第17話平行線な幼馴染
話を端折って大変申し訳無いのだが、成瀬家で特別なことは何も起きなかった。
ルナだって馬鹿じゃない。
両親が階下に居るのに僕を誘惑するほど脳内がピンク色ではないのだ。
そもそもいつもミカが隣りにいるためその様な雰囲気にもならない。
少しの接触などは合ったが取り立てて特別なことはなかった。
成瀬家で豪勢な食事をごちそうになると20時頃に帰宅した。
「ただいま」
他人の家で過ごしていたため気疲れしていたのかドッと疲労感が押し寄せるとすぐに自室に足を向けた。
両親は今も仕事をしているのだろう。
リビングの明かりはついていなかった。
階段を登り自室に向かうと中から話し声が聞こえてくる。
扉を開けると中ではスミスと妹のミコトが談笑を繰り広げていた。
「あっ!お兄ちゃんおかえり!ルナさんの家に行ってたんでしょ!?どうだった!?」
ミコトはそういうことにも興味が出だしたのか帰宅して早々に目を輝かせていた。
「悲しいほど何もなかったよ。そもそも家を出る時にめっちゃ釘刺されたし」
「ははっ!お母さん怒ると怖いもんね!」
ミコトは空気を読んだのかスミスに別れを告げると僕の部屋から出ていく。
「どうした?」
スミスに問いかけると彼女は何処か嬉しそうに微笑んでいた。
「別に。何もなくてよかったなって思ってるだけ」
「あるわけ無いだろ。ルナのご両親も居たし妹もずっと居たんだから」
「居なかったらしてたの?」
「そうじゃないけど…僕らにはまだ早いし…」
正直に思ったことを口にするとスミスは複雑な表情を浮かべていた。
「時間が経ったらするの?」
「今日は何?随分深く踏み込んでくるね」
「何って…タケルを本格的に渡したくないし」
「………」
僕らは言葉に詰まると沈黙の状態で部屋の外を眺めていた。
「そういう事したら報告してね…心の準備はしておくから」
「心の準備?」
「ショックを受けないように…じゃないよ?♡」
「ん?じゃあ何?」
「そ・れ・は…♡」
スミスは一文字ずつ言葉を区切ると僕を誘惑するように谷間をちらつかせる。
「恋人に初めては譲るけど…その後は好きにしていいよね?♡」
などと僕の倫理観にはない言葉を口にすると妖しく微笑む。
言葉に詰まっているとスミスは表情を変化させて椅子から立ち上がった。
「なんてね♡じゃあまたね♡」
スミスはそれだけ言い残すと部屋を出ていく。
僅かに変化していくスミスとの関係に胸にしこりを覚えるのであった。
翌日の日曜日。
ルナは家族と出かける予定があったらしく僕は暇な時間を過ごした。
そして月曜日。
「昼休みに演劇部のリハーサルがあるんだ。見に来てくれるだろう?」
用意していたような芝居がかった台詞を口にする志摩に僕とルナは目を合わせて一つ頷くのであった。
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