過去編~研究所の記憶~第4話

 俺は、毎日の電気の拷問を受けて、心身ともにボロボロの状態になっていた。


 早く、電気を出せるようにならないと、あの地獄が待っている。

 幼い俺は、それしか頭になかった。


 結果、俺は、電気を自発的に出せるようになった。

 弱い電気だったけれど、俺は使えるようになったことに、喜びのあまり涙がでるくらいだった。


「おめでとう」


 研究員の人に、喜ばれるくらいになれた。


「これから、君は、外の世界に出ることを許可されるようになったんだ。


これかは、戦うか、普通の人たちと同じように学校に行くか、どちらがいいかい?」


「戦うって、痛いのが待っているのはいや。


だから、学校の方がいいです」


 その時の俺は、後先のことなんて、あまり深くは考えてなかった。

 とにかく、今のこの状況から、抜け出せるのなら何でもよかった。


 こうして、俺は研究員が指定された通りに、私立の小学校に入学することになり、おじいちゃんとライハイツ叔父さんの家に来ることになった。


「初めまして」


「君は、誰?」


 俺は、返事に困った。

 ライハイツ叔父さんから、名前を聞かれているのかもしれないけど、俺に名前なんてないのだから、名乗りようがなかった。


「えっと、俺は研究所出身で・・・」


「つまり、君は研究員ってこと?」


「そうじゃないって。


研究所で生まれ育ったの」


「何か、病気とか持っていたの?」


「病気じゃないけど、研究所にいたの。


俺は、君の甥っ子です。

仲良くしてください」


「甥っ子って、名前なの?


よろしくね、甥っ子」


「俺は、名前ないの」


「名前?


今から、つけてあげようか?」


 ライハイツ叔父さんは、笑顔で答えていたところに、


「ならん!」


 と、おじいちゃんがやってきた。


「この子は、名前をつけちゃいけないのだ」


 おじいちゃんは、静かに答えた。


「どうして?


僕にも、名前はあるのだから、つけないと平等にならないって」


「とにかく、だめなものはだめなのだ」


「名前ないなら、わしは、孫と呼ぶことにした。


だから、ライハイツは、甥っ子と呼べばいい」


 おじいちゃんは、腕組みしながら答える。


「じゃあ、よろしくね、甥っ子。


僕は、ライハイツ。


本名は、らいはいとって言うんだ。


僕のことは、叔父さんでいいからね」


「うん。


だけど、おじいちゃん、俺も名前がほしいよ」


「ならん」


 おじいちゃんは、なぜか俺に名前をつけることを許してくれなかった。


 俺の小学校の入学が決まったけれど、同い年の同級生に、緑の髪と、髪がアキレス腱まで長いことをバカにされたので、髪を短く切り、黒く染めた。

 緑色の瞳もからかいの対処になったので、黒のカラコンをつけて、学校に通うことにした。

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