第12話 やっぱ、できないよ

「やっぱ、できないよ」


「できないって、何が?」


「誰かを切り捨てて、誰かを救うことなんて。


だから、この三人が助かる未来を見つけたいんだ」


「それは、ルール違反をしてでもか?」


「決まりを破るつもりはない。


だけど、一人だけを救うんじゃなくて、みんなを助けたい。


そのために、何ができるのか探したいんだ」


「なるほどね・・・・」


 スクイアットロは、しばらく考えこんでいたが、すぐに「わかった」と承諾してくれた。


「そんな選択肢があるなんて、考えもしなかった。


よし、ここはこうしよう。


いじめ殺しの仲間に加入するかも、退治するかも、正直言うと、戦闘美少女を見つけるまでは、お主はどこにも所属できない状態となる。


戦闘美少女と同じ血を引く、ライハイツ君を、戦闘仲間に加えるか、守るか、どちらか選んでもらおう」


「話が見えてこない。


どうして、ライハイツ君を?」


「いじめ殺したちは、ライハイツ君を狙う。


もちろん、お主もな」


「いじめ殺しって、いじめたやつだけを復讐にかかるんじゃないのか?」


 俺も、この狂った世界で暴れまわるいじめ殺しのことなんて、よく知っている。

 いじめた人を、どんどん殺していく復讐心にあふれた化け物だ。


「理論上ではな。


だが、全員がそれに乗っ取って動くと思うかい?」


「つまり?」


「憎悪がある者は、対象人物だけではなく、その関係者も殺すはず。


となれば、家族や友人が被害にあうリスクも、ゼロではない」


「となると、俺が平行世界で、殺されたのって・・・?」


 そう。

 俺は、いじめた記憶すらもないのに、いじめ殺しに無残に殺された。


 いつ、どこでいじめをしたのかもわからないし、考えれば考えるほど、恐怖しかなくなって、今にも人間不信になりそうだった。


「お主は、友人や家族や親戚が、絶対に誰かをいじめていないと断言できるか?」


「友人や親戚はわからないけど、家族はしないと思う・・・。


ライハイツ君も、おじいちゃんも、従妹も、まほさんも、みんな・・・そんなことしない」


 俺は、過去にいじめをしてないかとか、ひどいことをしていないかなど記憶をたどりながら、自信なさげに答えた。


 いくら、家族のすることとは言え、四六時中見ているわけではないのだから、なんとなくで答えるしかない。


「誰でも、いじめっ子になることがある。


もちろん、いじめられっ子になることがあるように。



もしかしたら、人類が必ず、一度はしていることかもしれないな。


それでも、人を信じたいと思うか?」


「それは・・・・」


 スクイアットロの言うことは、間違っていないかもしれない。

 だけど、俺はそんなことはないと、現実を否定したい自分がいた。

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