贈り物を
贈答品を選んでほしい、と彼女は言った。晴れた金曜日の、喫煙所での出来事だった。
僕は曖昧に煙を吐きつつ、嬉々としてライターを持ち出す彼女に問う。
「なんでわざわざ僕なんかに相談するんだよ。きっと、後で後悔するよ」
「相談できるのが君しかいないから、考えた末の妥協案ってわけ」
すう、と煙を吸って、彼女が告げる。僕は煙まじりのため息を吐き、煙草の灰を受け皿に落とした。
「文句は言わないでよ」
「もちろん」
彼女が笑う。笑顔だけは輝いていて、百点満点だった。
「それにしても贈り物なんて、いったい誰に送るんだよ」
煙たさに若干むせつつ問いかければ、彼女はにこやかに微笑んで、
「死にきれないあなた宛てよ」
そう続け、彼女はどこか愛しげに僕の名を呼んだ。
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