第9話 模擬戦①

「せ、せんせーそれは流石に……」

「そ、そうですよ……幾ら何でも俺達36人で一斉にって言うのは……」

「———中村先生、僕達の事を流石に舐めすぎじゃないですか?」


 生徒の皆(ファンクラブ会員とも思われる生徒を除く)が尻込みしている中、如何にも優等生そうなイケメン———確か名前は西園寺優斗さいおんじゆうとと言ったか?———が生徒達の言いたかった事を代弁するかの様に立ち上がった。


「僕達は自惚れではなく他より優れています。既に僕も含めた数人はSS級にあと一歩で届きそう勢いです。流石に1人では危険では?」

「なるほど……確かに言いたいことは分かりました。では、一先ずこのクラスの上位成績者10名が神羅先生と戦ってもらうことにしましょう」


 ……この先生、意識の誘導が上手すぎるな。


 俺が渡された用紙には初めから全員と戦うと言うわけではなく、成績上位者から10名ずつ戦うと最初から記載されていた。

 しかしこう言った天才達は、上流階級の財閥の子息などもいるため、プライドが高い。

 あの西園寺優斗はその最もな例だ。


 現役のSS級覚醒者達に自分の力を誇示する者はいない。

 あの『双頭の大蛇』の会長でさえ、自分の実力をしっかり把握して最初に出会った時以外は力を誇示してはこなかった。

 

 それは、皆自身より巨神獣の方が強いと分かっているからだ。

 だから『双頭の大蛇』の会長は巨神獣を手懐けようとし、大抵の覚醒者が自分と同等の等級の依頼はあまり受けない。


 今回俺の目的は、そう言った力に溺れがちな若者に世界を魅せることである。

 まぁ俺は確実に世界最高峰の実力があるのは分かっているので、彼等には丁度いい機会だろう。


「では始めようか」


 俺は模擬戦用に開発されたとされる結界の中に入る。

 どうやらこの結界の中では身体にダメージが入らないらしい。

 ただ許容範囲があると思うので勿論手加減して攻撃するが。


「……後で後悔しても知りませんよ。僕達は本気でやりますからね」

「楽しみだ」


 今回俺と対戦するのは……


「宜しくお願いします! 神羅様! 私の名前は水無月香織みなつきかおりと申します!」

「宜しくお願いします神羅様!!」


 水無月香織と名乗る恐らく俺のファンクラブ会員である少女と金髪ロールの少女。

 彼女からもファンクラブの匂いがする。


 成績は水無月香織が2位、金髪ロールで水無月香織の親戚のアリア・水無月が3位であり、2人のステータスは平均『S+』と、即戦力になる強さだ。

 他の生徒も全員平均『S』以上はある。

 

 昔『F-』だった俺とは比べ物にならない数値だ。

 正直嫉妬する気持ちも無いわけではないが、俺は琴葉が守れる様になったのでもう十分満足している。


 しかしそんな天才達の中でも群を抜いて強いのが———西園寺優斗だ。

 彼のステータスはこんな感じである。



————————————

西園寺優斗

Lv. 780,504

体力:1,561,008/1,561,008

魔力:780,504/780,504

攻撃:SS-

防御:SS-

敏捷:SS-

【異能】

《覚醒》《武術強化》

———————————— 


 1人だけほぼSS級覚醒者と同等の力を有している。

 幾らステータスの攻撃、防御、敏捷が上がりにくいとはいえ、SS級最強と名高い琴葉と2段階しか変わらないのである。

 将来はSSS級にも届きうる貴重な人材と言えよう。

 後彼等に足りないのは———経験だ。


「———それでは開始!!」


 中村先生の合図と共に俺は力をセーブしながらも生徒達がギリギリ視認できる速度で移動し、不意打ちの一撃を1番油断していた西園寺に食らわせる。


「ぐっ……卑怯ですよ……!」

「実戦では卑怯などと言ってはいられないぞ。常に警戒しておけ」


 俺は吹き飛ぶ西園寺を無視してチームの様に固まった水無月達の元へ移動する。

 しかしその途中で突如水無月とアリアが突っ込んできた。


「———今ですよ! 《限界突破》!!」

「———わたくしも初めから本気ですわ———《神速》」


 2人が異能を発動すると共に地面が砕け、光速よりも速くアリアが俺の背後に回り込み、そこからあの細身な体では考えられないほどの重みを持った踵落としが俺を襲う。

 更に前からはアリアほどではないものの、雷速に迫る速度で俺の懐に入り、拳を振り抜こうとしている水無月の姿が。

 彼女の全身に赤い筋が刺青の様に入っており、全身からは蒸気が上がっている。


「「はぁあああああ!!」」


 ———ズガアアアアン!!


