第6話

部屋の中に入ると赤色のベルベットのソファーとテレビ、奥にはキッチンと冷蔵庫があった。部屋の片隅には洋服がかかっている。ヴィヴィアンウエストウッドの赤いチェックのスプリングコートやその下にはラバーソールの靴。彼女が今着ている白のワンピースとは趣味趣向が違うのではないか?と思うような服が並んでいた。月光の下では分からなかったが、目の色がかなり薄い茶色をしてる。


「(ちょっと驚かしたかもしれませんが、これでも飲んで落ち着いてください。あ、そこのそふぁーに座ってください。)」


おもむろにソファーに座り、そっと手にした彼女が渡した飲み物。CORONAと書いてある。とりあえず一口飲んだ。


「ぶふっーーーー!これビールじゃん!あ、聞こえないのか...」


噴き出したビールを気にしながらも、再び意識を集中する。


「(これビールじゃん!なんでこんなの飲んでんの?てか何歳?)」


身長が低かったから私よりも年下に見えたのだった。


「(まぁまぁ、落ち着いてください。私は20です。ビールは職場の店長からもらったの。少し酔った方が落ち着くかとおもいましてねw)」


「(まぁ、ビールぐらいなら飲めるし。)」


と少し大人ぶって見せたがやはり飲みなれないものだった。そしてまた私が


「(てゆーか、名前は?ああ、俺は秦野駿。)」


そういうと彼女は


「(私は川端雅。あなた年は?制服着てるから高校生だと思うけど。)」


確かに私は学校と塾の行き帰りは制服だった。


「(てゆーか、高校生だと思うんならビールだすなよ!17だけど...)」


「(だってあなた制服からほのかに煙草の香りがするんだものwだからお酒ぐらい飲めるかと思ってw)」


彼女はからかうようにクスッと笑った。


確かにお酒は飲んだことはあった。それよりこの時代は高校生が居酒屋に入っても特になにも怒られない時代だった。普通にチューハイぐらいなら飲めた。私が最も好きだったチューハイは当時しかなかったオロナミンCで作った八剣伝のパンチサワーである。今のパンチサワーにはオロナミンCが使われてない。と、話は飛んだが、


「(ところで俺とはこうやってテレパシー?で話せるけど普段手話とかで話すの?)」


と聞くと


「(手話は使わないわ。なんとなく相手が言っていることがその人の表情で分かるの。なんとなくだけどねwだから身振り手振りで適当に過ごしてるよ。それに...)」


少し間が空いたので


「(それに?)」


「(ううん、何でもない。)」


何かあるんだろうな、とは思ったが初対面の人にそこまで聞こうとは思わなかった。それよりも初対面の相手になんでこうもすらすらと話ができるのかな?と考えた。やはり頭の中で考えていることが繋がっているからであろうか?そんなことより私より幼く見える年上の女性に少し複雑な感情を抱いた。


「(それより川端さんはなんでこんなところに住んでるの?)」


「(雅って呼んで。ここは元々、このビルのオーナーの愛人が住んでたところらしいの。それを今の職場のマスターが買い取ったから使わせてもらってるの。)」


「(それで雅さんの職場ってバーか何かなの?)」


「(そうそう。私のマスターはワインバーをしているよ!)」


「(え?ワインバーなのになんでビールが出てくるの?)」


「(オーナー個人で飲む分にはビールも置いているらしいのよw変わってるでしょ?)」


「(ふーん。そうなんだ。ちょっと待って、今何時?)」


「(10時すぎかしら?)」


「(やべ、終電乗り遅れる!これ、俺のピッチの番号!)」


私のノートの切れ端に番号を書いて渡した。


「(だから私は耳が聞こえないんだってばw)」


「(ああ、そっか...それじゃあまた会いに来るよ!じゃあね!)」


そういって私は倉敷駅に向かった。


to be continued...

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