第8話
その後家に帰って、翌日。
「ねむてー!今日は遅刻でもしていこう。」
私は決して真面目な生徒ではないので遅刻や早退は自由気ままにしていた。それに対して初めのほうは担任も怒っていたが、数学の成績が上がってきたらなにも文句を言わなくなってきた。むしろ「よく来たな!」と言われるぐらいだった。そう、あの机ごと外に出された先生にだ。学校での生活は退屈なものだ。そりゃ学校でも恋愛ごっこはしたことはある。好きだった子とタイミングが合わずに付き合えなかった子や、修学旅行先で元カレに寝取られた子など。すぐにやらせてくれるという子を真剣に好きになったが、私にはやらせてくれることなく終わった。私のことが好きだと言ってた子と付き合ったが、泣きながら別れの電話をされたなど。どの子も1週間で別れた。つくづく女に恵まれない運命だな、と思った。こんなに真剣に好きになってもうまくいかないので自己肯定感は下がる一方だった。と、まぁ、そんな感じだ。
そんなわけで時間には間に合うが家でゆっくり煙草を吸って学校に行った。しかし今でこそ未成年の喫煙は禁忌みたいな感じだけど当時は結構な割合で煙草を吸ってるやつが多かった。
「おはようございます。」
と職員室に入ると、遅刻してきたクラスメイトがいてめちゃくちゃ叱られていた。それで私が行ったら、
「おう!よく来たな、秦野!」
と天と地の差ほどの対応。そりゃだめだろうって私でも思った。
そんなこんなで始業。物理の授業だった。私はノートを取らずずっと黒板を見ていた。やけに授業が長引く。次の授業は数学で私が問題を解く順番になっていた。だから私は
「先生!授業を終えてください!もう時間です!」
と言って無理やり終えさせた。そして次の数学の授業だった。問題をやっていなかったのでこの10分間の休み時間に解かなくてはならなかった。しかし私はその公式をしらなかった。だが、神がかりな解き方が降ってきた。「これ微分すればいいんじゃね?」と。2次関数の問題で微分を使って解いた。先生がその解答を見てざわつく。クラスもざわつく。その後授業が終わって「その解き方どうやって知ったの?」とクラスメイトに言われたが私は適当に「塾で教えてもらった。」と言ったら私が通っている塾に入る人が増えたという珍事件が起きた。
まぁ、そんなこんなで今日も今日とて塾へ向かった。
電車に乗ってて行きがけにあの小屋は見えないのか?と問われると、見えなくもないが、見えずらいといった感じである。それに夜でないとなんとなく「その」雰囲気が出ないのである。
それより塾へ行く足取りが軽い。別に今日、雅さんに会えるわけではないのだが、その近くまで行くと考えると口角がにんまりとする、アルカイックスマイルのようになるのだ。
そして塾を終え、家に帰り、朝が来て学校へ行き、ビデオテープの早回しが続いた。
そして次の水曜日が来た。もう気が気じゃない。興奮冷めやらぬ。思春期の男子の勢いたるものはこうもあるか。といったものだ。塾を終え、急いであの小屋へと向かった。
意識を集中し、
「(雅さん?)」とノックをすると
「(は~い)」という少し小さな声だった。
「(入ってもいい?)」と聞くと
「(どうぞ)」と返ってきた。
ドアをあけるとビールの空瓶が3本ほど並んでいた。
「(雅さん、酔ってるの?だから声が小さいの?)」
「(新月の夜にはね、私の力が弱いの。だからもっと寄って。)」
「(これぐらいですか?)」と言うと
「(もっと近く)」
「(もっと?これぐらい?)」
「(もっと!わからずやが!)」
「!!」
と、近寄られた瞬間にキスをされた。そして舌を絡めた。初めてのキスがディープキスだったというのがもう衝撃すぎてどう表現すればいいのかわからない。酔っているとは言え、こちらも男だ。
そして赤いベルベットのソファーに倒れこんだ。しかし
「(駿ちゃん、この先はまだ早いわ。今日はここまでね。)」
「『なんだよ自分からしてきたくせに...』」と心の中で思ったが、
「(そんなにがっがりしないで。あと私にさん付けはいらないからね。)」と見透かされたようで
「(わかったよ、雅...)」と口を紡いだ。
心の動揺が抑えられなかった。二人ソファーに並んで座っていた。雅の飲みさしのビールを一気にゴクリと飲みこんだ。
to be continued...
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