第9話 ここで、地獄が待っているとは思わなかった

 あのリスは、何だったのだろう?

 そんな疑問を抱えながら、俺はそのまま家に帰ることにした。


 ここで、地獄が待っているとは思わなかった。

 

「待ってよ・・・、これは、どういうことだ?」


 家が、荒らされていた。

 そして、おじいちゃん、ライハイツ叔父さん、まほさん、そして従妹まで、死んでいた・・・・。


「何がどうなって・・・・?」

 

 突然の出来事に、頭が追いつかなかった。


「発見」


 後ろから声がしたかと思うと、振り返る暇もなく、俺は無残に刺された。


「この、いじめっ子のくせに、いじめっ子のくせに」


「うわっ」


 俺の背中なのか、腰あたりなのかわからないけど、大量の血が流れていくことがわかる。

 俺は、うつ伏せの状態で、床に倒れこんだ。


「誤解だ・・・・」


「俺は、いじめなんてしていない」と、言おうとしても、言うことすらできないくらい、意識が遠のいていた。


 頭の中で、声がした。


「今の人生に、満足しているか?」


 しているわけがない。

 しているものか、こんな俺に名前もなくて、本当の親がわからない人生。


 もしも、願いが叶うなら、人生を別の形でやり直したい。

 そんなこと、できるわけないか。


「できるぞ」


 え?

 そんなことを思っている間に、どこからか光がでてきた。




「起きてよ、起きて」


 気が付けば、教室の机の上で突っ伏していた状態で寝ていた。

 俺は、顔を上げた。


「全く、もうすぐでお昼休み終わるよ」


 目の前には、ライハイツ叔父さんがいた。


「叔父さん、なんで学校にいるの?」


「おじさん?


何を言っているの?


そんな年じゃないよ」


「じゃあ、何なの?」


「僕たち、同じ学校の同級生でしょ?


それ以外に、何があるの?」


 これは、夢?


「俺は、君をなんて呼べばいいの・・・?」


「幼馴染に向かって、今更?


いつも、ライハイツ君って呼んでるじゃん」


「じゃあ、ライハイツ君?」


「馬鹿馬鹿しい。


もう行くよ」


「行くって、どこへ?」


「馬鹿なの?


帰るに決まってんじゃん。


今、何時だと思っているの?」


 叔父さん、ライハイツ君の性格が違う気がする。

 容姿は同じだけど、言い方も、きつくなっている。


 ライハイツ君が、カバンを持って、教室を出ようとしたら、転んだ。


「いてっ」


 俺は、その様子を見て、思わず笑ってしまった。


「ライハイツ君は、相変わらず天然だね」


「うっさい、笑うな!


ちなみに、天然じゃないから」


「そこが、天然なんだよ。


超天然さん」


 ライハイツ君は、ここで顔を真っ赤にして「さっさと帰るぞ」と、教室を出て行った。

 俺も、カバンを持って、その後を追う。


 これが、超天然な叔父ライハイツ君と、最弱で真面目な甥っ子の俺の物語なんだ。

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