第14話第三幕が始まろうとしていた
目的地に向かう道中で僕はスマホを手に取った。
トークルームに蛇川に指定された場所のURLを貼り付ける。
「良い狩り場。全員集合」
仲間にチャットを飛ばすと彼らは全員スタンプで参加を表明した。
急ぎ足で目的地に向かうとそこはホテルの一室だった。
複数人でも入っていいラブホテル。
指定された部屋番号をノックすると蛇川が姿を現す。
「いらっしゃ〜い♡楽しいことしようねっ♡」
中に入っていくと複数人の下着姿の女性。
だが何故か不思議と興奮はしない。
「ミカちゃんは何処?傷つけてないよね?」
「ははっ♡こんな時にナイト気取り?♡かっこいい〜っ♡」
「そういうのは良いから。今は何処にいる?」
「隣の部屋にいるよ。仲間に見張らせて隔離している。少し騒がしかったから…ちょっとだけ痛い思いはさせたけど。問題ないでしょ?」
蛇川は悪い笑みを浮かべると僕を誘うようにベッドを指さした。
「さぁどうぞ♡皆で楽しもうね?♡」
「何で僕なんだ?」
「ははっ♡わからないの?うざったい成瀬の彼氏を寝取ったらさぞかし気分が良いと思ってね♡」
「そうか。わかった…」
僕は静かに頷くと諦めたわけではないがベッドの方に足を進める。
と、そこにタイミングよく仲間がやってきて僕に救いの手を差し出してくれる。
「わりぃ。遅くなった。って本当に良い狩り場じゃん!」
仲間は下着姿の女性を目にして興奮気味だった。
「ごめん。その前に隣の部屋に人質が居るんだ。お楽しみはその後でも良いか?」
「OKOK!じゃあまずは鍵をください。お嬢さん」
タカシは芝居がかった所作で蛇川に対面すると右手を差し出した。
「面倒になったわね。渡してもいいけど。そっちには私の仲間の男子が居るわよ?」
「問題ないね。良いから早く渡してよ。女子に怖い思いはさせたくないんだ」
タカシは蛇川から鍵を受け取ると僕に鍵を渡して隣の部屋を開けた。
「何だお前ら!」
男性の怒号が僕らを迎え撃つが仲間が彼らを相手取っている間にミカを探した。
ベッドの上で縛られているミカを見つけると縄を解いてあげる。
「タケル!私を助けに来てくれたの!?」
ミカは涙目で僕に抱きつくと彼女の身体は恐怖で震えていた。
「何もされてない?」
「うん…いや、頬を叩かれた…」
「わかった。もう大丈夫だから一緒に帰ろ」
ミカは頷くと僕の腕にしがみついたままベッドから起き上がった。
仲間は男性を全員伸していて面倒くさそうに首を回していた。
「なんだよ。狩り場って言うから楽しい事しかないと思ってたのに…こんな連中居るなんて聞いてないぞ?」
ナオキは面倒くさそうに口を開くとそのまま隣の部屋を目指した。
隣の部屋ではタカシが見張りをしていて女性を逃さないようにしていた。
ミカを連れて隣の部屋に向かうと彼女に問いかける。
「誰に叩かれた?」
ミカは蛇川を指差していた。
「ミカちゃんはやり返したい?」
その問いにミカは首を左右に振った。
「じゃあどうしたい?」
「警察に突き出してほしい」
ミカの冷静な判断に仲間たちは少しだけ落胆のため息をつく。
「警察呼んじゃったら楽しめないじゃんかよ…せっかく童貞卒業できると思ったのに!」
マコトは残念そうに項垂れていた。
「狩り場って言うからお楽しみの時間もあると思って来たのに!脱童貞が…!」
シンヤも泣き言を口にして天を仰いでいた。
「まぁ。被害者がそう言うんだから仕方ないだろ。童貞卒業のチャンスだったのは事実だけどさ…」
タカシは仕方なさそうに納得してくれてジョーもそれに頷いていた。
「じゃあ警察呼ぶね。事情聴取受けると思うけど大丈夫だからね」
ミカを安心させるように頭を撫でてあげると彼女は微笑んで頷く。
数分後に訪れた警察に事情を話して彼ら彼女らを連行してもらうと僕らも事情聴取を受ける。
だが僕らは罪に問われることもないらしく数時間で解放された。
「トラブルには巻き込まれないように注意してくださいね」
警察からのありがたい助言に頷いて応えるとミカの両親が警察署に迎えに来る。
「ミカ!大丈夫なの!?」
「うん。タケルが助けてくれたから…」
「タケル?」
「そう。ルナの彼氏。私を助けてくれた王子様♡」
ミカはそんな言葉を口にすると僕の腕にしがみつく。
「そう。ありがとうございました。今度お礼がしたいので家に遊びに来てください。ルナもミカも喜びますから」
「わかりました。そのうちお邪魔します」
丁寧に頭を下げるとミカの両親は警察署を後にする。
僕らの両親も同じ様に迎えに来ると警察から少しの注意と少しの称賛の言葉を耳にした両親たちは複雑な表情をしていたのであった。
後日。
ルナはミカを救ってもらったことに深く感謝してくれる。
蛇川達グループは拉致監禁に暴行も含まれていたため捕まってしまった。
彼ら彼女らには余罪もあったらしく逃れることは出来なかった。
トラブルの大本が消えてくれて僕らには安寧の時が訪れていた。
だがしかし…。
一安心している時に限って新たな火種は降り注ぐもので…。
「タケ?タケだよね!?私の永遠の恋人♡」
その演技臭い言葉選びをする女子には一人だけ心当たりがある。
無視をしたいが出来ない…。
これから新たなヒロインを含めた新たな物語が始まろうとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。