五曲目 やぎさんゆうびん
42話 深まる絆
「あれ。なんか、数少なくね?」
辺りを見渡しながら、シュウヘイが言った。
「まさか……」
同じく周囲を観察し終えたショウタは、顔を真っ青にした。
「浦島太郎の生き残り、高橋先生とあの1年生たちだけだったのか!?」
あまりの生存者の少なさに、「浦島太郎」の恐ろしさを垣間見た。
「ショウタ君、本当にありがとね。浦島を選んでたら、私……」
「いいんだ。このことはもう気にしないようにしよう」
自分の腕を抱えながら、ショウタに礼を言うミナミ。
ショウタは小さく首を横に振りながら答えた。
「ねぇ、キミ」
カヅキが、ぽんとミナミの肩を叩いた。
その隣には、赤メガネの女子――アオイが立っている。
彼女に見覚えのないミナミは、眉を寄せて首を捻った。
「あの時はごめんね。キミの気持ち、ぜんぜん考えてなかった」
「あの時……? あっ」
『アンタ怖いよ。ヒトの命が掛かってるのに、メリットデメリットで考えるなんて』
記憶を遡り、思い出す。
彼女は、三太郎の説明の時、ミナミに批判の言葉を投げかけた人物だ。
「いいわよ。私もどうかしてたし」
「そう。なら良かった」
そう言って、カヅキは手を差し出した。
「ともだちになろ!」
「へっ!?」
驚くミナミ。
カヅキは悲しげな表情で、顔を俯かせた。
「もう、生きてる人は少ない。あんなに大勢の人がいたのに、気づいたら1クラス分しか、いなくなっちゃった。だから――」
ミナミを真っ直ぐに見据え、差し出した手に力を込める。
「せめて、生き残った私たちは、団結しなきゃいけないと思うの」
「いいな、それ。おれ賛成!」
シュウヘイが、ミナミの後ろから言った。
ミナミは力強く頷くと、カヅキの手を取った。
「私もそう思う! いがみ合ってたら、てるてる
ギュッ、と握り合った手に力がこもった。
「キミの名前は?」
「ミナミ。日高美南よ」
「私はカヅキ。村田華月。よろしくね。そこの男子2人は?」
ミナミから視線を移し、カヅキが問う。
「おれは木谷周平」
「ぼくは大空照太です」
ショウタとシュウヘイも、各々自己紹介をする。
「わたしは稗田葵。よろしくね」
カヅキの隣から1歩出て、アオイも自己紹介をした。
【お~、だいぶ数が少なくなったね! 体育館がスッカラカンだ】
ウィーン、と機械音が鳴り、てるてる坊主が降りてくる。
プレイヤーたちは、一斉にステージに目を向けた。
【みんな絆を深め合ったところで、次のゲームに移っていくよ! ヤギさんたち、準備はいいかな?】
【メェェ】
舞台袖から、ヤギの鳴き声が鳴る。
【それじゃ、5曲め、「やぎさんゆうびん」。はっじまっるよ~】
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