第27話 宿敵に終止符を
「……お前、女だったのか」
俺は目の前のとんでもない殺気を撒き散らしている奴の容姿を見て少し驚く。
正直コイツには性別なんてないと思っていたのだが、どうやらコイツも他の巨神獣と同じで雌雄の区別があるらしい。
なんて思っていると、何故か『ケートス』が馬鹿にする様な目で此方を見た。
『妾に性別なんていうものがあるわけないであろう? 貴様ら下等生物と一緒にするでない』
前言撤回。
どうやらコイツには他の巨神獣とは違って性別は存在しないらしい。
まぁ俺的には女じゃないと分かって戦いやすくなったので別にいいのだが。
「性別ないのに妾って変な奴だったんだなお前」
『!? き、貴様……妾が直ぐに殺してやるから何も話すな!!』
「物騒だな。まぁ———嫌いじゃない」
『っ、貴様———ッ!!』
俺は魔力で身体を補強してミシッと筋肉が軋む音と共に地面が陥没するほどに踏み込み、全速力で『ケートス』の懐に入る。
そこから低い姿勢から、先程の『ヒューマ』の様に手刀で横薙ぎを繰り出した。
しかし不意をついたはずの攻撃は、ギリギリの所で腕を掴まれて不発に終わった。
お互いにステータスがEXを超えているせいか、力が拮抗して腕を振り解こうにも振り解かないし、相手も此処で離せば攻撃を受けるのは自分だと分かっているのか全く話そうとしない。
「思ったより強いじゃないか」
『っ……妾に飲み込まれた分際で……ッ!』
「———おっ?」
その瞬間『ケートス』が俺の腕を掴みながら、乱暴に上空に投げ飛ばす。
俺は踏ん張ろうとしたが、想定以上に力が強かった。
更にそれだけでは終わらなかった。
『くたばれ———ッ!!』
『ケートス』の手から極光波が解き放たれ、一直線に俺の下へ、俺の身体に風穴を開けようと迫る。
俺は空中で体勢を立て直すと、流れる様に手刀を振り下ろす。
———ザンッッ!!
魔力が飛ぶ斬撃として解き放たれ、極光波を一瞬にして真っ二つに断ち切った———だけにとどまらず、威力はそのまま『ケートス』にまで届く。
しかし流石にこの程度では全然ダメらしく、一瞬で破壊されてしまった。
だが———いい牽制にはなった。
『なっ———!?』
「隙あり」
俺は空中を蹴って爆煙に巻き込まれている『ケートス』目掛けて突っ込み、拳を振り抜いた。
その瞬間爆煙が一気に晴れ、驚愕に目を見開いている『ケートス』の姿が露わになる。
そして俺の拳は無防備な『ケートス』の腹に突き刺さった。
『っ———あああああああッッ!!』
しかし『ケートス』は叫びながらも俺の一撃をその場で微動だにせず受け止める。
俺は嫌な予感がしたので直ぐに離れようとするが———
『逃さぬぞ———カァアアアアア!!』
「チッ……」
『ケートス』が大きく口を開くと、そこに魔力が集中し、強力な魔力弾が生み出されて俺目掛けて発射される。
俺は急いで逃げようにもがっしりと拳を掴まれて逃げれない。
ならば———
「———《矛盾の魔力・反射》」
俺の身体に纏われた魔力が放たれた魔力弾をまるで鏡に光が反射する様にして受け流し、手刀で俺を掴んでいる腕を切断する。
『ぐぁああああああああ!!』
「この程度で喚くな、やかましい」
俺は痛がる『ケートス』の身体を蹴飛ばして無理やり距離を空けた。
『……貴様、妾の腹の中に居たにしてはやるではないか……』
「そう言うお前は苦しそうだな」
『ほざけッ!! 貴様なんぞ妾が本気になれば一瞬で殺せるわッ!!』
そう言った『ケートス』の身体から突如、途方も無い程の魔力が溢れ出て奴の身体を包み込む。
そして徐々に身体を包み込んだ魔力が奴の身に取り込まれて、ほぼ完璧な人型だった身体が半海獣人の様な姿に変化する。
更に身体も3回りほど大きくなっていた。
一見大して変わっていない様に見えるが、その気配は先程とは比べ物にならないほどに強力なモノになっていた。
海獣人となった『ケートス』が、鋭い瞳を此方に向けて小さく笑みを浮かべる。
『———貴様は何もしないのか?』
そう言って煽る『ケートス』。
普段の俺なら必ずスルーして平常心を保ちながら戦おうとするだろうが———今回は違う。
「なら———此方も全力で行かせて貰うとしよう」
俺は2つ目の異能力を発動させた。
———《諸刃の体躯》———。
瞬間———ドクンッと俺の心臓が強く脈打ち始める。
さながら極度の緊張状態の時の様に。
そして身体から全魔力が一気に放出され、白銀に染まっていた髪や瞳が元に戻る。
さながら天へと伸びる白銀に輝く光の柱の様に。
空っぽな