 2人の気迫の篭った声と共に地面を抉り、爆煙が舞う程の衝撃波を伴った蹴りと殴打が俺に直撃。

 しかし———


「———惜しいな。2人とも勝負を焦りすぎだ」

「!? ……やはり神羅様はお強いですね……」

「ふゎぁああああ……さすがですわ! 私の攻撃は今まで誰にも止められたことありませんのに!」


 俺は水無月の拳を片手で受け止め、アリアの踵落としをもう片方の手で受け止めていた。

 地面は俺が衝撃を流したせいで陥没している。

 

 俺は2人を離すと、2人の攻撃を捌きながらアドバイスを送る。


「まず水無月は体の強化に心が追い付いていない。普段から使ってみるか、長時間使用して慣れさせた方がいいだろう」

「御神託有難う御座います! 今後寝る時以外は常に異能を発動させておきます!」


 水無月はキラキラとした瞳を向けてそう言った直後、俺から離れて異能を解除すると、結界の外に出ていった。


 さて、次はアリアだな。


 アリアは普段から何度も使用しているのか、動きにズレが見られない。

 しかし、アリアにも弱点はある。


 俺は再び蹴りを繰り出して来たアリアの足首を掴む。


「きゃっ!?」

「アリアは動きは速いが、攻撃力的にはそこまで高くないし、何より武術の経験が少ないだろう?」

「うっ……け、蹴りしか練習していませんわ……拳を使っても威力が出ないのだもの……」


 1発で当てられて気まずそうに目を逸らすアリア。

 分かった理由は、武術の達人であれば、ステータスの差があってもこうして素直に捕まっていられるわけ無いのと、捕まってもすぐに対処するからだ。


「これからはしっかり拳や全身を使った武術を習う様に。その速度があれば拳でも十分に巨神獣に効くだろう」

「はいっ! 御神託有難う御座いますわ!」


 そう言って引き下がるアリア。


 この2人がこの程度で済んでいる理由は、2人とも自分の実力をしっかりと把握していたからだ。

 後は戦闘でのアドバイスをすれば良いだけだったので最初に狙った。


「さて、次に行こう」


 俺はグッと脚に力を入れると、消えるかの様に4位から10位の生徒が固まっている所のど真ん中に移動する。

 未だ誰も気付いていない間に1人の生徒を感圧で吹き飛ばして俺の存在を認知させる。


「来たぞ! 皆、先程言った通りにやれ!」

「「「「「「はい!」」」」」」


 成績4位の黒と青のオッドアイの男子生徒———西沢彰にしざわあきらが号令を出すと同時に、残りの生徒が俺を囲み、全員が全員俺の違う所に同時に攻撃を仕掛けて来た。

 皆、音速を超える動きで仕掛けてくるが———


「一気に来るのは辞めた方がいい。自爆する危険性があるからな」

「なっ———グハッ!?」

「ちょっ、ぶつか———ッ!?」


 俺は全ての攻撃を受け流して他の生徒と衝突させる。

 全員が地に落ちる———瞬間、突如倒れる生徒の後ろから西沢が飛び込んできて、拳を振るって来た。

 俺は避けようと体をずらすと———ズラした地点に蹴りがあった。

 

「! 体が柔らかいな」

「チッ……行けると思ったんだが……流石SSS級覚醒者って訳か。レベルが違うな」

「奇襲はいい作戦だったぞ。それにどうやらその瞳は俺の動きを予測出来るらしいし、活用すれば様々な場面で役立つだろう」

「!? はっ……1発でバレてんのかよ。あー無理だ。今の俺じゃ勝てねぇ」

 

 そう言ってバックステップで俺から離れると、そのまま結界外へと出ていった。

 俺はそれを見届けた後、地面で気絶している無傷の生徒達を結界外へと運び出す。


「中村先生、コイツらを頼む」

「勿論です! それより……そろそろ彼が本気になります・・・・・・・・


 そう言った瞬間———ドカンッと地面が突然揺れる。

 同時に強い気配が出現したので、其方を向くと———


「———これからが本番ですよ神羅先生?」

「だろうな」


 全身から膨大な青白い魔力を噴き出す西園寺の姿があった。

 


—————————————————————————

 マジでフォローと☆☆☆宜しくお願いします。モチベ維持に繋がるので!   

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る