最終章 巨神獣の真実と終止符
第1話 元最弱覚醒者は会見に挑む①
———俺が目を覚ましてから2日が経った。
既に俺の体は何事もなくいつも通り———いやそれ以上に快調だ。
今なら《諸刃の体躯》を使わなくても『ケートス』に勝てそうなほどに。
「———おはよう、神羅」
「ん? ああ、おはよう琴葉」
俺が窓の景色を眺めていると、後ろから琴葉が
今日は俺の退院&EX級巨神獣討伐の記者会見があり、そのときに琴葉も共に出るため何時もよりもピシッとしたズボンのスーツを着ている。
いつもより大人っぽい琴葉は相変わらず可愛かった。
「……可愛いな」
「えへへ……はっ! そ、そうでしょう、そうでしょう。だって私が神羅に可愛いって言ってもらうために特注したからね!」
俺が素直に褒めると一瞬頬をだらしなく緩ませるが、直ぐにドヤ顔を決めて胸を張る琴葉。
その姿も可愛いのだが、もう少し自分の体型を理解したほうがいいと思う。
スラッとしたモデル体型のくせに、胸部は普通以上の大きさを持っているため、胸を張ることで強調されて少々目のやり場に困る。
「髪切ったんだな」
「そうだよ。昔みたいで懐かしいでしょ?」
琴葉がゆるふわボブの綺麗な茶髪を靡かせながらにへら、と笑みを浮かべた。
確かに琴葉は長髪も良かったが、ボブカットの方がしっくりくる気がする。
「ああ……昔も今も、めちゃくちゃ似合ってるよ」
「っ……」
琴葉が何故か急に先程のドヤ顔を一瞬にしてサッと朱色に染めて目を微妙に逸しながら、それでも俺が気になるのかチラチラと此方を見ながらボソリといった。
「あ、ありがと……(いきなりそんな優しい顔で言われたら照れちゃうよぉ……)」
「どうした? そんなに俺の顔、変わっていたか?」
「ふぁっ!? き、聞こえてたの!?」
「ああ……一応覚醒者だからな」
「むぅぅぅ……神羅は難聴系じゃないよね」
琴葉は未だ恥ずかしそうに顔を真っ赤にして頬を膨らすが、聞こえてしまったものはしょうがなくないだろうか。
まぁそんな姿もとても可愛いのだが、これ以上言うと更にリスのように頬を膨らませてポコポコと叩かれ……それもいいかもしれない。
「……神羅、今なにか変なこと考えたでしょ」
「さて、確か学院長と合流になってたよな。行こうか琴葉」
俺はそう言って琴葉の手を取り、お姫様抱っこする。
自分が不利になったときは撤退だ。
だから———俺の腕の中で「話逸した……」とムスッとして呟いている琴葉には触れないでおこう。
「あ、やっときたー。随分遅かったねー」
俺達が学院長と待ち合わせをしていた、今日記者会見がある首都の中心部のTV局から少し離れた公園に行くと、のベンチでぐだーっと座っていた学院長がいた。
そんな学院長は俺たちを見ながら相変わらずの間延びした口調で咎める。
しかし、俺達の集合時間は10時で今は———9時45分前。
なのでちゃんと15分前に来ている俺達は全然遅くはないはずだ。
「……貴女が早いだけです。私達は遅れていません」
琴葉は相変わらず学院長が嫌いなのか、ジトーっとした———と言うより冷めた目で見ている。
そんな琴葉の態度に学院長は慣れたように「はいはい私が早かっただけだよー」と何事もなさそうに受け流し、琴葉がクッ……と悔しそうに顔を少し歪めた。
「……まぁいいです。それで、今日はなんの用件ですか?」
「ん……? どういう事だ?」
「あれ、どうして分かったのー? 一言もそんなこと言ったつもり無いんだけどー」
学院長は少し驚き、俺はなぜそんなことが分かったのかが分からず首を傾げる。
すると琴葉はつまらなそうに言った。
「貴女は普段、とんでもなく時間にルーズじゃないですか。そんな貴女が私達よりも早く来るなんてなにかあると思うに決まっているじゃないですか」
「……」
「あ、あははは…………ご、御名答ー」
俺と琴葉のジトーっとした視線を受けて誤魔化す様に頭をかきながら目を右往左往させる。
その態度がより自分を悪く見せているのが果たして彼女に分かっているのだろうか。
「それで俺達への用件とは?」
俺は中々本題に入らない学院長に時間も押しているので訊いてみる。
「あ、うん。歩きながら話そ」
学院長はベンチから立ち上がると、スタスタとTV局へと歩き出す。
俺達学院長に付いていきながらその用件とやらを聞く。
「まぁーこれは用事というよりは注意喚起って感じなんだけどー、それも琴葉ちゃんに。実は神羅君が眠っていたときに『夜明けの証』の巨神獣が保管されている保管庫に何者かが侵入してねー」
「それで?」
「その犯人ねー、警報がなる5分以内に保管庫出てるし〜防犯カメラにも全く映ってないんだよねー。それに何故か他のもっと高く売れそうな巨神獣の亡骸には全く触れられた痕跡も無かったしー」
「……つまり、『夜明けの証』の中に犯人がいると?」
琴葉がそう言うと、学院長がコクンと頷いた。
「ま、そういうことだから、琴葉ちゃんは気を付けてねー。奪われたのって世界的にも貴重なヤツだったからさー」
学院長はそれだけ告げると、何故か俺達を置いてさっさと行ってしまった。
置いて行かれた俺達はお互いに顔を見合わせる。
「「え、それだけ?」」
俺達のそんな言葉は誰の返事も貰えることなく霧散する。
結局学院長の用事はそれだけだったようで振り向くことなくTV局に入っていった。
そんな学院長の何とも言えない行動に俺達は首を傾げながらも、遅れてはいけないのでTV局の中に入る。
「———あっ! SSS級覚醒者の斎藤神羅だ!!」
「『戦女神』の琴葉様も居るぞ!!」
「2人とも手を繋いでる……ってことはやっぱり2人は付き合っているんだ……」
TV局の中は、それはもう沢山の人がおり、速攻でバレた。
誰もが俺と琴葉に視線を集中させていて、主に尊敬や畏怖、憧れの様な感情が籠もっており、ザワザワとアチコチから俺達について言っている会話が聞こえてくる。
琴葉は慣れているのか全く気にしていない様子だったが、俺は表には出さないものの少し居心地が悪い。
俺自身数百人規模の人に見られたことがほぼないし、そもそも昔は尊敬ではなく侮蔑の視線が殆どだったからな。
そんな中、観客とかした人達を押しのけるようにして1人の男性がやってきた。
我らが専属受付人———夕薙さんである。
「———お、お久しぶりです神羅様。もうお怪我は大丈夫なんですよね?」
「ああ。元々疲労で倒れただけだからな」
「そう、ですか……ってそうじゃなかった。———神羅様並びに琴葉様、後30分程で始まりますので衣装室に向かっていただきたいのですが……」
俺はそう言われて、確かにTVに出る人は大体どんな人でも化粧をして貰っているなと思った。
琴葉も、すっかり忘れていたとでも言うように目を少し開いている。
「じゃあ———今から行くか」
「うん」
「———今日の主役であり、注目の新星にして日本で2人目のSSS級覚醒者の称号を得た、TV初出演の斎藤神羅様と、SS級覚醒者であり日本で知らない人など居ないと言われる女神———水野琴葉様に来ていただきました!! 今日はよろしくお願いします!!」
「「よろしくお願いします」」
こうして俺達の会見が始まった。
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