第5話 光る!戦隊ヒーロー!
「思いが強かったとしても使えないんじゃ意味が無いですわ。やはり、私が召喚させて頂きます。一刻を争う事態。そこをどいてくださる?」
「あ、はい」
フードの女性に促されて、私はその場を離れた。
どうやら、私は魔法陣の上にいたらしく、そこが召喚の場所となっていた。
「……あの、私はどうすれば」
「貴方様は、まずはここにいて頂いて、魔法が放てるまでしばし練習をしましょう。願いを込めて召喚されたものは、その願いが達成されるまでは元の世界へは帰れないのです。なので、残念ながら貴方様は魔王を討伐せねば帰れません」
「そうなんですか……」
――夢なんだし、早く覚めてくれないかな。
「同じ願いを込めて。私の母上を殺した。魔王を倒して……!」
「あの子、お母様を無くされているのね。
魔法障が光に包まれる。
光の中に人の姿が見えてきた。
あたりに、勢いよく風が吹く。
二日酔いには、風が気持ちいい。
と思ったが、召喚された異世界の風というのか、人の家の匂いに包まれていた。
……やけにリアルな夢。
光が段々とおさまると、そこには私と同じくらいの年齢の、アラサー女性が現れた。
辺りを照らす光は無くなったのだが、魔法陣の中にいる女性の胸のあたりに光が集まっているように見えた。
「おおお! 光が勇者様に宿っておられる!」
「こんなことは初めてだ」
魔力を計ってくれた老人や、周りにいた兵士たちから感動の声が上がった。
確かに、胸のあたりが光っていて、勇者の力というのが宿っているように見える。
「私の召喚した勇者様は、さっそく力を宿しているのが見えますわね。これは期待できますわ」
召喚した女性も期待がこもった表情で召喚された勇者を眺めていた。
けれども私はあの現象を良く知っている。
あれ。良く見ると、あれは蓄光性の光るパジャマだ。
日曜日の朝によくCMが流れていて、私も見ているから知っている。
あれは今年の戦隊ヒーローの光るパジャマだ。召喚された際の光を蓄光したのね。
召喚された人、私と似た匂いを感じる……。
召喚士の女性が、戦隊パジャマの女性へと歩み寄る。
「初めまして勇者様。私たちに力を貸して頂けないでしょうか?」
「うん? なんだここ? お前は誰だ? 私はテレビをつけようとして……。夢でも見てるのか?」
「こちらの世界に来た方は、よく『夢』という言葉を口にしますが、夢などでは無いです。一緒に飛ばされたアイテム等を見て頂ければ、毎回わかってくださります」
「あれ、私の家のリモコンだ」
――そうなのか。
私も何か持っているのか? ポケットを探ると、スマホが入っていた。
今の時間は9時半。しかし、圏外だ。これだけじゃ何も証明にならないな……。
あ、月森さんから昨日のお礼メールが来ている。
――本日は良い飲み会をありがとうございます。
魔法少女の夢。とても熱いものを感じました。
夢は信じていれば必ず叶うと思います。お互い頑張りましょう!
そうだ。飲み屋で魔法少女の夢を語りすぎたんだった。
あれ? これって昨日の話……。
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