第8話 撃退!コカトリス!

 コカトリスの目の前まで走って近づいていった

 けれども、コカトリスは私たちには目もくれず、避難途中だった小さい子供たちを狙い始めた。


「おいおい、街の人には手を出すなよっ!」


 思ったよりも早く動くコカトリスは、子供のすぐそばまで迫った。

「助けてー!!」


 その声を聞くや否や、戦隊パジャマは急加速して私の隣から消えた。

 凄まじい速さでコカトリスへと走っていき、宙へと飛び上がった。

 家を超えるくらいの高さまで飛び上がる。

 すごい身体能力。魔法をもう使いこなしている。


「ヒーローーーキーーーック!」


 飛び上がる早さよりも加速して、コカトリスへ向かって突っ込んでいった。

 あまりの威力に砂埃が舞った.


「バカ……。これじゃ、何も見えない……」


 しばらくして砂埃が晴れてきて、戦隊オタクの姿が見えてきた。

 先ほどのコカトリスはというと、広場に敷き詰められていた石畳の地面にめり込んだ。


「お前らの好きにはさせない! 私が来たからには、誰も死なせはしない!」


 何やら、カッコいい登場シーンみたいにポーズを決めている。



「おお! 新しい勇者様だ!」

「女性なのか? すごく強いぞ!」


 悔しいがカッコいい。

 パジャマ姿のまま、賞賛を浴びる戦隊パジャマ。


 小さい頃から練習したようなセリフ。

 すらすらと出てくるものよね。私だってファイヤーボール詠唱をすらすらと。

 恥ずかしいから心にしまっておこう。



「一回やってみたかったんだよね!」


 戦隊パジャマが優越感に浸ったように、街の人の声援に答えていると、コカトリスが次々と広場に降りてきた。


 ――コカトリス。群れで行動するのが原則よね。


「まだいるのか! 行くぞーーー!」


 次から次へとコカトリスに攻撃をしていく。

 あんなに力があれば、無双状態よね。

 別に私がいなくても……。



「コケコケー!」

 相変わらず砂埃を巻き上げながら戦闘を繰り広げていると、コカトリスが叫び声を上げて逃げ始めた。


「よし! 逃げてくぞ!」


 すぐにコカトリスの群れは見えなくなった。

「街の平和は守れたな。これでいいか? 狙われた子供たちも無事みたいだし。討伐成功だね!」


 荒れた広場は静寂を取り戻そうとしていた。

 念のため、私は兵士さんに尋ねてみる。

「兵士さん、狙われてた子供たちの点呼でもした方が良いんじゃないかしら……。あんなに砂埃が舞っていたら何かあっても……」


「あれ、アイリスがいねーぞ?」

「アイリスちゃん! どこにいるの?」


 静寂の中で声が響いた。

 子供……。


「さっきまですぐそばにいたのに……」

 きっと、砂埃にまぎれて攫われてしまったんだわ……。


「どうか助けてください!」

「アイリスのやつは、魔法が使えないんです。すぐに食べられちまう……」


 そういえば、さっきの広場にいた子……。

 魔法使いを夢見てた子がいない。


「どうか……、助けてください」

「分かった!私が助けに行く! あっちの方角だな、多分!」



「……いきなり突っ走るのは待って。場所は、きっと近くに見える山よ」

「ん? 何でわかるんだ?」


「コカトリス。基本的には草食のはずだけど、尻尾の蛇の部分は肉食だと思う……。子供くらいの年齢の子を餌として連れ去っていったのかもしれない……早く助けないと!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る