ブッコローといっしょ

@mia

第1話

「なんで名前をブッコローにしたんだろう。有隣堂だから、ユーリじゃない」

 そのつぶやきを受けて、もう一人がつぶやく。

「リンリンとか」

 もう一人がつぶやく。

「ドードーとか」

「それは、別の鳥」

 他の二人からつぶやかれる。


「カレーを食べに、あの町に何年か通ったんだ。友達がバイトしてたから、足を伸ばして本屋にも行ったが、ブッコローなんかいなかった」

「私も映画館に通っていた頃、駅と映画館の途中にあったから本屋によく立ち寄ったけど、いなかったよな」

「あー、野球を見に行く時に球場 へ行くまでの途中にあったから、よく本屋に寄ったなあ」

「そこ、駅の出口が違うから」

 他の二人から、以下略。


 「伊勢佐木町だけでなく、神奈川県、東京、千葉、詳しくはホームページへ。

 他の支店もよろしく」

 今までの三人とは違う、声を変えたような声が聞こえる。


「他の支店といえば、A支店にいた女性店員さん親切だったよな。丁寧で、可愛かった。( 個人の感想です)でも今、引っ越して有隣堂が近くにないんだ」

「 私も」

「私もです」


「 大丈夫。有隣堂の通販をご利用ください」

 また、声を変えたような声が聞こえた。


「『若かった頃の思い出の片隅に、有隣堂。でもその片隅に、ブッコローはいなかった。でも、大丈夫。これからでも、たくさん思い出は作れます。いつでもブッコロー会えます』という脚本の動画を撮りたいんですが、どうですかね」


 高齢者向けの企画を提案する。

『これからはどんどん高齢者が増えていくので、その人たちを取り込むのが重要になってきます。若かった頃、この町に来ていた人たちの思い出、ノスタルジーを刺激します。そうやって有隣堂の認知度を上げていきます。そして、その人たちを有隣堂通販へ誘導します』


 もう一つ、別の企画。

『ふくろう喫茶とコラボします。ふくろう喫茶に、ミミズクのブッコローぬいぐるみを置いてもらいます。来店するのはふくろうが好きな人たちなので、興味を持ってもらえることでしょう。ぬいぐるみに二次元コードをぶら下げて、そこから動画へ誘導します。ふくろうが好きな人は、知的な人が多いので(個人の以下略)おそらく動画に興味を持ってもらえます。動画に興味を持った人の何割かは、有隣堂に興味を持ってくれるはずです。そして、在庫確認がすぐできるという利点があるので、通販での購入を検討してくれると思われます』


「…… 仕事だからやりますけど一つ目の企画、範囲狭くないすか。それに今回の企画、『ブッコローを主役とした小説を書く』ことじゃないんですか。動画、関係ないすよね。趣旨、違ってません?」


 疑問を持つブッコローの肩を誰かが叩いた。

 見るとそこにはトリがいた。

 トリの目は語っていた。

 トリという大雑把な名前のため、小説内で 焼き鳥にされそうになった自分よりはずっといいと。 

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