その魔力は著しく俺の身体を傷付けた。
しかし———それに対抗する様に《矛盾の魔力》が発動し、著しく身体が変化する。
髪と瞳は半分白銀に染まり、もう半分の髪は侵食された魔力によって漆黒に染まり、もう片方の瞳は赤黒く変化して、顔の半分に瞳と同じ様な赤黒い線の様な紋様が入った。
更に、魔力の暴走に耐えるために身体が『ギシギシ』と音を鳴らしながら強制的に伸び、身体がより強靭になる。
その代償に半身が赤黒く侵食され始め、シュゥゥゥゥ……と湯気が出て、俺の身体を徐々に蝕んでいく。
そして———
「———ふぅ……待たせたな」
『あ、あ、な……そ、そんな馬鹿な……』
白銀と漆黒の半々に分かれた髪に、白銀と赤黒い不気味な色に変化した瞳。
顔の半分と半身を皮膚に侵食した赤黒い魔力が覆う。
身長は10センチ以上伸び、その全てを白銀の魔力と赤黒い魔力が俺を護る様に俺の周りを停滞していた。
この異能力の能力は、正しく名前の《諸刃の体躯》の通り、制限時間付きで様々なデメリットが存在するが、その分、自分の制御された力を限界以上に引き出し、更には破壊効果のついた魔力を一時的に手に入れる。
今回は久しぶりに使うと言うこともあり、あまり長い時間使っていられそうにない。
「———速攻でケリを付けるぞ」
拳を握り締め、軽く踏み込む。
その瞬間———文字通り地面が大爆発を起こし、まるで数十メートル並みの巨大な隕石が落ちたかの様に巨大なクレーターを作り、更にほんの数瞬の時間差を経て、空間全体が嘗てない画面がブレて見える様な程の異常な揺れが引き起こされた。
その爆発的な力は俺の身体を一瞬にして『ケートス』の懐に到達し、反応される前に全身に数十発の殴打を打ち込む。
少しの時を経て、時間差で俺の攻撃が『ケートス』に嘗てないダメージを与える。
『あ"あ"あ"ああああああああああああああ!?!?!?』
『ケートス』が今までとは比較にならない、空間そのものを揺らす様な悲鳴を上げながら吹き飛ぶ。
ふむ、やっぱり身体の制御が難しいな。
どうしても思った通りの動きが出来ない。
恐らく速すぎて視覚と思考が追い付いていないのだと思う。
俺がそんなことを考えながら『ケートス』が吹き飛んだ方を見ていると———突如視界を埋め尽くすほどの水のレーザーの様な物が飛んで来た。
俺はそれを確認した後、軽く腰を落として拳を穿つ。
———ヒュッ———ズバァアアアアアアアアアッッ!!
1つ1つが先程の島を消滅させることが出来るほどのレーザーは、俺の一突きによって、全てが呆気なく掻き消えた。
『な……あ、そ、そんな馬鹿な……』
「無駄だ。お前は———俺には絶対に勝てない」
『———ッ!』
『ケートス』が憤怒に表情を歪め、光速を優に超える速度で俺へと接近し、パンチだけでなく、蹴りや魔力弾も交えながら連打を放ってくるが、その全てをその場から一歩の動かずに対処する。
果てには隙をついて腕や足を吹き飛ばす。
しかし———
『この程度で妾を止められると思うなッ!!』
吹き飛ばした瞬間から手足が再生してまるでゾンビの様に何度も復活して攻撃してくる。
その度に奴はより強靭に、より鋭くなっていったが、俺は余裕で対処出来ていた。
——————ドクンッ。
「ぐっ……はぁああああ!!」
『グァアアアアアアアアア!?』
俺は腕を大雑把に振るって力任せに『ケートス』を飛ばして距離を取ると、心臓を抑える。
くそッ……もう時間が来やがったか……。
昔なら数分は耐えれたのに……本格的に鍛え直さないとな。
『ヨ、ヨクモ……ワラワヲトバシテ———ダ、ダガ、ドウヤラキサマモブジデハナイヨウダナ!!』
「———1発だ」
『…………ハ?』
俺は、俺の限界を悟って笑う『ケートス』に拳を構えて———告げた。
「———この一撃に全てを賭ける」
途端———俺の身体から2色の魔力が溢れ出し、混ざり合って俺の拳に集中する。
それだけでなく、周りの空気が吸い込まれる様に俺を中心に渦状の螺旋が出来る。
『ヤ、ヤメロ……!! ソレイジョウハワタシガホウカイスル!!』
「それを狙っているんだよ」
『ヤ、ヤメ———』
俺は静止の声を無視して———腕が引きちぎれそうな程に拳を振り抜いた。
「———《破界》———」
———世界が崩壊した。
——————————————————————————
マジでフォローと☆☆☆宜しくお願いします。モチベ維持に繋がるので!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます