48話 花いちもんめ・開幕

【みんな、1列に並んだね。そしたら、前にゼッケンを置くから、それを着てね。名前覚えるのも大変でしょ】


 宣言どおり、列をなしたプレイヤーたちの真ん前に、各々の番号が書かれたゼッケンが出現した。

 あり得ない超常現象だったが、もう驚く者はいなかった。

 指示に従い、プレイヤーたちはゼッケンを身に着ける。

 Aチームが赤、Bチームは青と色分けされていた。


【1番の人、じゃんけんしてね】


 てるてる坊主のアナウンス。

 Bチームの1番、朝田あさだひよりが前へ出ようとするのを、同チームの2番、湯島俊也ゆしましゅんやが引き止めた。


「ひより……」

「だいじょうぶだよぉ、シュンヤ。ただ、じゃんけんするだけだから」


 身体を震わせながらも、ひよりは答えた。

 シュンヤは何か言いたげだったが、それ以上は何も口にしなかった。


 Aチームからも、緊張した面持ちで1番の児童が出てくる。

 名は内海秋広うつみあきひろ。金太郎の数少ない参加者で、体格の良い男子だ。

 だが、立派な体格とは裏腹に、その身体は恐怖で震えている。


 両チームの1番は神妙な面持ちで向き合うと、淡々とじゃんけんをした。

 結果、Bチームの勝ちとなった。


【Bチームが先攻だね。みんな、手を握って~】


 緊張が走る。

 いよいよ始まるのだ。

 犠牲と隣合わせの、最悪のゲームが――。


 震える手と手を繋ぐ。


 そして死のわらべ歌は、歌い出されるのだった。



 B かってうれしいはないちもんめ

 A まけ~てくやしいはないちもんめ

 B あの子がほしい

 A あの子じゃ分からん

 B そうだんしましょ

 A そうしましょ



 歌が終わると、両チームはそれぞれ列を崩して固まった。



 話し合い・Bチーム


「どうする、シュウヘイ?」


 シュンヤが切り出した。


「どうするって言われてもなぁ。とりあえず高橋先生だけはねーな」


 シュウヘイの意見に、皆が一斉に頷いた。


「じゃあ、じゃんけんしてた1番はどうだ? あいつ、頭よくなさそーじゃん!」


 3番の男子が、得意気に提案する。


「ねぇ、今、大けがするか死ぬかっていうゲームをさせる相手を決めてるんだよ? 何でそんな喜んで言えるの……?」


 ひよりが男子を咎めた。

 先ほどまで意気揚々としていた男子は、唇を尖らせて黙り込んだ。


「甘っちょろいんだよ、ガキが」


 桑原が罵倒を投げる。ひよりはびくっと肩を跳ねさせた。


「どうせやるのは決定事項なんだよ。道徳の押しつけなんざ、時間の無駄だ」

「なぁ、ちょっと――」

「勝負しかけんのは1番のデブでいいな。不満のある奴いたら出てこい」


 シュンヤの言葉を無視し、桑原はチームに賛同……という名の強制を求める。

 当然、意見する者はおらず、皆沈黙を貫いた。


「よし。じゃあ1番で決定だな」



 思考・ショウタ


(ゲームから「シ」を引く……。シは……ふつうに考えて、「死」だろう。でも、「死」が1ってどういうこと? 今までの死者から1を引けってこと? そんなの分からないし――)


 頭を抱える。


(考えろ、考えろ……! 早く、早く早く早く、答えを導かないと……!)











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