カラス
鳥がわめく声で目が覚めた。午前六時前の、早朝の時間帯だ。
怪訝な顔で窓辺に寄り、カーテンを開けて外をうかがう。五、六羽ほどのカラスが、ゴミ捨て場でぎゃあぎゃあと騒いでいた。
「迷惑な客だこと」
悪態をつき、カーテンを閉める……と、ぎゃあと鳥が喚く音が間近で響いた。眉を寄せて、再びカーテンを引く。
一羽のカラスがベランダの手すりにとまり、黒い眼を私に向けていた。どこか、物言いたげな眼差しだ。
「……気味が悪い」
顔をしかめ、私が吐き捨てるように呟く。カラスは私の顔をじっと見つめ、僅かに首を傾ぐと、
「──ひどいことを言うね。カラスを怒らせると、あとで後悔するよ」
嗄れた声だった。僅かに開いたくちばしの間から、呪詛のような言葉が流れ出る。
カラスは唖然とする私に背を向け、翼を広げて飛び去っていった。立ち竦む私は言葉も出ずに、視線だけを下へと向ける。
あれほどやかましかったゴミ捨て場は静まり返っていて、そこに集るカラスは、一様に私のほうを見上げていた。
慌てて窓辺から離れる。異様な状況に、動悸と目眩がした。
そうして──数刻ほど間を置き、思い切って窓の外を見たときには、カラスの群れはすでに立ち去っていた。ゴミ捨て場は好き放題に荒らされていて、無惨な有様となってしまっている。
だが、私が何より恐ろしかったのは、カラスの発した忠告と、不穏なあの視線だった。
──それっきり、うちのゴミ捨て場にカラスが現れることはなくなった。
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