第14話:父とサシ飲みで火山を攻略
「やっぱり火山はシビアだな」
「うん……」
夕食後、リビングのテレビは母に譲り、今は僕の部屋で父とFF1をしている。グルグ火山に突入したが、入口近くのエリアの宝箱を回収するのが精一杯で引き返すことにしたのだ。
火山なのでマグマの上ではダメージを受けるし、そもそも中に入ったらいきなり出てきたホーンドデビルのファイラは反則級ではないだろうか。あやうく全滅するところだった。
「持ち物も溜まってきたし、そろそろ戻るか」
ミスリル系の防具が大量に拾えた。もう持ってるし、戦士しか装備できないので売るしかないけど。宝物庫は一通り探索したので今度は階段に直行できるが、数十個あったポーションもほぼ使い切ってしまったので買い直さないと。
「ミスリルアクスじゃなくてグレートソードにするのか」
戦士たけるの武器を見て父が言う。
「さっきステータス見たでしょ、ミスリルアクスだとヒット数が減るよ」
命中が32の倍数になるごとにヒット数が増えることを確認している。レベル14の戦士の基本命中は49(レベルをnとして、3n+7の方程式で表せる)で、命中+10のミスリルアクスよりも、命中+20のグレートソードを装備するべきだということを、僕は父に力説した。
「すごいな。父さんそんなの意識したことなかったぞ」
実際、攻略サイトでも命中とヒット数の関係について触れていないところも少なくないようで、知らないままクリアする例も多そうである
*
「父さん、ポーション買っておいて」
「わかった、何個だ?」
「99個かな? とにかく持てるだけ!」
無事に町に戻ってきたので、僕はトイレ休憩する。その間、ポーションを買うための連打を父に任せる。苦笑しつつも引き受けてくれた。
「しょうがないな。ついでにビールと豆菓子でも持ってきてくれるか」
「オッケー」
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「ほう、ここまで一発で行けるものなんだなぁ」
ビール片手に父が感心する。全ての部屋を探索しつつ、最終フロアらしきところまでたどり着いた。ポーションもまだ30個ほどある。アイスブランドと炎の盾を手に入れて、ますます戦士が強くなった。
「ここは8方向に部屋があるのか。とりあえず上から時計回りで行くか」
僕も、父と一緒に豆菓子をつまみながら無糖のレモン炭酸水を一口飲む。宝箱は空っぽばかり。ボス部屋らしきところは一旦スルーすると、いかにもな大事なアイテムがありそうな(そして強いモンスターが守ってそうな)箱があった。
「うわ、ドラゴンだ!」
いかにも炎を吐きそうなレッドドラゴン。このゲームでドラゴンと名のつく敵は初めてだ。バファイで炎をしのいで、ブリザラで攻撃したらあっさりと倒せてしまったのだが。
*
「いよいよボスか……」
祭壇の前で、改めてHPや装備をチェックする。
「フレイムメイルと炎の盾は外したほうがいいんじゃないか?」
「なんで?」
「なんでって、炎に弱くなるだろ」
父はそう言うが、いずれにせよバファイをかけるつもりだし、レッドドラゴンとの戦いを見る限りはそのようなことはなさそうだ。
「大丈夫だよ、さっきレッドドラゴンの火を食らったけど大したことなかったじゃん」
「そうか。まあお前の判断だからな」
いざ決戦! 現れたのは蛇人間のようなマリリスだ。戦士"たける"とモンク"そうた"は攻撃あるのみ、赤魔の"はるき"は"たける"にヘイスト、最後列の"そら"はバファイだ。先に唱えられたので敵のファイラを軽減! 2ターン目、"そうた"にヘイストをかけつつブリザラで攻撃に回る。マリリスのダクネスを食らって暗闇状態になったがほとんど影響はない。3ターン目に、そうたの8回ヒットクリティカルが決まってKO!
「よし、誰も死なずに勝った!」
「やったな!」
ほろ酔い気味の父がハイタッチを求めてきたので、それに応える。
「レベル15か。このレベルでいきなり火山に行ってもクリアできるもんなんだなぁ」
ワープゾーンで脱出し、回復のためにメニューを開くと改めて父が感心する。ポーションの残りは15個になっていた。99個は買いすぎかと思ったが、決してそんなことはなかった模様。
*
「お風呂わいたから入っちゃいなさいよ」
母の声が聞こえたので、今日はここまで。コテージと寝袋で回復&セーブ。ちょうど缶ビールを飲み終えた父とともに部屋を後にした。
***
以下は注釈ですが、システム的にあまりにも細かい内容が多いので、読み飛ばしても構いません。
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命中率について
バージョン共通なのだが、ピクセルリマスター版ではステータス表示上の命中率が、本来の値に「100/255」をかけたものになるという信じられない改悪のせいでわかりにくくなってしまっている模様。ゲームバランス上、そこまで意識する必要もなくなっているようだが。
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『ホーンドデビル』
集団で出現するガーゴイルの色違い。リメイク版では影が薄いが、ファミコン版では1ターン目からファイラを使うという、非常に厄介なモンスター。
地下1階(入った直後)ではエンカウントパターン0に属するので、電源投入後の最初の戦闘で必ず出現する。一方で地下2階(巨大宝物庫)ではパターン3なので、11回目まで出現しない(逆に言えば、宝を漁るためにうろついていると遭遇することになる)。そして地下3階以降では一切出現しなくなる。このため、初見で強烈なインパクトをプレイヤーに残しつつも、実際はそれほど驚異となるわけではない。
余談だが、バーチャルコンソール版(少なくとも3DSで確認)においてはパターンの0と1が入れ替えられており、地下1階の初戦はオーガメイジ達になっている。実機でもバージョンによってはそうなのかも知れない。また本作のタケルは物語上「1・2」をプレイしているにも関わらず、筆者による検証プレイは単品版で行ったので、そのあたりでも噛み合わない部分があるかも知れないがご容赦を。
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「宝箱は空っぽばかり」
最終フロアの宝箱は、レッドドラゴンが守るフレイムメイルを除くと、他のフロアの宝箱と中身が共有されているので、先にそちらを取っていれば空っぽになるという仕組み。
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「フレイムメイルで炎に弱くなる」
FF1では防具に弱点設定はない。ただしFF3やFF4では、炎と氷の防具には同属性が弱点になるというペナルティがあったので、父はそれらと混同していたという描写である。
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マリリス戦について
検証プレイをそのまま小説に起こしたが、実際はかなり運が良かったと言える。マリリスの攻撃で脅威なのはファイラなどよりむしろ直接攻撃(2/3弱の頻度で行う)で、プロテア(全体の防御UP)やインビア(全体の回避UP)、ナイトのブリンク(自身の回避UP)等で守りを固めるのがセオリーなのだが、タケルのキャラ達は覚えていないし、そもそもクラスチェンジ前なのでいずれも使えない。
筆者がFF1をプレイする時は少なくともクラスチェンジの後に回すところなのだが、ここでは初心者になったつもりで全滅覚悟でプレイした。しかし、目論見が外れて(?)あっさり勝ってしまったので、そのまま小説にした。
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