第25話 EX級 VS EX級
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア———ッ!?!?」
俺と琴葉のコンビネーションにより板挟みとなったことで背中がくの字になった巨神獣が、初めて理解できる声を上げた。
とは言っても『ア』の1音なので聞き取れた所で何も無いのだが。
しかし俺も結構本気で蹴ったし決まった感触もあったのだが、どうも思った以上にダメージを与えられていなかった。
———いや、どちらかといえば回復しているといった方が正しいかもしれない。
俺は一先ず琴葉達の下へと合流する———とそこにはボロボロで至る所から血を噴き出している光輝の姿が目に飛び込んできた。
そしてその横では光輝を支える学院長の姿と落ちてくる氷の破片をコントロールしている琴葉の姿が見える。
「———琴葉、ナイスタイミング……と言いたい所だが、色々と訊きたいことがあるんだが?」
「どうしたの? 神羅の弟子君のこと?」
「それもある。光輝は一体どうしてこうなったんだ?」
光輝だけが此処までボロボロと言うのもおかしな話だ。
明らかに外からではなく内側から———つまり、身体強化系の異能力を耐えられる限界以上に引き上げたせいで負った怪我であることは明確だった。
「す、すいません師匠……無理しすぎちゃいました……」
「神羅、責めないであげてね? 私を護ってくれたから」
「限界以上の力は危険だと伝えたはずだが……まぁ琴葉を護ってくれたのなら礼を言う———ありがとう光輝」
「は、はいっ! 此方こそ修行をつけてもらってありがとうございます……!!」
光輝はふっと緩んだ笑みを浮かべて嬉しそうに言い、気絶してしまう。
俺は倒れそうになる光輝を抱き止め、彼の怪我を治してもらうため、学院長と琴葉と共に学院へと転移させる事に決めた。
「学院長、琴葉、後から来た俺が図々しく言うのも何だが、光輝と共に学院へ戻ってくれないか?」
「私は全然大丈夫です。そもそも SSS級覚醒者の戦場での命令は絶対ですから」
「———絶対にイヤッ!」
学院長は素直に受け入れてくれて光輝を俺から離して支えてくれたが、琴葉は思いっ切り頬を膨らましてそっぽを向きながら反対する。
「琴葉———」
「私は絶対に残る! 神羅を私から奪ったアイツは絶対に許さない!」
俺が何か言おうとすると、被せる様に琴葉が言葉を発してくる。
此方に向けられる力強い瞳には怒りが煌々と宿っており、もはや俺ですらその意思を曲げることは難しそうだ。
「……分かった。その代わり、ヘイトを買う様なことはしないでくれ」
「うんっ!」
「学院長はおそらくこの島が無くなることを政府に伝えておいてくれ。流石に琴葉と島を護りながら戦うのは厳しい。だが———アイツは確実に殺す」
俺にとって琴葉が最優先なので、琴葉が残ると言うのであれば、島のことなど最早どうでもいい。
と言うか相手は俺や数ある強敵をその腹の空間に取り込んでいた化け物だ。
先程までの戦いの話を聞いていると、どうも本気には程遠いと思われて仕方がない。
「……分かりました。島がなくなってもEX級巨神獣が倒されるとなれば気にしないと思いますのでそう伝えておきます」
「頼んだ」
「お任せください———斎藤神羅様。ご武運を」
学院長と光輝が転移し、この場にいるのは俺と琴葉と巨神獣だけとなった。
俺と琴葉は上空でどんどんと再生している巨神獣に目を向ける。
「さて、アイツをどう倒すか。一先ず———《矛盾の魔力:モードシフト・撃滅》」
俺は異能を発動させ、凝縮された魔力によって内側から変化していき、髪も瞳も白銀に染まる。
更に体の周りにはハッキリと分かる程濃い白銀の魔力が浮遊していた。
「うわぁ……それが神羅の戦う姿なんだね。前より力強い感じがする」
「まぁ……あの時のは力を垂れ流していた様なものだからな」
俺は拳を何度か握って力を確認する。
先程も少し使ったが、どうやらまだまだ全然大丈夫そうだ。
「琴葉、極力俺が護るが……もしもの時のために俺の魔力を纏わせておく。これなら数発はアイツの攻撃にも耐えられるだろう」
「うん、ありがとう。それと———我儘言ってごめんね」
琴葉が少し反省した様に下を見ながら言う。
