第6話 強い!戦隊ヒーロー!
「……これって、夢じゃないの……?」
私の質問に、私を召喚した金髪碧眼のイケメンが答えてくれる。
「そうです。そろそろ理解していただけましたか? 夢ではございません」
「本当に異世界に来てしまったというの……。それで、帰るためには、魔王討伐しないとということなのね……」
段々と状況が分かってきた。
大それた願いをかけてくれたものね……。
「もし私でなくても、あの方が魔王討伐してくだされば、私は帰れるのでしょうか。帰ったら、来た時点に戻れるのでしょうか?」
「もちろんです。この世界はあなた方の世界には干渉していないので、全く同じ地点、同じ時間に戻されます」
「なるほど。それなら、私の日曜日の楽しみのために帰らないと」
魔法陣のところでは、戦隊パジャマの人が私と同じ説明を受けている。
……元の世界に帰るためには、あの人が強いことを祈るしかないか。
「そうですね、夢とは少し違うのですが、思いの力が強い力になります。願いを込めてみてください」
「なるほど? こうか?」
戦隊パジャマは、片手を前に構えて、気合を入れて叫んだ。
「おりゃーー!!」
威勢のいい声だけが広間に響いたが、残念ながら手からは何も出なかった。
「あれ? 何も出ない」
……あの人も私と同じか。
「大丈夫です勇者様。自分を信じて下さい。あなたの一番の『夢』を思ってもう一度。」
「私の夢か……。こんな夢みたいな世界。……それなら私は戦隊ヒーローになりたいな! 悪い敵をやっつけるヒーロー! もちろん私がレッドで!」
この人は人前で堂々と……。
確かに、この年齢まで戦隊ヒーローパジャマを着ているわけよね。
私と同じ匂いがするわけだ。
昨日は、酔ったまま寝たから、私はスーツ姿でよかった。
いつも通り魔法少女パジャマを着ていたら恥ずかしくて死んでた。
「戦隊ヒーロー? それはモンスターを倒して人を救う存在だとしたら、貴方様はヒーローでございます」
戦隊パジャマの女性は、ヒーローと言われて満更でもない笑みを浮かべていた。
「魔法にも種類がございます。そういった『夢』であれば、身体能力強化系なのかもしれないです。試しに、貴方の思いを込めて、情熱の力で思い切り殴ってください」
「なるほど? ヒーローだって信じて、力を込めてパンチすればいいんだな? それなら大得意!」
笑った表情から、真剣な表情へと変わった。
「いくぞーーー!!
一瞬の出来事だった。
瞬きせずに見ていたのに、戦隊パジャマ女性の動きが見えなかった。
電気を帯びたような青白い光が見えたと思ったら、丸大で作られたカカシが遠くの壁まで吹っ飛んでいた。
ドーーーーーーン!!!
轟音が遅れて広間に鳴り響き、あたりに強風が吹いてきた。
壁には穴が空いて、カカシだったものは無残な姿になっていた。
「……おおおーーー! 凄まじいことですじゃ!」
「新しい勇者様、素晴らしい!!」
「この国の救世主になられるお方!!」
なにこれ……。
私と全然違う……。
戦隊パジャマの女性は、誇らしげに胸を張っていた。
「私、小さいころからの夢だったんだ!」
……私は心の奥底に隠してしまってたけど、この人はずっと心の先端に夢を掲げ続けたんだ。
せっかく夢が叶うチャンスだったかもしれないのに、私も夢を追っていたはずなのに……。
ガッツポーズを決めたりして喜んでいる。
「貴方様も夢の力が出るはずです。隠された能力があるから召喚されたはずなのです。どうかご自分を信じて」
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