第12話:喘息と筋トレとレベル上げ
「思ったよりきついなぁ……」
学校の塀に沿って二周するランニングで、息がすっかり上がってしまった。最近は発作もなくなっていたので忘れていたのだが、僕は
「卓球部なら他の運動部よりゆるいかと思ってたんだけどなぁ」
「運動部ならこのくらいはどこも同じようなもんみたいだぜ。お前は昔から走るの苦手だったんだから、無理しなくてよかったのに」
今日はソウタと一緒に卓球部の見学に来たのだが、改めて自分は本格的な運動に向いていないことを実感した。
「やっぱり自分のペースで運動できるトレ部のほうが向いてるのかも」
「そうそう。タケルはこれからが成長期って感じだからな」
ソウタは小学六年生の頃にみるみると背が伸び、今では165センチを超えている。成長痛が辛いという話も聞かされた。
結局、顧問の先生にも心配されたので今日はこれで帰ることにした。この後の卓球の練習試合もしてみたかったが、入部する気もないのに試合だけやらせてもらうというのは筋が通らないだろう。
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「ただいま。ねえ、うちってダンベルあったよね?」
帰宅するなり、僕は母に聞いた。
「ええと、2キロのだったらあるはずよ」
そう言って、物置からピンク色のダンベルを2つ持ってきてくれた。これは母が少し前に、ダイエットすると言って買ってきたものだが、そのうちすっかり飽きてしまい、物置の中に眠っていたものだ。
「ありがとう。使わないなら僕が持ってるね」
*
いつものように、僕は自室でFF1をスタートする。片手でコントローラを操作しながら、もう片方の手でダンベル運動をすることを思いついた。特に戦闘中はボタンを押す必要がないので筋トレにはうってつけである。
画面の中でキャラクターのレベルを上げながら自分自身も筋トレで強くなる。中学でも冬になればマラソン大会があるだろう。今までは最下位だろうが気にしなかったが、日々木さんに情けない姿は見せたくない。腕の運動が持久走に結びつくのかはわからないが、何もしないよりはマシだと思った。
*
今日の目標はアースの洞窟のリッチを倒すこと。その前に、お金が貯まったので装備を見直すことに。マップを見れば右下(南東)にまだ行ったことのない場所がある。北の大陸には港がなくて上陸できないようだが、ここになら港があるはずだ。
アンクヘッグとかいう巨大ムカデがやたらと強いが経験値もおいしい。やがて、三日月湖に囲まれたクレセントレイク(そのまんま)の町にたどり着いた。戦士の鎧以外をミスリルにする。魔法の値段がついに6桁になったと思ったら「L620000」というのは「L6の魔法が20000ギル」という意味だと気づいて一安心。予言者が輪になっているのが楽しい。リッチを倒したらまた来てみよう。
あらためてアースの洞窟に潜り、地下5階のリッチのところまでたどり着いた時点でレベルは13になった。まだ赤魔がファイガを使えないのだが勝負に出る。
いきなりのブリザラを食らってHPが半分ほど削られるが、こちらもヘイストのかかった戦士"たける"とモンク"そうた"の攻撃で確実に奴のHPを削っていく。2ターン目からは赤魔の"はるき"と"そら"も、サンダラで攻撃に回る。
もう一度攻撃魔法が飛んできたら危ないと思ったが、3ターン目に見事撃破に成功! 土のクリスタルが輝きを取り戻し、奥にある祭壇から地上にワープできた。帰り道も心配だったのでポーションと毒消しは大量に用意していたのだが、結局それぞれ15個と5個しか使わなかった。
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レベル13でリッチ戦。ヘイスト攻撃とサンダラ連発、4人の力を合わせて3ターンで勝利!
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リッチ戦について、日記にはこれだけ書いておいた。改めて4人のパラメータを見て、現実では一番体力がなさそうな僕の分身である戦士"たける"が、一番タフで打たれ強いのはなんとも皮肉なものを感じた。もっと、強くならなくちゃ。
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注:
リッチの行動パターン
魔法のローテーションは固定(ピクセルリマスター以外)で、ブリザラ→スリプラ(単体眠り)→ヘイスト(自己強化)→サンダラなので、実はブリザラさえ耐えてしまえばまず負けることはないようになっている(シーフ4人などの無茶な編成でも無い限り)。
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