第25話強キャラすぎ…
今更なことで恐縮に思うのだが僕の恋人は学校一人気者の超絶美少女。
今でこそ慣れてきたが正直に言うと始めの頃、一緒に居る時は緊張が解けることはなかった。
そんな僕らの過去のデートの時の話を今しようと思う。
あれは付き合ってから数日が経った日の放課後のことだった。
「海と桜を一緒に見てみたいな♡」
ルナからの唐突な提案に僕は頭を悩ませる。
スマホで検索をかけてSNSで情報を探る。
そして見つけた場所へ僕らは電車を乗り継いで向かう。
電車内でルナは僕の腕にしがみついていて甘えたような声を出す。
「車内では目を瞑っていて?♡」
「えっと…着いた時に一緒に見たいから…とかそういう話?」
一応尋ねてみるのだがルナは静かに首を左右に振るとにこやかに微笑む。
「私以外の女性を視界に入れちゃダメだよ?♡」
などと無茶な注文が耳から脳に伝わってくると僕は言われた通り目を瞑った。
「ありがとう♡」
感謝の言葉を頷きで受け取ると目的地の駅まで目を閉じたまま電車に揺られるのであった。
電車を降りたら目を開けて良いとのことだったので目を開けてスマホに目を向ける。
地図のアプリで目的地を検索すると道順に沿って歩き出す。
「街でも他の女性はなるべく視界に入れないでね?♡彼女からのお願いだよ?♡」
「善処します…」
できるだけ丁寧に言葉を口にすると僕らはそこに辿り着く。
海と桜を一緒に見ることが可能な高台の公園。
そこで僕らは静かな時を過ごすのだが…。
「うん♡やっぱりいいなぁ〜…」
ルナはスマホを手にするとインカメラで景色と僕らを写真に収めていた。
「実物もいいけど映像でも良いね♡」
ルナは僕に甘い言葉をかけると嬉しそうに腕にしがみついてくる。
しばらくその公園で過ごすと満足したのか僕らは帰路に就いたのであった。
何故、僕が今その様な過去の話を思い出しているかと言えば…。
「タケル。彼女からのお願い。思い出せる?この人は絶対に視界に入れてほしくないかも…」
家のチャイムを押して玄関の前で待っていた久遠の姿を見てルナは警戒心を顕にする。
「タケ。ずっと僕を待ってただろ?」
薄着なのに妙に様になっている眼の前の久遠に僕らは一瞬で目を奪われる。
「タケル!目を閉じて!」
言われたとおりに目を閉じるとルナは何処か警戒しているようだと思った。
別に久遠は悪い人間ではない。
ルナが何にここまで警戒しているのか僕にはわからない。
ただ久遠を見た瞬間に、
「志摩さんとは明らかに別人だな…」
などという感想を抱いた事は確かだ。
「タケ。ダメだろ?僕以外の女子の言葉を聞く必要なんてないさ」
久遠の心地の良い声色に全神経が集中していく。
その言葉に従いたくなるような懐かしい感覚。
僕はそれを久しぶりに体験していた。
「タケル!しっかりして!」
ルナは僕の背中に手を置くとしゃきっとさせるために一度お尻を叩いてくれる。
無言の状態が暫く続いていたような一瞬だったような感覚が麻痺しそうな現実味のない時間がゆっくりと過ぎていた。
「今の彼女?しばらくタケを貸してくれないか?僕らはしっかりと話し合わないといけないんだ。少しの間、僕が留守にしていたからね。浮気だなんて思わないよ。ちゃんと謝ればいつものように優しく抱きしめてあげるから。おいで。タケ」
久遠の言葉が脳に直接命令を下しているような錯覚に陥る。
だが既の所で制止してくれたのは、やはりルナだった。
「今は仕事中なので迷惑です」
「仕事?家でどんな仕事をしているんだい?」
「家事全般に書類の整理など…」
「じゃああれだ。君たちはメイドや執事みたいなものだろ?じゃあ客人は丁重に招かないとね」
気取った感じもしない余裕のある久遠の言葉にルナは少しだけ苦い表情を浮かべていた。
「私は家のものではないので判断しかねます」
ルナは出来るだけやり取りを長引かせて明確に客人とは認めない構えを取っていた。
「じゃあ。タケが決めてよ」
久遠からの提案に僕は一度ルナの方を振り返ると深く頭を下げる。
「ごめん。少し仕事に穴開ける。でも心配いらないから。すぐ戻る」
玄関で僕を待っている久遠のもとに急ぐと僕らは夏空の炎天下に晒されるのであった。
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