第35話:竜の探求の系譜を継ぐもの
DQ1が一段落したので、僕は日々木さんから預かった交換日記を開く。
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4月29日(土)
今日と明日は父の実家に帰省。3月まで私と両親が一緒に住んでいた家で、久しぶり(と言ってもたった1ヶ月だけど)に小学校の頃の友達に会えたよ。私にファミコンを教えてくれた子に、中学でもファミコン仲間が出来たと報告したら喜んでくれた!!
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文末の「!」マークは上部分がハートマークのようになっており、いつもの雰囲気と少し違った。久しぶりに友達と会って、小学生の頃のテンションに戻ったのだろうか。その後の文章でも一緒に遊んだ報告が続き、楽しそうで何よりだ。
帰省と言えば、僕の家でも5月3日からの5連休で計画している。まずは「山の家」こと父の実家で一泊して、隣の県にある母の実家で二泊する予定である。今年はカナエ叔母さんたちも来るという話で、久しぶりにいとこ達と会えるのが楽しみだ。
***
「ドラクエ1、私もクリアしたよ」
5月2日の火曜日、教室で会った日々木さんの最初の一言がそれだった。僕とハルキと日々木さん、3人がそれぞれの目でエンディングを見たことになる。ちなみに、みんなレベル19でクリアしていた。
「次はやっぱり2をやる?」
「うーん、どうしようかな」
ドラゴンクエスト2については少し調べてみた。1の続編には違いないようだが、舞台は100年後であり、子孫の話になるようだ。僕としてはエンディングのすぐ後の話、勇者がローラ姫と旅に出て、自らの国を作るまでの話が見たかったのだが、それについてはゲームどころかスピンオフ小説や漫画などを含めても未だに語られていないようである。
「私、2はリメイク版でも一度クリアは断念してるんだよね……」
「父さんも言ってたけど、ファミコン版はさらに難しいんだってね」
父が持ってきたファミコンソフトは他にもたくさんある。何を遊ぶのかはゆっくり決めればいい。ちょうど、今日は伯父たちにも色々聞いてみるつもりだ。
***
「よし、ぴったり!」
「あー、今度は俺が貧乏神かよ!」
その日の夜、僕はいとこ達と一緒に山の家でスーパーファミコンで遊んでいた。「桃鉄」こと『スーパー桃太郎電鉄HAPPY』で、マルチタップによる4人プレイだ。スーパーファミコンで出たシリーズとしては最終作で、ダイスケ伯父さんが言うには、後のプレステやSwitch版と比べても劣らないどころか、テンポなどを考慮するとシリーズでもベストらしい。
「今のゲームもいいものはいいけどな、現役のシリーズでもスーファミ時代が最高傑作というのは多いぞ」
「もう、兄さんは極端なんだから」
ダイスケ伯父さんの発言にカナエ叔母さんが被せる。今の「山の家」にプレステ系が無いのは、叔母さんが一人暮らしをするときに持って行ってしまったからだという話だ。世代の違いもあるのだろうが、ゲームの好みというかゲームに求めるものが兄妹で異なっているのかも知れない。
「タケル、ドラクエとFFの最初のやつクリアしたんだってな」
「うん、特にFFについては、父さんが最初にいろいろ教えてくれたから」
「それでも、伯父さんたちが子供の頃に諦めたゲームを最後まで終わらせるんだから、すごいもんだよ」
伯父にほめられた。うれしい。
「そういや、ファミコンの桃鉄もあったっけ?」
伯父さんの長男であるマサキ君が尋ねる。
「ああ、ファミコンの桃鉄は家には無かったな。あれは
「桃伝?」
伯父の答えに、僕が返す。
「桃太郎伝説、というRPGだ。もともとはこっちが本家だったのに、スピンオフで桃鉄、桃太郎電鉄を出したらそっちのほうが有名になっちまった」
「へぇ」
「作者はドラクエの堀井雄二さんとも仲がいい。ドラクエの影響を強く受けたゲームだな。桃太郎だけじゃなくて、いろんな日本の昔話がモチーフになってるぞ」
「作者?」
「さくまあきら、っていう人で、昔は少年ジャンプの読者コーナーを仕切ってたから有名だったんだ。ほら、さっき桃鉄で"福の神"ってのが出てきただろ、あのモデルがさくまさんだよ」
やむを得ず赤いマイナス駅に止まったら、大黒様みたいなのが降ってきて大金をくれた。眼鏡をかけてるのが奇妙だなと思ったら、あれはゲームの作者がモデルだったのか。
「面白そう、やってみようかな」
DQ1において、ハルキが神話を例えに出したのを思い出した。ドラクエは一見すると西洋風だが、モチーフには日本的・アジア的な要素が少なくないという。ここで改めて、日本の古い物語を直接題材にしたゲームで遊んでみるのも面白いかも知れないと思ったのだ。
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