第20話学校一のイケメン

バイト先が自宅だなんて…なんだか複雑だが魅力的な話でもある。

家事はもちろんのこと両親の部屋で手伝えることは手伝う。

アシスタントのようなことをするのかと問われれば否だが書類整理や部屋の片付け等だ。

二人揃って家事を進めていき19時あたりに夕食の準備が整う。

最初の内は食事も簡単なものしか作れなかった。

作るというよりもレンジで温めたりお湯を注いで作るようなものが主だった。

しかしながらそれで報酬をもらうのも申し訳なく思いスマホでレシピを調べるようになる。

拙い手付きで二人して料理を作るとお互いに味を確認しながら試行錯誤を繰り返した。

何なりと食事の準備ができるようになるまで一ヶ月ほどの月日を費やすこととなるのであった。


バイト生活にも慣れてきた夏休み数日前の放課後のこと。

「タケ!夏休みの予定って何かあるの?」

志摩は僕のことを廊下で待ち伏せていたようで用意していた言葉を口にする。

「私とタケルはバイト三昧です。休日はデートですし予定は空いていません」

僕の代わりにルナが答えると志摩は戯けたような表情を浮かべていた。

「働くのなんて高校卒業してからいくらでも出来るでしょ?夏ぐらい遊んで過ごそうよ♡」

「そうはいきません。タケルのご両親とも約束があるので」

「ご両親?」

志摩はわけが分かっていないようで首を傾げていた。

「タケルの家でバイトしてるんです。手伝いの様なものですけど正式に雇っていただいているので適当なことは出来ないんです」

「タケの親公認で付き合ってるんだ…なんか羨ましいな…」

「そうなんです!だから先輩の入り込むすきはないんですよ」

ルナは勝ち誇ったような表情を浮かべると腰に手を当てて勝利のポーズを取っていた。

「それはどうかな。まだチャンスはありそうだけど…」

志摩は意味深な言葉を口にすると僕らに手を振ってその場を後にするのであった。


二年生の一学期、終業式の日。

ルナは先輩の男子生徒に呼び出されていた。

場所は体育館裏。

学校一のイケメンと言われているモデルの先輩。

「ルナちゃん。良かったら俺と付き合おうよ」

「………」

僕は気になってしまい恋人の後を尾行するような真似をしてしまう。

押し黙るルナを目にして僕の心臓は嫌な音を立てた。

(考えている…?僕よりもスペックが高いから…?)

その心配は果てしなく続いていくような錯覚すら覚えるのであった。

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