第2話 元最弱覚醒者は会見に挑む②

「———まずは! 御二方のプロフィールから見てもらいましょう!」


 そう言う進行役の女性の声と共に、俺達の頭上に巨大な半透明のボードが現れた。

 そこには俺と琴葉の様々な情報(ステータスを除く)が載っていいる。


 しかし———そんなことよりも俺には気になる事があった。

 

 俺が記者達の最前列へと目を向けると、俺が見ていることに気付いた複数人の女性がそれぞれに反応する。


「———し、しんらしゃまがわらひの目の前に……それも目を合わせてくださ———ぐはっ!? そ、尊死すりゅ……」

「やっほー神羅様☆」

「……(ぺこり)」

「み、皆さん、あまり話しかけない方が……」

わたくしもそう思いましてよ? 今日は大事な会見なのですから」

「あわわわわわわ……わ、私如きがこんな所に……。か、帰りたいけど……神羅様が居るから帰りたくない……!」


 俺から見て左から———ミアさん、心さん、咲良さん、水無月、アリアと言う順番で、俺の知っている人達が数多の記者達を押し退けて最前列に座っている事だ。

 あの5人が揃っている時点で、明らかに俺のファンクラブが動いている事が容易に想像できる。


 それと———貴女も俺のファンクラブだったんだな……病院の看護婦さん……。

 彼女だけは辺りをキョロキョロと見回して居心地悪そうにしていた。


 後、更に言うとすれば———


「は、始めて本物を見た……! か、かっこいい……!」

「わ、私の事は覚えていらっしゃるのかしら……? い、一応何度かお会いしているんだけど。覚えて下さっていれば嬉しい……」


 2人ほど、知らない女性が此方をキラキラした目で見ていた。

 1人は軍服を着ているカッコイイ系の赤髪の美人で、もう1人は何処か神聖味を感じる雰囲気のお姉さん系の美人だ。


 俺的には全く2人のことは記憶に無いが、恐らく彼女達も俺のファンクラブなのだと思われる。

 

「———それでは質疑応答を始めたいと思います。まずは———日本新聞の方」

「はい。斎藤神羅様、全世界で初めてEX級巨神獣を倒しただけでなく、ソロで討伐されたことについてどう思いますか?」


 どうやら俺が最前列に気を取られている内に俺達の紹介的なモノは終わっていたらしい。


 俺は緊張を隠し、堂々とマイクを持って述べる。


「EX級巨神獣を討伐したことについては、特に何とも思っていません。ソロと言う点も、俺は別にそう言った称号には興味がないので何とも」

「そ、そうなのですか……で、では次に同じ巨神獣が現れたとしたら勝てますか?」

「———はい。100%勝てます」


 俺が断言すると、進行役だけでなく記者達は一斉に驚きに手元のメモなどから目を離して俺の方を見ていた。

 最前列からは先程よりも強い視線を感じるが、取り敢えず無視しておく。

 あまり其方を見ていると———


「むぅぅぅ……神羅に女が……」


 あんな風に琴葉が嫉妬するからな。

 まあ立場が逆なら俺も嫉妬すると思うし、嫉妬する琴葉も可愛いので何も言わないが。

 

「じ、自信満々ですねっ! 私達からすれば頼もしい事この上ないですね! では次に———アメリカニュースの方どうぞ」

「はい。———今回斎藤神羅様が討伐したEX級巨神獣は未だ誰にも知られていない新種との情報があるのですが……それは事実ですか?」

「俺は知っていましたが、どうやら世界では知られていなかった様です」

「「「「「「「「!?」」」」」」」」


 俺のこの言葉は先程よりもより強い驚きを会見の場にもたらした。


「そ、それは、い、一体どう言うことでしょうか? 1度その新種に会ったことがあると?」

「はい」

「それでは斎藤神羅様が最後に確認された15年前の神羅様のステータスを入手したのですが、何故F級相当のステータスでありながら、EX級巨神獣に出会って無事なのですか?」

「「「「「「「「「「F級相当のステータス!?」」」」」」」」」」


 突然の俺の過去の暴露に記者だけでなく、俺も少々驚いてしまう。

 まぁ情報規制などは掛けていないので漏れるのも仕方ないと思うが、協会はもう少し個人情報の統制をした方がいいだろうな。


 周りの驚きの声を聞きながら少し調子付いたアメリカニュースとか言う所からきた男性が言葉を続ける。


「それにこの15年の間姿を消していた様ですが、一体何処にいらっしゃったの———!?」


 その瞬間、俺の隣にいた琴葉から僅かに魔力が漏れて周囲を軽く威圧する。

 更に何故か最前列の軍服の美女からも琴葉以上の圧倒的な圧力が放出された。


「あ、ああ……」

「……少しいいですか? 人のステータスを勝手に入手したとはどういう———」

「———おい、貴様」


 軍服の女性が俺でも速いと感じる速度で先程俺に質問してきた男性の下に移動すると、首を掴んで軽々と持ち上げる。

 

