第4話 依頼者②
扉の向こうは喫茶店のキッチンにつながっており、少し先の突き当りには照明の消えた縦長のショーケースタイプの冷蔵庫が見えてきた。キャスターは付いており、作業自体はやりやすそうだ。女性は歩みを止め、冷蔵庫の傍らに立ち、
「見てもらいたいのはこの冷蔵庫。昨日から全然冷えなくなっちゃって、ゼリーやプリンがお客さんに出せなくて困っていたところなの。」
と説明した。
「承知しました。冷蔵庫が冷えない原因はいくつかあるので、少し調べさせていただきますね。この冷蔵庫、少し手前にずらしてもよろしいでしょうか?」
昴が尋ねた。
「はい、大丈夫ですよ。あ、もしかして暗いと作業しづらいかしら…今お店の電気つけてきますね!」
と女性は言った。昴が
「暗くても作業できますので」
と言おうとした前に、女性はスッと彼の脇を通り抜けて、事務所へと向かっていった。程なくして店内がパッと明るくなり、
「これで大丈夫?」
と女性が扉からひょこっと顔を出した。
「ああ、お手数をおかけいたします」
と昴は礼を言った。
「ここの扉は開けておくので、何かあったら声をかけてくださいね。私はここで苦手な宿題に取り組んでいますので…」
と女性は少しおどけて泣きそうな顔をしていたが、昴はどう答えたらよいのか考えに窮したので、とりあえずはにかんだ笑顔で軽く頷いた。
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