17話 代表決め

「Aチームのみんな~。こっち集まりなさ~い!」


 ステージ脇の扉の前で収集をかけているのは、5年1組の担任、柴田だ。

 声かけに従い、Aチームの者たちはぞろぞろと彼女のもとへ集まっていった。


「みんな集まったかな? それじゃ、早速代表者についてだけど、私が――」

「いえ、先生。俺が出ます」


 整った顔の男子児童が、すっと挙手をした。


「ダメ! チーム30人の命を背負うなんて、子どもにやらせられないよ!」


 柴田が厳しい声色でそう言う。

 男子児童はまったく動じないどころか、おかしそうに笑った。


「だって先生、ちっさいじゃん。男の先生が出てきたらどーすんの? 押し相撲絶対勝てないじゃん」

「うぬぅ……。否定できない……」


 彼の指摘どおり、柴田はかなり小柄だ。

 大人といえど、純粋な力勝負では大柄な男子小学生にも劣ってしまうだろう。

 ぐうの音も出ない柴田は、悔しそうに歯を食いしばった。


「でも、あなただって、まだ小学生でしょ。大人に勝てるの? ……ええと」

「6年2組の五月祐輔さつきゆうすけです。少なくとも、柴田先生よりは可能性はありますよ」

「くぅ……っ生意気ね。でも、分かった! あなたの勇気を尊重する! 頑張ってね。みんな、異論はないね?」


 Aチームの面々に確認を取る柴田。

 皆、首を横に振る者はいなかった。


「決まりね。それじゃ、他のチームが決まるまで、お話しましょ。まずは私から自己紹介しようかな。私は――」

柴田寛子しばたひろこ先生」


 カイトが代わりに名を言った。


「明るい性格で身長が低いから、みんなに好かれてる先生。いちいちリアクションが大げさで、犬を飼ってて……」

「ストップ、ストップ! カイト君、それ怖いからやめて! ね?」

「……はい」


 至近距離で、有無を言わさぬ目を向けられ、カイトは不満げに押し黙った。


「怒られちゃいました」

「当然ですわ!」


 ぽつりと呟くと、隣から怒声が鳴る。

 見ると、髪を縦巻きにした特徴的な女子――エリカが、両腰に手を当ててぷんすかとしていた。


「まったく、あなたと同じチームだなんて、先が思いやられますわよ!」

「いいじゃないですか。僕たちは見てるだけなんですから。それに、見てください」


 カイトが1人の女子児童に目を向ける。

 ふんわりボブの、かわいらしい雰囲気の女子だ。


「あの子……たしか、さっちゃんの時に選ばれていた子でしたわね」

「ええ。3年1組の、鉢花美月さん。さっちゃん曰く、うしろの正面をカンで1発で当てたそうじゃないですか。彼女がいるだけで、このチームは安泰でしょうね」

「なるほど、そうですわね! 私たちは生き残ったも同然ですわ! おーっほっほっほっほ!」


 ぽんと手を叩き、高笑いをするエリカ。

 彼女の陽気さに当てられ、カイトの表情もいくばくか和らいだ。


「あのさぁ。よくそんな平然としてられるね」


 後ろから話しかけられる。

 振り返ると、丸みを帯びたショートヘアの女子児童が怪訝な顔をしていた。


「あら、どなただったかしら」

「4年2組の天神風華てんじんふうかさんです。有名ですよ。陸上の県代表ですから。ちなみに――」

「キモい」


 ぴしゃりと言い放たれ、カイトはしゅんと俯いた。


「とにかく、ふざけたりしないで。ムカつくから」

「はぁあああああ!? 私のどこがふざけてるですってええええええ!?」

「あ、柴田先生~」


 吠えるエリカを無視し、柴田に話しかけに行くフウカ。

 エリカはキィィィィッと歯を食いしばった。


「……あのぉ。あなたはだいぶふざけてガスッ!?」


 カイトのけなしに、エリカの右ストレートが飛んだ。


【みんにゃ~! 代表者が決まったにゃ! スクリーンに注目にゃ~!】


 ミケの声。

 皆、一斉にスクリーンに目を向けた。


 Aチーム

 五月祐輔


 Bチーム

 桑原愛美


 Cチーム

 高橋幹人


 Dチーム

 遠藤加奈


 Eチーム

 森口健


【代表者はこの5人にゃ! みんにゃ応援よろしくにゃ!】







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