エピローグ 琴葉の覚悟

「————神羅……」


 私———水野琴葉は、病室で眠っている神羅の手を握りながら声を漏らす。

 

 神羅はもうまる2日寝ており、未だ起きる気配が微塵もなく、それが余計に私を不安にさせた。

 しかし医師が言うには体力を過剰に消費したことと、肉体がボロボロになっていたのも相まって、相当な充電期間が必要とのことらしい。

 肉体は異常な再生能力のお陰で既に完治しているので命に別状はないし時期に目も覚ますだろうと診断された。


 原因は勿論、あの鯨型巨神獣———『ケートス』との戦いだ。


 神羅はあのEX級の巨神獣の体内に入り、数秒後には巨神獣の身体を内側から爆散させて脱出していた。

 しかし神羅は気絶しているのか全く抵抗せず落下してきたので私は急いで支えに向かうが……


「な、何これ……」


 神羅の半身が赤黒く染まっており、そこからシュゥゥゥ……と音と蒸気の様なものが出ていた。

 私はその異様な姿に何が何だか分からなかったが、早急に病院に連れて行くことに。


 病院に着くと、私の名前と神羅の名前を言うと1番に診察してくれることとなった。

 その時には私が連絡したこともあって『夜明けの証』から回復系覚醒者の優も到着していたが、それよりも早く韓国の『聖女』が来ていた時は流石に驚いたものだ。


「『聖女』様のお陰で神羅の身体は元通りになったんだよ」


 『聖女』本人がその内この半身は治ると言っていたが、それでも痛みが続くので、やはり治した方がいいとのことだ。

 そのため速攻で治してもらい、お礼は今度神羅と共に韓国に訪れる、と言うと、『聖女』様は何故か大喜びしていた。

 

「……彼女も神羅のファンなのかな……?」


 私は神羅の手をぎゅっと握って少し膨れる。

 別に神羅が浮気なんてしないことは分かりきっているが、私からすれば気が気じゃない。

 

「———なんて、役立たずな私が言っても意味ないよね……」


 私は結局最後の戦いで何もすることが出来なかったどころか、完全に足手纏いになっていた。


「———……そんな、ことない……」

「神羅!?」


 私は突如自分の下から聞こえた声に驚きの声を上げながら目を向ける。

 するとそこには、ベッドに未だ寝そべったままでいるのものの、優しい笑みを浮かべた神羅の姿があった。

 私は思わず抱き締めたい欲に駆られるが、罪悪感からその動きをストップさせる。


「し、神羅……で、でも……わ、私は……っ!」


そう、私のせいで巨神獣の体内に飲み込まれたのかもしれない。

 私のせいであんな大変な傷を負ってしまったのかもしれない。

 私のせいで———


「っ!?」

「———琴葉が悩む事なんて何もない。俺の力は琴葉、ただ1人のためにあるんだから」


 私を抱き締めて優しく囁く様に告げる神羅。

 突然のことで全く心の準備が出来ておらず、思わず私の顔に熱が集中して、心臓がドクドクと急速に脈打ち出す。

 しかしいつもとは違い、どうしようもなく罪悪感が私を冷静にさせた。


「……ありがと神羅。お陰で少し元気が出たよ」

「そうか……」

「だから今はまだ安静にしてて。私は大丈夫だから」

「……ははっ、情けないな。この程度で……すまない琴葉。少し寝させて貰うな」

「うん。おやすみ」

「ああ———おやすみ」


 そう言って直ぐに再び寝息を立てる神羅。

 普段はキリッとしていてかっこいいが、こうした無防備な寝顔は何処か子供っぽい雰囲気があって可愛い。


「神羅……」


 私は神羅の額にキスを落とす。


 この時が永遠に続けばいいのに……とどうしても思ってしまう。

 でも、それはまだもう少し後で。


「また明日来るね」


 私はそう神羅に別れの言葉を掛けると、病室を出た。







 



 ———数時間後。

 

 私は神羅がいる病院から帰った後で夜になって会長が居なくなるのを見計らって『夜明けの証』のクランに向かった。

 そしてクランの地下にある『夜明けの証』の倒したSS級以上の巨神獣が厳重に保管されている保管庫の前に移動する。

 保管庫の近くに開けるための装置があり、私はログに残らない様に自分の指紋などは使わず、記憶してある数十種類の暗証番号を順番に打ち込んでいく。


『———認証しました。解錠します』


 そんな機械音と共に巨大な保管庫の扉が開く。


 私に与えられる時間は約5分。

 それ以上は記憶している生体認証をしていないため警報が作動してしまうのだ。

 この事は誰にも———それこそ神羅にもバレるわけには行かない。


 私は慎重に中に入り、監視カメラの死角を縫ってとある場所へと辿り着く。

 そこには過去にSSS級覚醒者2人と私を含めたSS級覚醒者5人で討伐したランク不明の奇妙な巨神獣の死体が保管用の液体の中保管されていた。


 その巨神獣は、今までの巨神獣の見方を覆す体長5メートル程の人型の巨神獣だった。

 『バースト』と呼ばれる人型巨神獣の力はSSS級覚醒者を超え、異能力も規格外だった。


 結局何とか勝利したのだが———等級は何とS級。

 私たちの方が遥かに強いはずなのに、私たちは苦戦した。

 

 そんな彼女を調べる研究員が数多くいたが、分かったことは何一つなかった。

 

 しかし———私は知っている。 

 

「…………貴女は人間なんだよね」


 彼女が元人間であり、私と神羅にとって大切な人である事を。


 何故分かるかと言うと———それは私の異能力の力である。

 私はカプセルの中の液体を抜き、彼女に触れると……私の身体中の細胞が彼女を欲す様に激しく暴れ回った。


「やっぱり欲しいんだね———いいよ。今回だけは許してあげる」


 私には、私に覚悟がなくて今まで使ってこなかった、誰も知らない、計測器にも映らない異能がある。

 それは悍ましい異能だった。

 そんな異能を使ってしまう彼女に、私は心の底から懺悔する。


 でも———



「———もう私は弱いままで居られないの」



 今回戦いで改めて実感した。


 私は神羅を支えるどころか、迷惑なお荷物になってしまっていることを。

 そんなのは絶対に嫌。

 私は神羅の隣に立ちたいの。


 だから。



「ごめんなさい、お義母さん———《人間吸収》」



 ———今まで一度も使って居なかった異能力を発動した。


《———レベルアップしました。新たな異能を獲得しました。一部異能力が参加しました。全能力値を吸収しました。デバフ——《き¥#$%¥》を手に入れました》


 私に吸収されると、彼女は一瞬にして灰になって消えてしまった。





「…………私はもう2度と、あんな思いはしない」






 次の日———『夜明けの証』の保管庫に何者かが忍び込み、一体の巨神獣が盗み出された事がニュースに大々的に取り上げられた。

 

 

—————————————

水野琴葉

32歳(身体は18のまま)

Lv.178,005,310

体力:103,998,700/103,990,700

魔力:270,467,210/270,467,210

攻撃:EX

防御:EX-

敏捷:EX

【禁断異能力】

《人間吸収》《き¥#$%¥》

【極致異能力】

《未来予測》《創造》

【異能力】

《絶対零度》《爆破化》

————————————



————————————————————————

 これにて第2章完結です。

 そこで読者様の皆さんに質問なんですが……今まででた主要メンバーのステータスって見たいですか?

 

 見たかったら明日10数人分くらいのステータスを上げようと思うのですが。

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