「え、あ、アリシア様……!? ど、どうして此方に……」

「黙れ。私は貴様に話す権利を与えていない。それで———これで神羅様にアメリカが嫌われたらどうしてくれる? 仮に神羅様が許しても私がアメリカを滅ぼすぞ」

「———止めろ」


 何故最近続いてこんな面倒な事が起こるのだろうか。

 と辟易しながら、男性の首を掴んでいる軍服の女性の腕を掴む。


「神羅?」

「し、しんらしゃま!? わ、私のう、腕を……」

「一先ず離せ」

「わ、わかりましひゃ———んんっ! す、すぐに離します」


 軍服の女性は、まるでオタクが推しに出会った時の様なテンパり方をしながら雑に手を離した。

 男性は地面に尻餅をついて呆然と俺達を見ている。


「……貴女は?」

「———は、はい! 申し訳ありません!! わ、私はアメリカ覚醒者協会に所属している、恐縮ながら神羅様と同じSSS級覚醒者の称号を持っているアリシアと申します!!」


 俺が予想していたより数十倍低姿勢で挨拶された。

 同じSSS級ならそこまで畏まらなくてもと思ったが、反応がミアさんと同じだったので、恐らく彼女も俺のファンクラブ会員なのだと確信し、そこについて触れることを止める。


「それで、アリシアさんは何故圧力を掛けた挙句、首を掴んだのですか?」

「我が国のゴミクズ共が神羅様の個人情報を勝手に入手するだけでなく、それを世界に向けて晒したからです!! なので私が懲らしめようと思いました!」


 ……普通に自分の国の人間をゴミクズ扱いするなよ。

 と言うかそんなこと言って、彼女は大丈夫なのだろうか?


「———アリシアさんはアメリカ最強の覚醒者なんだよ。だから彼女には、例え大統領であっても顔色を伺いながら話をするらしいよ」


 琴葉が隣に来て、男性に黒い笑みを浮かべながら言ってきた。

 周りは状況についていけずポカンと口を半開きにしている。


 そんな中で俺は小さくため息を吐く。


 ……何でそんなアメリカの事実的な頂点がこんな日本の、それも誰も連れずに普通の椅子に座ってるんだよ。

 それに俺に低姿勢すぎるだろ。

 

 あーなんか馬鹿らしくなってきたな。

 こちらは散々口調にも気を付けて慣れない事してんのに。


「———そこのアンタ」

「わ、私ですか……?」


 男性が首元をさすりながら恐る恐ると言った感じで震える口を開いた。

 両隣からの物凄い威圧感に完全に怯えている様だ。

 そんな男性からマイクを借りる(奪い取る)と、全記者に向けて言葉を発した。


「———俺が過去にF級だったのは事実だ」


 俺自らが過去は最弱だったと認めたため、全記者が我こそはと録音機みたいなものを此方に向けて「ならどうしてそこまでの強さを手に入れたのですか?」と言う質問を何度も繰り返す。


「「———黙れ」」

「「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」

「神羅が今話してるでしょ」

「貴様らが神羅様の言葉を遮ることをは許さん」


 何故か俺が言う前に琴葉とアリシアさんが威圧を掛けて記者達を黙らせた。

 しんと静まり返り、完全に会見が破綻した空間の中で、俺は昨日———東さんに貰ったとある装置を使う。

 その瞬間に皆に見えるほどの大きな半透明のボードが現れ、そこには———


—————————————

斎藤神羅

549,843,295歳

Lv.表示不可

体力:表示不可

魔力:表示不可

攻撃:EX

防御:EX

敏捷:EX

【極致異能】

《矛盾の魔力》《諸刃の体躯》

————————————


 俺のステータスが表示されていた。

 

「「「「「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」」


 更に沈黙が続く中で、恐らく皆俺の年齢を見ていることだろう。


「俺は15年前、確かにあの巨神獣に出会った。だが———俺は奴に殺されることなく吸い込まれてしまった」


 俺の言葉は静かな空間に響き渡る。

 誰もが声を上げない。

 そんな中で俺は名乗る。


  


「俺は幾億の時を経て最強へと至った最弱覚醒者———斎藤神羅だ」




——————————————————————————

 マジでフォローと☆☆☆宜しくお願いします。モチベ維持に繋がるので!     

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る