第11話

帰路で雅が


「(今日私が働いているマスターのお店行ってみない?)」と雅


「(あのワインバー?)」


「(そうそう。備中倉敷葡萄酒酒場っていうの。)」


「(へぇ。でも俺、ワインなんて飲んだことないよ?)」


「(大丈夫。マスターはシニアソムリエだからいいワイン選んでくれるよ!)」


「(そっか。それなら行ってみようかな。)」


「(その前に腹ごしらえだね。マスターの店は予約がないと料理が出せないの。だからふるいちによってうどんでも食べてから行こうよ!)」


「(わかった!)」


岡山駅に着いて倉敷に向かい、倉敷駅から駅前のふるいちに向かった。うどんと言えば香川県なのだが、ことぶっかけうどんに関してはふるいちが発祥らしい。


もう夜7時頃になっていた。ふるいちに着き、雅が


「(私は普通のぶっかけがいい。一緒に頼んでよ。私話せないから。)」


「(今までどうやってきたの?)」と返すと


「(ほとんど筆談だよ。そんなことはいいから早くたのんで!)」と少しばかりイラついた口調。


「(わ、わかった。)」「それじゃあ、ぶっとろ大のひやとぶっかけのひやお願いします!」


「(あ、ひやで頼んじゃったけどいい?)」


「(あったかい方が良かったけどそれでもかまわないよ。)」


「(そっか。それじゃあ、2階で食べようか。)」


「(うん。)」


2人うどんを黙々とたべる。つるつると二本ぐらいしか吸えない雅が面白かった。


「(雅って、ズルってうどん食べられないの?w)」


「(うるさいなぁ。肺活量がないのよw乙女にそんなこと聞いちゃダメよ)」


2人の世界だが、おそらく周りから見たらなんで無言なのっていうデフォルト。


8時過ぎぐらいに雅が働いているワインバーに行った。こじんまりとしたバーで表はガラス張り。木のぬくもりを感じさせる作り。テーブル席は二つ。カウンターは5席ぐらい。ものすごく人でにぎわっていた。雅が店に入りマスターのところへ行くと、


「おお!雅か!今日は休みだぞ?皿洗いでもするか?w」というが当然雅には聞こえない。


筆談で『今日は連れと一緒に来てるから、席が空いたら呼んでくれない?』と


『わかった。表で待っとけ。てか、表の彼氏は未成年じゃないの?』


『そこはマスターの顔でなんとかしてよ』


『んー、しょうがない。ここは目をつぶってやるよ!』


「(イエイ!)」とピースしながら私の方へ向いた。しばらく外で待つことにした。その間煙草を何本か吸って待っていた。


客が二人出ていってカウンターが二席空いた。


「入っておいで!」とマスター


「おじゃましまーす。」と私。


大人びた空間に不慣れな私は凄く圧倒されている。場違いなのはわかっているが、それも雅が一方的に引っ張ってくる。年上の彼女を持つということはこういうものなのか?とふと考えた。


「お兄さん、名前はなんていうの?てゆーか、雅が彼女だと会話とか焦らなかった?」とマスター。マスターは40くらいのあごひげが生えたダンディな細身の気品漂う男性だった。


「ああ、僕の名前は秦野駿です。とくに雅との会話は...」とその瞬間


「(私がテレパシー使える事は言わないで!)」と入ってきた。


「ああ、雅との会話は多少大変ですけど、可愛いので許してしまいますw」と私


「(なんで俺がテレパシーの話しそうになったの分かったの?)」


「(だから駿が聞いてることも時折聞こえるんだってばw)」


なるほど...


(あぁ、そうなんだ...マスターは雅がテレパシー使えることを知らないんだ。そして繋がることもできないんだ。)と思った。


to be continued...

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