第10話妹登場
「蛇川さん。私の恋人の手を触らないでもらっても良い?」
冷ややかだけどキレイな微笑みを浮かべたルナの声がクラスに響き渡る。
「あぁ〜ごめんねぇ〜彼女来ちゃったから私は行くねぇ〜またね?タケルくん♡」
蛇川は飄々とした態度でやり過ごすとクラスを出ていく。
「帰ろうか」
ルナに問いかけると彼女は仕方なく殺意を引っ込めて微笑んで頷く。
「じゃあ約束通りネットカフェ行こ?」
それに頷くと僕らは教室を出て街に向かうのであった。
駅近くのネットカフェの個室で僕らは漫画を読んで過ごしていた。
「普通こういう時イチャつかない?」
ルナは不満があるようで僕にそれをぶつけるのだが…。
個室の張り紙を指さして首を左右に振る。
「性行為など禁止。こういうところでは基本的にダメだよ」
「えぇ〜…キスも?」
「それに準ずる行為やその後に発展しそうな行為も禁止だよ。それに普通にカメラあるよ?見られながらじゃないと興奮しないの?」
誂うような言葉を口にするとルナは顔を赤くして口を膨らませていた。
「そういうのじゃないし!でも…少しはイチャイチャしたかったんだもん!」
自分の恋人の可愛らしい姿を目にして僕は微笑ましく思った。
「確かにそれはそうかもしれないけど…僕の家は両親が居るし…」
「じゃあうちくる?この時間なら誰も居ないよ!?♡」
ルナは目を♡にさせてグイグイと僕に迫ってくる。
「でも折角三時間パック買ったのにお金が勿体なくない?」
「私とするよりもお金のほうが大事…?」
上目遣いで迫ってくるルナに僕の心臓は異常な高鳴りを響かせていた。
「じゃあ…行く…」
そこまで口にした所で財布の中に忍ばせてあるアレの存在を思い出していた。
「一番最初に使ったやつがジュース総取りな!」
仲間内の誰かが言った言葉が脳裏をよぎる。
別にジュースが欲しいわけではない。
勝負に勝ちたいのか早く童貞を卒業したいのか。
僕にはそのどちらか分からなかったのだが何故か少しだけ先程よりも心拍数が上がった。
「じゃあ行こ?♡」
ルナは僕の手を引くとそのままネットカフェを後にするのであった。
電車に乗り込んでルナの自宅の最寄駅まで向かうとそのまま10分ほど歩く。
ルナは自宅の一軒家の鍵を開けようとして一瞬フリーズした。
「どうしたの?」
僕の問いかけにルナは少しだけ苦い表情を浮かべて首を左右に振った。
「誰か居る…」
どうやら家の鍵が空いていたようで家には誰か居るらしかった。
「誰かって誰?知らない人だった場合は警察呼ぼうよ」
僕の言葉にルナは首を左右に振って、
「最悪。ミカがいる…」
などと言って玄関のドアを開けた。
「ただいま。入っちゃって。そのまま二階の一番奥の部屋に行って」
言われた通り靴を脱ぐと軽く挨拶の言葉を口にしてそのまま二階に向かう。
一番奥の部屋に向かい室内に入る。
いつもビデオ通話で映っていたキレイに整頓された部屋。
柔らかい匂いのする清潔感のある部屋に感嘆なため息が漏れると椅子に腰掛けた。
階下で何やら言い争っているような声が聞こえてきたが気にせずに部屋を見渡していた。
だが次第に二つの足音が階段を忙しなく上がるのが聞こえてくる。
「ほら!やっぱり!彼氏連れてきてる!」
ルナよりも少し幼い様に思える女子。
「ミカ!うるさい!ママに言ったら怒るからね!?」
「じゃあ私も一緒に遊ぶ!」
「ダメ!あっち行ってて!こっち来ないで!」
「ズルい!私も1番と遊びたい!」
ミカと呼ばれた妹らしき人物は意味深な単語を口にして僕のことを見ていた。
ルナと目が合うと彼女は、
「妹も野球やってたの。余程印象的だったみたいでタケルのこと覚えてて…」
などと言いにくいことがあるようで苦々しい表情を浮かべていた。
「覚えてるよ!ルナを負かした1番バッター!ルナから聞いて私も会いたかった!一緒に遊んでいいでしょ?♡」
ルナと同じ様に他人に甘えるのが上手で可愛い上目遣いを僕に向けてくる。
「いいよ」
「やった〜♡タケル好きっ♡」
ミカは僕のもとに駆け寄ってくるとそのまま軽くハグをする。
その後ろでとんでもない殺意を放っている姉に気付いているのか…?
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