第2話 まさか、誘拐された?

 髪を染め終えた俺は、家を出る。

 幼稚園の頃からの幼馴染である、ライハイツ君に会うために。


 緑髪で、超天然なツンデレであるライハイツ君と、待ち合わせの時間に間に合ったようだ。


「遅いじゃないか、人を30秒も待たせといて」


「そんなに待ってないじゃないか」


「待ち合わせは、僕より早く来てほしかったな」


「そこまでは、期待しないでほしいな」


 俺は、言いたいことを思いっきりここで発言したいけど、公共の場でそんなことはできなかった。


「とにかく、行こう」


「待ってよ、トイレ行ってもいい・・・・?」


「え?」


「待ち合わせの時から、トイレ行きたかったけど、我慢してたの。


いいでしょ?」


 かわいい声でお願いしているけれど、


「そういうものは、なるべく早く行けよ」


 と、ツッコミを入れてから「行きたいなら、早く行ってくれないか?」と冷たく答えたところ、


「さすが、僕の最高の幼馴染」


 俺は、ツッコむ気にもなれなかった。

 こいつには、事前の準備というものがないのだろうか?


 ライハイツ君が、トイレに行くこと1時間たっても戻ってこないので、心配になって、様子を見に行くことにしたけれど、男子トイレには、なぜかライハイツ君はいなかった。


 まさか、誘拐された?

 そんな不安が頭の中をよぎる。


 ライハイツ君のことだ。

 最強であるために、強引に拉致されることはないかもしれないけれど、変な勧誘とか受けそうだし、騙されての誘拐ならありそうだ。


 俺は、ライハイツ君のことを捜しに行った。


「すいません、緑髪の男の子はいませんでしたか?」


 俺は、知らないおばあさんに声をかけた。

 とにかく、この珍しくて、目立つ髪の色なら、見た人は忘れないような気がしたから。


「緑髪?


それなら、トイレの場所を聞かれて、教えたら、別の方向に向かったよ」


 あのド天然があ。

 

 こいつは、どの平行世界に行っても、天然なのか?


 トイレの場所を自分から聞いておいて、教えてもらった方向と違う場所に向かうとか、これがライハイツ君以外の人がやっていたら、俺は完全に見捨てていたと思う。


 こうして、俺はおばあさんに言われた通りの方角に向かった。


 あいつは、見捨てちゃいけない。

 トイレも、一緒についていかないとだめとか、女子かよ。

 完全に、女子かもしれない。


 そんなことを思いながら、俺は走っていった。


 俺は、緑髪の人を見つけた。

 あれは、ライハイツ君だ。

 ライハイツ君以外、ありえない。


 だから、声をかけた。


「ライハイツ君」


 俺が肩に手を置いた瞬間、振り返ったのは違う人だった。

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