第5話 依頼で学生を助ける

「神羅〜見つけた〜?」

「いや、見つからない。そっちは?」

「勿論居ないよ。なんでだろ?」


 『夜明けの証』で一悶着あった次の日。

 俺と琴葉は普通に依頼を受けて琴葉の家からそれほど離れていない森に居た。 


 その依頼は、最近2頭の巨神獣が此処ら辺に巣を作ってしまったらしく、その2頭を討伐して欲しいと言った感じだ。

 しかし詳しい巨神獣の内容は書かれていなかったため、一応大事を取って俺が行くことになった。

 俺なら絶対に殺されることはない、と言う東さんの判断だ。


 そしてそんな不明な点が多い依頼を受けた俺を心配した琴葉が「絶対について行く!」と言って聞かないので、仕方なく連れて行くことに。


 しかし———。


「本当に此処か?」

「でも依頼には此処って書いてあるよ」


 スマホの依頼内容を何度も確認し、時折検索機能も使って場所を確認してみるも、やはり此処の様で、2人して首を傾げる。


 先程から俺と琴葉でざっと周りを飛んで見てみたものの、1頭たりとも巨神獣らしき姿も気配も見当たらなかった。

 俺は気配を感じるのがあまり得意ではなく、気配を感じ取るために魔力を放出すれば普通に膨大な魔力に当てられて生物達が死ぬ。

 しかし琴葉は気配を探るのが得意らしく、探ってもらったのだが、巨神獣らしき反応はなかったらしい。

 

「こうなったら地道に探すしかないか」

「えぇ……まぁ神羅と一緒ならどれだけ面倒な依頼でもいいけど……これ、1日で終わるかなぁ?」

「取り敢えず森の中に入るか」


 俺達は少し面倒な依頼を受けてしまったな……と感じながら森の中に入る。

 だが森には普通に鹿や猪も生息しており、川には普通の魚しかいない。


 基本巨神獣の生息している場所は生物が少ない傾向にあるが、どうやら今回はそれに当てはまらない様だ。


「うーん……はぁ……気持ちいいなぁ……。森の中って想像以上に涼しいね」

「ああそうだな。恐らくマイナスイオン的な何かがあるからじゃないか?」

「あ、それ何か聞いたことあるよ。詳しくは知らないけど」


 あまりにも見つからないので、全く需要のない雑談をしていたその時———


 ———ドカンッ!