おそらく自分のせいで俺に余計な迷惑を掛けてしまうことを申し訳なく思っているのだろう。
しかしどうしても許せなかったのか。
…………相変わらず可愛いな。
俺は落ち込む琴葉の頭を乱暴に撫でた。
「わわっ……!?」
「気にすんな。琴葉の我儘なら幾らでも聞いてやる。だから俺に思いっ切り15年分の我儘を言え」
「……ありがと……気をつけてね、神羅……」
そう告げる心配そうな琴葉に向かって、俺は安心させる様に力強い笑顔を浮かべた。
「———安心しろ。俺は琴葉が居ればどんな相手にも負けないから」
上空へと上昇し、巨神獣———確か中村は『ケートス』とか言っていたか———と同じ高度まで辿り着いた。
俺は目の前にいる『ケートス』は何故か全く動かなかった。
と言うか、俺の存在を感知して居ないのかもしれない。
———いいだろう、思い出させてやるよ。
俺は腰を落とし、拳に魔力を集中させながら構える。
拳に集まった魔力は眩い光を放ち、どんどん大きくなって辺りに《矛盾の魔力》が広がっていった。
すると突如、『ケートス』が目をカッと見開き、遂に俺を捉える。
その瞳は———憤怒を宿していた。
「———ァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアッッ!!」
『ケートス』の額辺りから膨大な魔力が集結し、あの時の中村なんて比にならない程の巨大な真紅の魔力塊が出来ていく。
その大きさは軽く直径数百メートルを超えるだろう。
しかし気付けば———俺は笑みを浮かべていた。
「ああ、そうか……。俺は、思った以上にお前にキレていたらしい」
俺は久しぶりに攻撃に感情を込める。
すると、拳に集まる魔力が段々と真っ赤に色付いていく。
そして———俺は全力で拳を振り抜き、『ケートス』は魔力塊を放った。
———ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ———ッ!!
異次元な衝突音とも爆発音とも呼べる音と共に、衝撃波が雲も、海も、半壊していた島をも一瞬にして吹き飛ばす。
琴葉は俺の魔力によって衝撃波も飛んでくる何もかもは無効化させれおり、更に俺が魔力を固定しているので吹き飛ばされる心配もない。
俺は俺を吹き飛ばさんとぶち当たる衝撃波を物ともせず、流れに逆らう様に『ケートス』の下へと一瞬で駆け、その鼻っぱしに拳を叩き込む。
更に叩き込んだ拳を振り抜くと、その巨体を大きく弾き飛ばした。
「ァァァァァァァァアアアアアアアアア!!」
『ケートス』が悲鳴を上げるが———その時には既に俺は吹き飛んだ方に既におり、此方に吹き飛んでくる『ケートス』に再び拳を叩き込んだ。
その瞬間に魔力が爆発的に放出され、魔力を伴う拳圧が『ケートス』をまるでスーパーボールの様に吹き飛ぶ。
しかし———『ケートス』も負けていなかった。
一瞬で俺を中心として、全方位に真紅の魔力塊が生み出され、取り囲まれた。
俺は魔力塊の間を抜けようとするが、更にその合間を縫う様に、光速にも届きそうな勢いの完全に物理法則を逸した水弾が俺を襲い、咄嗟に避けたものの、まるで生き物の様に追いかけてくる。
———俺は完全に逃げ場を失った。
「———上等だ」
俺は全身に魔力を纏わせて身体の枷を完全に解放。
その瞬間———俺は縦横無尽に空を駆け回り、全ての魔力塊を一撃の下に破壊する。
此処が日本から遠く離れた太平洋だからいいものの、近くに人が住んでいたら間違いなく一瞬の内に消し飛ばされてしまうほどの衝撃波が絶えず生み出されていた。
だが———それはすぐに終わりを迎える。
これでは俺を倒せないと思ったのか、『ケートス』が攻撃をやめたからだ。
しかし諦めているわけではない様で———『ケートス』が巨大な口をめいいっぱい開いた。
そう———いつかの日と同じ様に。
そして光をも呑み込む程の引力で、俺を再び腹の中の空間に閉じ込めようとする。
此処で対抗しても良かったが———『ケートス』の再生能力を上回るなら
「それじゃあ招待されてやるか」
———今度は自ら呑み込まれた。
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