第7話
慌てて臨海鉄道に飛び乗った。まだ少し時間はあったようだ。座席にすわり少し頭の中で整理した。テレパシーというものが本当にあるんだな。にわかに信じがたいが、この体で実感した。手も足も動く。夢ではない。それにしても耳が聞こえないのにどうして発音などが分かるんだろうか?とふと思ったが、それがテレパシーと言うものなのだろうと自分で納得した。
電車が発車し、「あの」小屋の十数秒間にさしかかった。彼女は歌っていた。というより、歌っていてくれたが正解に近い。そのように直観的に感じた。まだ私の心は動揺している。驚いたのもあるけれど、何というか、桜のつぼみが芽吹く淡い生命力のようなものであった。
家に帰ってもなかなか眠れなかったが、明日も勉強をしなければと思いながら今日の出来事を振り払うように布団をかぶった。
翌朝。自律神経がピリピリする。昨日あんまり眠れなかったのと、少し興奮気味だったせいだろうか?なんとなく嫌な感じである。無論、あの彼女の話は父にも母にも話してはいない。おそらく誰にも話さない。直観的に誰にも話さない方が良いと思うからだった。そしてまた学校へ行き、空き教室で自習をしていたら呉野が
「駿ちゃーん!眠そうじゃん!勉強頑張りすぎてんじゃないの?」と、
「ただ単に眠れなかっただけだよ。亮一はいいよな、頭いいから。」
などと戯れていた。今日も普段通りの毎日だ。しかし雅さんのことが頭から離れない。ずっとそのことを授業中考えていた。「一体何なんだろう?」と時折首を傾げつつ。そして塾へと向かうのであった。
塾に到着し、ケイに会った。
「あれ?秦野、なんだかボケーってしてるな?恋でもしたか?w」
と聞かれ思わずビクッとしたが、「これは恋とかそういうものなのだろうか?」などと考えていた。実際私はその恋愛ごとに無縁であったからである。
「ちげーよ!そんな暇ないだろ?受験生なんだから。」
「私に惚れてもいいんだよ?w」
などとケイがおどける。
「はははw結婚でもするか!」
と適当に話を返していた。
授業が始まったがやはり上の空。それよりこれから雅さんに会いに行く方が楽しみだった。
塾が終わり勇み足で「あの」小屋へと行った。ノックをしても返事がない。恐る恐るドアを開けてみると空いていたので入ってみた。やはり雅さんはいなかった。そしてガラステーブルの上に手紙が置いてあった。
「駿へ。私は仕事に行ってます。基本的に水曜日の夜しかここにはいません。それか深夜ぐらいだね。でも高校生が夜中出歩くのは感心しないので、深夜にはこないでね。」
と。かなりガッカリしたが、ちゃんと私が来るといことを察知してくれてたと思うと嬉しくなった。私も深夜は眠いから行かないので毎週水曜日に行くことにしようと思った。
to be continued...
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