服以外を求めてからというもの、使用人たちは世界中に散っている淫魔族の情報網を駆使して、色々な衣服を集めてくるようになり、今では個人個人の今日のお勧めを持ってくるようになりました。
一番目の衣装はベトナムのアオザイに似た涼し気な衣装です。二番目は赤い袴が印象的な巫女の衣装です。三番目は総刺繍が美しいチャイナ服です。四番目は紺色をベースにしたゴスロリのドレスです。
私からすれば、これはコスプレとしか言いようがありません。私が遠い目をしていますとアベルが真剣に衣装を選んでいます。
「これがいい」
決まったようです。アベルが私の着る衣装を決めるのがここ最近の日課となっていました。
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