 突如、森の中心部辺りから爆発音が聞こえてきた。

 俺達は反射的に空を飛んで爆発音が鳴り響いた方角に目を向けると、森の中で炎系の異能を使ったのかモクモクと大量の黒い煙が上がっており、木が燃えている。


「どうだ琴葉?」

「爆発音がした所から普通の生物よりも強い気配が5つ! 2つが巨神獣で残りは……覚醒者だと思う!」

「先に向かってるぞ」

「うん!」


 俺は人智を超えた速度で空を蹴り、瞬きの内に爆心地に到着。

 そこには———


「「ホーホーホーホーホー」」


 数メートル程度の大きさのフクロウ型の巨神獣2匹と、


「———くそッ! 何だよアイツ! いきなり現れて森の中で火を吐くなんて……」

「しっかりしなさいよ馬鹿光輝! まずはアイツらをどうにかする事が先決でしょ! 取り敢えずアンタは私の後ろに来て!」

「ねぇ2人とも、兎に角逃げようよ! 3人で同時に異能で攻撃して相手の気が逸れている内に逃げるの!」


 何処の物かは分からないが、学生服に身を包んだ男子1人と女子2人が居た。

 男子生徒の口振りからして先程の爆発音は梟型の巨神獣がやったらしい。

 まぁ詳しくはあの学生達に詳しく訊くとして……取り敢えず倒すか。


 俺は軽く地面を蹴って一瞬で梟の真横に移動すると、頭目掛けて拳を振り抜く。

 その瞬間に『ドパンッ!』と言う破裂音と共に梟の頭が跡形もなく消し飛ぶ。


「…………え?」

「か、覚醒者!?」

「わ、私たち助かったのかな……?」

「油断は禁物だ。3人でお互い背合わせになり、辺りを注意しておけ。俺はこの梟を始末する」

「「「は、はい!!」」」


 学生達が指示に返事をしたのを確認した俺は、此方を威嚇して炎を吐き出す梟に突っ込もうとするが———


「神羅には指一本たりとも触れさせない!」


 それより先に琴葉の操作する水が吐き出した炎を辺りの炎ごと消し、氷の塊が梟を潰す。

 言うまでもなく梟型巨神獣は即死。

 山火事も琴葉のおかげでそこまで広がることもなかった。


「ふぅ……これで依頼も完了かな?」

「多分な」


 依頼には2頭と書かれていたし、等級も特に書かれていなかったのでコイツらで間違いないだろう。


「でも、コイツらの強さって良くてもC級なのに、どうして私の魔力感知は反応しなかったのかなぁ……。まぁそれは後でいいとして———君達はどうして此処に?」


 琴葉が近くで呆然とした表情で俺たちを見ている学生達に話しかけると、その中の男子生徒が「あっ!」と驚きの声を上げる。


「も、もしかして水野琴葉さんですか!?」

「え!? た、確かに似てる……めちゃくちゃ強かったし……」

「な、なら琴葉さんの隣に居るのは最近1番有名な斎藤神羅さんですか!?」


 大人しめで眼鏡を掛けた女子生徒がキラキラと瞳を輝かせて俺に聞いてくる。

 一瞬で俺達の正体を当てられてしまったため、2人して顔を見合わせると琴葉が一歩前に出て———


「私、今はプライベートで神羅についてきてるから、皆には内緒にしててね? 約束だよ?」


 琴葉が素の笑顔を浮かべて口元にシーと手を添える。

 すると3人は、琴葉の可愛さに顔を真っ赤にして頻りに何度も頷いていた。


「1つ訊いていいか?」


 俺が先程俺の名前を呼んだ女子学生に声を掛ける。


「は、はい! 何でも訊いてください! わ、私、神羅様の大ファンなんです! ただ話しかけてはいけないと言うルールがあるので……あ、今話してるけどどうしよう……」


 喜んだり顔を青ざめたりとコロコロと変わる姿は少し面白い。

 だが、学生といえどあまり女性と話しては琴葉が不機嫌になるので手短に済ませようと思う。


「先ほども聞いたが、どうして此処に居るんだ?」

「あっ……じ、実はですね……ち、ちょっと待ってください」


 少女はそう言うと、琴葉と話していた2人の下に行き、何かを話し出した。

 話す内にどんどんと顔が険しくなっていく。

 そして何やら言い合いにもなっている。


「……どうしたんだろうね、いきなりあんなに言い争いになって」

「……何か隠し事でもあるんだろうな」 


 俺たちがそんなことを話していると、3人とも先程とは違い真剣な表情で俺達に言う。

 

「……実はお2人に見て貰いたいものがあります」


 そう言って森の中にどんどん歩いて行く。

 まるで何度も来ているかの様に慣れた様子で。


 そして森の中を進むこと十数分。

 一本の大きな木が聳え立つ少し開けた場所に着いた。

 

「此処は……初めてみるな」

「私も。でもおかしい……何で空を飛んでいた私達が気付かなかったのかな? それに此処の魔力濃度が異常に高いし……もしかして———」

「———この子です。おいで、ブルー」


 琴葉が何かに気づいたかの様に何かを言おうとした瞬間、


「!? ……それがどう言うことか分かってる……?」


 琴葉が一瞬にして戦闘態勢に入り、氷のを周りに顕現させてから3人に警告する。

 俺は特に構えてはいないが、それでもいつでも攻撃できる様にはしている。


「ちょ、ちょっと待ってください! この子は———ブルーは違うんです!」


 そう言う男子生徒の腕の中に、突如として青色の体長60センチ程の竜型巨神獣が眠っていた。


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 昨日は皆さんのお陰で久しぶりの日間1位。

 マジで感謝。

 このままいけばもう少しで☆4000行きそう。


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