第8話 人型巨神獣

 今回は三人称です。

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 神羅達が巨神獣と対峙している頃。


 ソアとアリシアは島内の見回りをしていた。

 理由は先程の琴葉の言っていた一言。


『島の地下で一瞬巨神獣の気配がした』


 これにより、2人は見回りと共に地下への入り口を探していた。


「……ソア、この地下に空間はあるのか?」

「無いはずです…………いいえ、洞窟があります。しかし入り口は海底にあり、入り口も小さいため入らないと思うのですが……」

「いや、1度見に行った方がいいだろう。それ以外に方法は無いのだからな」


 案内頼むぞ。とアリシア。

 ソア自体、1度確認しに行った事があるが故に人はいないと断言出来るのだが、アリシアの言う通りそれ以外に心当たりがないのもまた事実。

 結果———ソアは行くことを決める。


「……そうですね。それでは1度潜水スーツに着替えてから行きましょうか」

「うん、了解だ」


 2人は自身の戦闘スーツの腕に付いている液晶に文字を入力して潜水スーツへと材質を変化させた。

 このスーツは合成変化繊維という繊維を使っており、ほぼ全ての機能を持った服に変化する事が出来る。

 また、短時間ならば金属にも変化可能。


 アリシアとソアは、適当な所から海にダイブ。

 『ザバァァン!』という音を立てて海の中に入った2人は、魔力を使って空を飛ぶ様に移動する。

 おおよそ人では考えられない速度で水中を進む2人だが———数十キロ先から行手を阻む者が現れた。


「キュァアアアアアアアア!!」

「……『モササウルス』か」

「推定体長は……300メートル級ですね。恐らくA級からS級下位程度の力かと」


 昔世界の海に生息していた肉食恐竜———モササウルスに姿が似ている事から名付けられたその巨神獣は、目を真っ赤に輝かせ、狂った様に格上である2人に突撃した。


 それは本来あり得ない出来事。

 巨神獣も歴とした生物である為、自分から圧倒的強者に立ち向かう者は繁殖中以外いない。

 そして立ち向かうと言っても子を守る為の肉壁になるという意味で、自分から攻撃をしてくることはないのだ。


 勿論長年覚醒者をやっている2人は熟知しているが故に———


「コイツは危険だな。即座に排除するぞ」


 対処は早かった。


 アリシアが飛び出すと、突然アリシアの周りの海水がぶくぶくと沸騰していく。

 そしてアリシアの身体はそれに比例するかのように輝きを発し出す。



「水の中では雷は使えない———が、己の身体に電流を流して強化することは出来る」



 その言葉通り、輝きが増していくほどに爆発的に加速していき、僅か数秒で数十キロ離れていた筈のモササウルスを貫いた。

 しかもそれだけでは終わらず、モササウルスが派手に爆発する。

 爆発の衝撃が海水を巻き上げ、水中に生息していた小型の巨神獣は衝撃で脳を破壊されて即死、中型も脳が揺れて気絶してしまう。


 それを起こした張本人は———


「———それでは早く向かうとしよう。神羅様のデートをまた見るために……!」


 何処までも呑気だった。








「そ、そんな馬鹿な……あり得ません……! 此処の岩盤はあまりの硬さに『技術者』様ですらお手上げだった筈ですのに……」


 あれから数十秒で目的地に到着したが、ソアは目の前の光景を見て愕然とした表情を浮かべていた。

 ソアは信じられないといった感じで呟く。


「———何故洞窟の入り口が人工物に作り変わっているのですか……!?」


 そう、いつの間にか洞窟の入り口は、扉が開けば潜水艦すらも入れそうな程の大きさまでに拡張されており、完全にコンクリートか何かで新しく作られていた。

 しかもご丁寧に幻惑の結界まで張られている。

 生憎2人とも魔力が高いので効果はないが。


「ソア、此処に入る方法は? 見た感じ外から開けられる様には作られていない様だが」

「そ、そうですね……こう言ったゲートは、中から開けるか遠隔操作で開けているかのどちらかか、両方です。なので———ぶっ壊してくださいアリシア様」


 ソアがそう言うと、アリシアは不敵な笑みを浮かべた。


「———任せろ。私の得意分野だ」


 アリシアは身体に再び電気を流すと、超高速で水を切る様に進み、結界の中に侵入すると共に水がなくなった事によってより速度を加速させて扉へと衝突。

 それと同時にもう1つの異能力を発動させた。



「———《衝撃倍加ダブル・インパクト》」


 その瞬間、扉を打ち付ける衝撃が何十倍にも膨れ上がり、1発で分厚そうな何十メートルもある扉をぶち壊した。

 爆煙が舞う中、ソアが咳をしながらやってくる。


「こほっこほっ……あ、ありがとうございます。お陰で時間が省けました」

「全然大丈夫だ。ソアは回復、私が戦闘だからな」


 そう言うアリシアはとてもカッコよく、一瞬見惚れてしまうと同時に、何故アリシアに告白する女子が絶えないかが少し分かったソアであった。


「ん? どうしたソア?」

「い、いえ、何でもないです……。それより先に進みましょう。恐らく私達の侵入はバレていると思いますので」

「了解だ。速攻で行くとしよう」


 2人は潜水スーツから再び戦闘スーツに変化させると、歩く速度を上げて先に進む。

 

 地下の中はもはや洞窟の面影は全くなく、完全に人間の手によって作り替えられていた。

 床も天井も壁も全く同じ白い何かの材質で出来ており、所々に扉の様な物が取り付けられている。


「いつの間にこんな物を……いや、まずどうやってバレずに作ったのでしょう……」

「それはイマイチ分からないが……1つ言えるのは———この先から尋常じゃない程の数と強さの巨神獣の気配がすると言うことだ」


 アリシアはとある扉の前で止まると、ゆっくりと扉を開ける。

 するとそこには———


「ひ、人型の巨神獣……?」


 何百と所狭しとカプセルに入っている人型巨神獣達の姿があった。


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