第5話
私はあわててそのビル周辺に向かった。歌は近づくにつれて大きくなっていった。付近までくると詳細な場所が分からなくなった。しかしどことなく繋がっている気がする。だから目を閉じて目玉をグルグルと方角を定めてみた。するとその発信源がなんとなくわかってきた。おもむろにその場所へと歩いて行った。
そのビルにたどり着いた。シャッターが閉まっている雑居ビルで屋上にまで行ける階段があった。しかしそこには立ち入り禁止の看板がかかっていた。何やら鍵のようなものがついていたが、どうやらドアは空いているらしい。「え?これって一般の人が入っていいやつ?」などと思いながら恐る恐る階段を昇って行った。階段自体はそんなに長くない。そのビル自体が4階ぐらいの建物だった。昇り終えるとそこには「あの」小屋があった。
そこで目にした光景は、身長が150㎝あるかないかの赤いく長い綺麗な髪をした少女が真っ白なワンピースを着て月に向かって歌っているという姿であった。不思議なのがその歌声だ。耳に聴けているわけではない。おそらく脳に直接語りかけているものであった。歌っている曲はおそらく「翼をください」だ。
私はこの場面をどうすればいいのかよく分からなかった。声をかけるべきなのか、それともここから逃げるべきなのか?未知なるものに遭遇したときは逃げろというのが私の中での鉄則であったからである。そう考えあぐねていたら、
「(あなたは私の声が聞こえるの?)」とすぅっと頭の中に入ってきた。私は気が動転して
「あなたは何者なんですか?」
と言うと、彼女は
「(私は耳が聴こえません。心の声で伝えてください)」
と返答があった。(心の声?)と思いながらどうすればいいのか分からなかった。
「(目を閉じて、私と繋がっている方向に意識を傾けてみて。そうしたら繋がるから...)」
そういわれ試してみた。意識が繋がる方へと傾けた瞬間に脳天から魂のようなものがすぅっと彼女と繋がった。
「(どうやら繋がったみたいですね。)」
と彼女が言った。
「(この声聞こえてるの?)」
と私が言うと、
「(聞こえてますよ。こうやって話が繋げることが出来る人がいるのは久しぶりです。)」
と彼女が言うが、私には何が何だかわからずにパニくっていた。「え?これって超能力?テレパシー?そんなんあるの?現実に?いやいやいや、冷静に考えろ、彼女と頭の中で繋がっている...ということは超能力か...超能力!?」
「(慌てないでください!私も急で悪かったです!少しずつ話しましょう。とりあえず部屋へ入りませんか?)」
「(ああ、分かった。少し頭を冷やさせてくれ...)」
to be continued...
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