第7話 君の名前は?

 俺は、いじめられて、殴られて、気絶した同級生を抱きかかえて、保健室に運び、保健の先生には事情を話した。

 保健の先生は、一瞬、顔を真っ青にしていたけれど

「わかったわ」

 と一言だけ返事をしていた。


 何か考えていそうな顔をしていたけれど、何をする気なんだろう?

 どちらにしても、この後のことは、保健の先生に任せておこう。


 その後は、紫髪の女の子と二人になった。

 学校の誰もいない、体育館倉庫の裏で話すことにした。


「さっきは、助けてくれてありがとう・・・・。


君の名前は?」


「わからないのです」


「え?」


「うちには、名前がないのです。

生まれた時から、ずっと・・・・」


「それって、どういう・・・・?」


「君は?


この学校の生徒の様だけど、名前はなんていうのですか?」


「俺も、君と同じなんだ。

名前がなくて、家族からは甥とか、孫とか呼ばれてる。


苗字はあるんだけど、雷って言うんだ」


「家族がいるのに、名前がないのですか?」


「うん。

一緒に暮らしているのは、叔父さんとおじいちゃんだからね。

本当の親は、どこにいるのかわからないんだ」


「名前もないのに、どうして、学校に通えるのですか?」


「俺、生まれと育ちが、あの有名な研究時だったから、それだけで、私立の小学校に行かせてもらえて、今はこうして、公立の中学校に通っている」


「うちは、小さな研究所出身なので、教育も受けられずにいて、名前も、年齢も、誕生日もわからないのですよ」


「誕生日がわからないと言えば、俺もなんだ。

一応、年齢は13歳ってことにはなっている。


生まれた時から、6歳までは研究所にいて、小学校を入学するという話になってから、研究所を出たんだ」


 俺には、苗字はあったとしても、生まれた時から名前も、誕生日もない。

 戸籍もない。

 父親がライハイツ叔父さんの兄ということはわかっていても、母親のことは一切わからない。

 優秀な研究所出身というだけで、教育が優遇されていただけなんだ。

 名前がないのだから、先生や友達からは、苗字が呼んでもらうしかない。

 

 俺だって、名前がほしい。

 だけど、どんな名前がいいのかとか、どうやって名前を作るのとかは、正直わからない。


「研究所の名前は、なんて言うのですか?」


「あはは、かなり有名な研究所だから、聞いたらびっくりすると思う・・・・。


ワンエイスの末路っていうんだけど・・・・」


「クウォーターの子供である、ワンエイスの子供だけを集めた研究所のことですか?


うちは、クウォーターの末路なのです」

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