第4話 韓国到着———とミアさん登場
『———ようこそお越しくださいました、斉藤神羅様、水野琴葉様、アリシア様』
俺達が自家用ジェットから降りると同時にビシッとしたスーツ姿をしたSP数十人が待っていた。
彼らは俺達3人を見た瞬間に一斉に頭を下げてくる。
突然の事で少し困惑してしまう俺だったが、琴葉やアリシアさんは特に何の反応もしていなかったので、こう言うのが当たり前なのだろう。
「———神羅様! 一先ず我が家に行きませんか? 一応転移を使える者も居ますので、一瞬ですが」
そういってあまりにも来て欲しそうな顔をするソアさんだが、俺的には琴葉以外の女性の家に上がることは出来るだけやめておきたい。
しかし、こうして善意100%の瞳で見られると断るのも少々憚れる。
俺が意見を仰ぐ様に琴葉を見ようとしたその時———
ピピ—————ッッ!!
「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」
突然何処からともなくホイッスルの音が聞こえ、バッと後ろを向くと———
「———会員番号7番さん、神羅様を家に連れて行くのは会長として許しませんよ」
そういって腰に手を当て、ホイッスルを首から下げたミアさんがいた。
当然いきなり現れた関係のない人に俺達を迎えてくれたSP達は勿論警戒を———
「「「「「「「「———お久しぶりですミア様!!」」」」」」」」
全くしていなかった。
というよりもどうやら昔からの知り合いの様で、俺達の時と同様に頭を下げている。
相変わらず顔が広いなミアさん……。
俺がその異常な顔の広さに息を呑んでいると、ギリギリ間に合ったとでも言いたげな表情をしたミアさんは、ズンズンとソアさんの下に歩いて行くと———ニッコリと目の笑っていない笑みを浮かべて思いっきり拳骨を落とした。
突然の奇行に愕然としたのは俺だけではなく、琴葉やアリシアさんも、顔馴染みらしいSPの人達も皆が目を見開いている。
そして殴られた当の本人は「あいたっ!?」と少し間抜けた声を上げてキッとミアさんを睨む。
「な、何で殴るのですか!? 私はただ疲れを癒して貰おうと———」
「———神羅様は琴葉様という恋人が居られますよ? 例え琴葉様が同行しているとはいえ、おいそれと他の女性の家に上がることには対抗があるかと」
「うっ……た、確かに……」
にべもなくはっきりと言われたソアさんは一気に勢いを失って小さく縮こまる。
しかし、そんなソアさんの耳元で蠱惑的に笑うミアさんが何かを囁き出した。
「ですから———私達はお2人のてぇてぇな姿を遠くから眺めていればいいのです。それだけで心が浄化されますよ?」
「…………てぇてぇ……?」
「そうです。例えば神羅様が琴葉様と仲睦まじく恋人繋ぎをして、お互いにしか見せない笑顔を浮かべられていたとします。そんな姿をした2人をふと見つけた貴女はどうしますか?」
「勿論遠くからその尊い姿を何千枚も写真と動画に———はっ!?」
「そういうことです。私達ファンクラブは自らが関わるのではなく、お2人の尊い姿を遠くから眺め、お2人の邪魔をする者を抹殺するのが役目です。分かりましたか? あと、撮影する時は私に言ってください。でないと盗撮ですからね」
「はいっ分かりました! 申し訳ございませんでした!! では今から最高級ホテルを予約しておきます! 勿論部屋は神羅様と琴葉様が同じで! その隣にアリシアを泊まらせるのは可哀想なので私の家に泊まらせます!」
「よろしい。さすがVIP会員ですね」
どうやら2人の
途中から少し意味不明な事を語り始めたので聞くのをやめていたのだが、琴葉は全部聞いていたらしく少し頬が赤い。
「……神羅……今度から変装してデートしようね……」
「あ、ああ……2人は一体なんて言っていたんだ?」
「ひ、秘密……」
琴葉は口に出したくないのか、サッと目を逸らした。
まぁミアさんはマジの俺達の限界オタクだから、俺達にとってどれほど恥ずかしい事を言われているのか考えただけで羞恥にやられてしまいそうだ。
「———それで、結局これから何処に行くのだ? 神羅様をお待たせるわけにはいかないだろう? まぁ……もう誰かさんのせいでお待たせになっているがな」
「「あ、も、申し訳ありませんっ!」」
ミアさんとソアさんが同タイミングで俺達に謝ってくる。
隣でアリシアさんが「私にもないのか、謝罪が」とぼやいているが、2人は華麗にスルーしていた。
「し、神羅様、そ、それでしたら此処なんてどうでしょうか!?」
そういってソアさんがとある画面を表示する。
そこは海にポツンと浮かんだ小島……というには少し大きい、沖縄の半分ほどの大きさの島が表示されていた。
「———世界最大級のレジャー施設?」
「あっ、私此処知ってるよ。世界中の物が揃ってて、最近イチオシのデートスポットって言われてる」
「その通りです琴葉様! このレジャー施設———『World collect』は今や韓国で1番な観光スポットなんです! 韓国のみならず世界中の美味しいご飯もあって美しい砂浜に夜景、最高級のホテルに大型ショッピングモールなど、全ての楽しい要素を取り入れた最高の場所なんです! どうですかお2人とも!? 此処でデートしてみたくないですか!?」
ソアさんがキラキラと輝く目で此方をみながら提案してくる。
だが、最初から答えは決まっているのだ。
「———行こう」
「えっ!?」
琴葉がバッと此方を見ては、少し目を見開いて驚愕していた。
だが、そうなる理由も分かる。
琴葉は俺が極度に人が多い所が嫌いである事を知っているため、いつも大抵は人のあまりいない時間帯か元々人の少ない所に行くので、こんな見るからに人でごった返していそうな場所に行くというとは思わなかったのだろう。
しかし。
「———琴葉は行きたいんだろ?」
「!? あっ、え、ど、どうして分かったの……?」
琴葉が行きたいと思っているのであれば、自分の苦手などガン無視して行く所存である。
これも彼女の彼氏としての務めだ。
「それに、俺は琴葉が楽しんでいる姿を見るのが1番好きだからな」
「っ!?」
俺が琴葉の頭を優しく撫でると、カァァァァッ、と効果音がつきそうなくらいに顔を真っ赤にさせる。
そんな琴葉の姿に思わず笑みが溢れてしまう。
相変わらずウチの彼女はウブで可愛い。
嬉しいのが隠し切れていなく、全身から嬉しいオーラが溢れ出ているのも可愛い。
「どうする? 行きたいんだろ?」
「……うん。行きたい」
何処か舌足らずな返事を返す琴葉だが、自分の思っていたことが俺に完全にバレていて恥ずかしいのか、顔を見られない様に俺の胸に顔を埋めた。
俺はそんな琴葉の頭を撫でながら3人の方を見てみると———
「アアアアアアアアア……尊ひ……しんらしゃまかっこいい……ことはしゃまかわひい……浄化されりゅ……」
「こ、これがてぇてぇですか……! なんて素晴らしいものなんでしょう……ッ!!」
「ふぁぁぁぁ……神羅様ってこんな優しい顔もするんだぁ……」
恍惚な表情を浮かべたミアさんと、先程よりより更にキラキラとした瞳を此方に向けるソアさん。
そして、先程とは完全にキャラが違う、顔を真っ赤にして手で覆いながらもチラチラと此方の方を見ているアリシアさんの姿があった。
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