第5話 『World collect』

「…………もはや1つの都市だな」


 俺達は数十分を掛けて世界最大級のレジャー施設———『World collect』に到着し、その島全体を丸々使った様々な施設に俺は思わず圧倒される。

 それはどうやら俺だけでは無いらしく、琴葉も驚いた様子だった。


「琴葉は行ったことないのか?」

「うん。そんなことより依頼を消化してたから」


 どうやらこの施設が出来たのは数年前らしく、その当時は丁度『夜明けの証』が日本最強クランになったばかりで依頼が無限に舞い込んできていたらしい。

 そのため朝霧会長だけでなく、当時副会長だった学院長とその部下だった琴葉も休みなく依頼で日本をぐるぐる回っていたんだとか。

 

 だから写真では見たことがあったものの、実物は今回初めて見るらしい。 

 その証拠に目がキラキラと輝いており、あちこちへと視線を移していた。


 あ、因みにソアさん、ミアさん、アリシアさんにSPの人達は———


『そ、それでは私達はお二人のお邪魔になりそうなので退散しますね! 一応この施設の中にいますので、もしもの時は此方に連絡をして下さればいつでも出ます! さらにこのカードを持っていれば、此処の施設のどんな所にも入れますので!!』


 そうミアさんに息つく間もなく話され、非常用のボタンと『VIPカード』という貰った後、そそくさと何処かに行ってしまった。

 結局取り残された俺達は数瞬の間呆然としていたものの、最近はデートもあまり出来ていなかったこともあり、いい機会なのでデートをすることにすることにしたのだ。


「ねぇねぇ神羅っ! 何処から行くっ!?」


 琴葉が珍しく子供の様にはしゃぎながら俺を手を引いて訊いてくる。

 そんな彼女に癒されながらも行きたい場所を提案しようとしたその時———



「———準備は完了したか? 失敗は許されんぞ」

「分かっている。しっかりとやったさ。後数刻で———」



 という会話が突然俺の耳に入ってくる。

 何故か2人とも中性的な声で性別が全く分からないし、気配でも性別の判別が厳しい。

 何処か気配が希薄というか……。


 俺は猛烈に違和感と嫌な予感がしたので急いで振り返ると……既にそこには誰もいなかった。

 

 ……何だ、あの奇妙な気配は……。

 

「———神羅? どうしたの?」


 気付けば、琴葉が俺の顔を不思議そうに覗いていた。

 どうやらあの会話は俺だけにしか聞こえていなかった様だ。


「……いや、何でもない。取り敢えずあの島の中心に建っている所に行ってみるか」

「? ……まぁいっか。折角のデートだしね! それに丁度行ってみたかったんだよね。何でも揃うらしいよ」

「それは楽しみだな」


 俺達は恋人らしく恋人繋ぎをして島の中心にある巨大な建物に足を運んだ。

 

 ———ずっと先程の2人組の会話が頭から離れないまま。



 

 


 


「———ねぇ神羅……さっきからどうしたの? 私がいない時、頻りに何か周りに意識を割いてるでしょ」


 俺はショッピングモールの中で偶々見つけた雰囲気のいい質素な喫茶店で琴葉に詰め寄られていた。

 出来るだけバレない様に心掛けていたが、やはり琴葉にはバレていた様だ。

 俺は諦めて全て話すことにした。


「———つまり、私達が予定を決めている時に、奇妙な2人組が何やら怪しい話をしているのを聞いたってこと?」

「ああ。何故か物凄く嫌な予感がしたんだ」

「そう……一先ずソアさんに話しておいた方が良さそうだね」


 そういった琴葉は直ぐに電話し始める。

 相手はソアさんの様で、何度かやり取りをした後、電話を切った。


「どうだって?」

「『お2人のデートを少しでも邪魔する奴らは私達が許しません! 絶対に見つけ出してやりますッッ!!』……ってソアさんが言ってたよ」

「ああ……」


 その光景が鮮明に目に浮かんできたわ。

 ついでに隣のミアさんとかアリシアさんも息巻いてそうだ。

 

 だが、これで多分俺達が気にしなくても大丈夫だろう。

 此処はソアさんの管轄内だし、あの顔が広いミアさんや世界最高峰の覚醒者であるアリシアさんもいるしな。


「ふぅ……やっぱりファンの方と話すのは疲れるね」


 琴葉が小さくため息を吐いて、頼んだラテアートで猫が描かれたカフェラテを少し躊躇いながら口を付ける。

 俺はそんな彼女に、先程1人で、一緒に回る所を調べていた時に偶々見つけたとある店の写真を言葉に見せた。


「———琴葉」

「なに? ———っ!?」


 琴葉が俺の見せた写真を見て目を見開く。

 そして食い入る様にその写真を眺めていた。

 そこには———


「行きたいだろ? ———猫カフェ」

「い、行きたいっ!!」


 愛くるしい多種多様な猫達がいる猫カフェが写っていた。

 更には餌を食べる姿や猫じゃらしのおもちゃで戯れる姿の写真もある。

 

 そう———琴葉は無類の猫好き。

 それも家で猫が飼えずに中学生ながら大泣きしてしまう程に。


 あの時は俺も頼んだが結局買う事はできなかったが、あれ以来常に猫が飼いたいとも言っていた。

 それは15年経った今でも変わっていない様で、この前も猫を飼おうか必死に悩んでいる姿を度々見ている。


「うわぁぁぁ……私初めて猫カフェ行くかも……一度行ってみたかったの……」

「———因みに気に入った猫は、その猫の相性次第だが……家に連れて帰ることも出来る」

「えっ!? そ、それってもしかして……」


 そこで琴葉は何かを悟ったかの様にバッと顔を上げて、俺の方を期待の篭った瞳で見つめてきた。

 

 因みに彼女の両親は動物が苦手なので家で飼うのは断固拒否している。

 つまり——— 


「———ああ、そのもしかしてだ。一緒に住もう。因みにお義父さんとお義母さんに許可はとってあるぞ」


 俺が『どうだ?』と訊くと、琴葉が嬉しそうに———俺が大好きな向日葵の様に明るく誰もを照らす満面の笑みを俺だけに向けて浮かべた。 




「———楽しみだね」



 

 ———今思えば、この瞬間が一番平和で楽しくて幸せな時間だったかもしれない。


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