第6話 依頼『覚醒者学院の教師になって貰いたい』

 今回短いです。

 申し訳ない。

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 俺達は一先ず直ぐに協会に連絡せず、話を聞いてみることにした。


「取り敢えず詳しく説明してくれ。話はそれからだ」

「は、はい……実はですね……」


 そう言って話し始めた男子生徒———大橋光輝の話をまとめてみるとこんな感じだ。


 1年前、覚醒者学院の校外授業で此処に訪れた時に3人は同じ班だったらしく、班行動で誰も居ない森の奥深くに行ったらしい。

 その当時は此処に巨神獣は居なかったので簡単に森の中心部に行くことが出来たんだとか。

 そうしてこの場所に辿り着き、昼飯を食べようとしていた所で怪我をしたブルーに会ったらしく、怪我の手当てをしたら懐かれてしまい、こうして定期的に会いに行っているらしい。


「討伐しようとは思わなかったのか? 学院ではそう習っているはずだが」

「勿論最初は討伐しようとしました。ですが……その、あまりにも可愛すぎて……」


 光輝が俺と琴葉の前にブルーと呼ばれた竜型巨神獣を恐る恐る差し出す。


 よく見るまでもなく、巨神獣にしては今まで見たこともないほど小さく……とても愛くるしい。

 チラッと琴葉を見れば、撫で回したそうに手がプルプルと震えており、心の中で常識とぶつかっているのがありありと想像できる。

 確かにこの子を殺すことは子供には難しいかもしれない。


 現に琴葉は多分命令とか強めな指令がないと殺せなさそうだし、殺した後でショックを受けそうだ。


「……取り敢えず処分については、覚醒者学院と協会に連絡を取ってからだな」

「そう、ですよね……」

「まぁそんなに落ち込むな。少し待ってろ」


 俺はポンポンと落ち込む光輝の頭を撫でると、スマホから覚醒者学院に電話を掛ける。

 すると思いの外直ぐに繋がった。


『もしもし、此方覚醒者学院の事務室です。御用件は何でしょうか?』

「休日に申し訳ありません。俺は斎藤神羅と言うのですが———」

『んぼほっ!? さ、斎藤神羅様!? ……ゴホンッ。少々取り乱してしまいました。申し訳ありません。それと敬語は無しでいいです。SSS級覚醒者が無闇に敬語を使ってはいけません。それで……SSS級覚醒者であられる斎藤神羅様がどう言った御用件でしょうか?』


 電話越しに俺を対応している女性の取り乱す声と、時々入る狂喜乱舞した事務員達? の叫び声が若干気になるものの、一先ず用件を手短に話す。


「実は俺が依頼の途中でたまたま貴学の生徒の大橋光輝、有村朱里、佐伯詩織の3名が巨神獣に襲われている所に出会って助けたのだが……」

『え!? 本当ですか!? そ、それは大変ありがとうございます!! 何と御礼を申し上げて良いやら……』

「いや、それは別にいいのだが……話を聞くと彼等は体長60センチ程の竜型巨神獣を飼っているらしいのだが……」

『………………はい? 申し訳ありません。聞き間違いかもしれないのでもう一度よろしくお願いします』


 電話越しからも困惑の色が色濃く出ているのがはっきりと分かる。


「貴学の生徒が60センチ程の竜型巨神獣をペットにしているのだ」

『……どうやら私の聞き間違い、ではない様ですね……因みにいつからとかは聞いたりしていますか? それに神羅様は実物を見ていますか?』

「1年前かららしい。その期間一度も攻撃されたことも威嚇されたことも無いから殺さないでほしい、との意見が生徒達から上がっている。それにその巨神獣なら今俺の目の前にいる。初めての俺にも襲いかかってこないぞ」

『……少々お待ち下さい。上と相談してきますので』


 そう言った後、保留に切り替わる。

 

「ど、どうでしたか……?」


 詩織がガタガタと震える体を抑えて聞いてきた。

 朱里や光輝も心配そうな顔でブルーを抱っこしており、その抱っこされているブルーは全く空気を読まず呑気にお昼寝タイムへと移行している。

 ……コイツ自分の命が危ない事を分かっていないのか?


「一応相談してくれるらしい。どうなるかは分からないが」

「いえ、俺達じゃどうせ直ぐに殺せと言われていたので、相談してくれるだけでも神羅様のお陰です!」

「「ありがとうございます!!」」


 そう言って律儀に頭を下げる3人。

 3人が急に動いたせいか、ブルーが目を覚まして光輝の体へとすりすりと体を寄せていた。


「ねぇ神羅」

「どうした?」

「……私、ペットが飼いたい……!」


 琴葉がブルーを見ながらそんな事を宣う。

 まぁ何となくそんな事を言いそうな雰囲気だったが、案の定欲しくなってしまった様だ。


「でもね……普通のペットは皆私を怖がって全然懐いてくれないの……」

「…………」


 まぁ俺達は明らかに犬や猫とは比べ物にならない程の力を有しているし、動物はそう言った力に敏感なので懐かないのも頷ける。

 上位覚醒者の唯一の悩みはその様なペット問題だろう。

 

 実際俺も道を歩いていて猫や鳥を見つけても一瞬で逃げられてしまう。

 完全に力を抑えれば短時間は懐いてくれるが。

 

「……今度気配の制御を練習しよう。そうすれば猫カフェくらいには行ける様になるぞ」

「……頑張る」


 琴葉は再びブルーを抱っこする光輝達に憧れの目を向ける。

 正直俺は別にペットが欲しいとはあまり思った事がないし、あの空間で過ごしたせいか興味も失せたので、確かにブルーは可愛いが、殺せと言われれば直ぐに殺せるだろう。

 出来ればそんな事はしたくないが。


 俺がそんな事を考えていると、やっと保留が終わり、『もしもし』と声が聞こえら様になったので、スピーカーにして皆に聴こえる様にする。


「もしもし」

『た、大変お待たせしてしまい申し訳ありません。学院と協会で話し合った結果———1つの条件付きで飼うことを許されました』

「「やったぁあああああ!!」」 

「よっしゃぁ!」


 3人が大喜びし、琴葉は殺さないでいいことにホッと安堵のため息を吐いていた。

 しかし俺的には飼う時の条件が気になる。


「その1つの条件とは?」


 俺が聞くと、電話越しに唾を飲み込む音が聞こえた。


『それはですね———斎藤神羅様に是非この学院の教師として半年間教鞭を払ってもらうことです』


「「「「…………え?」」」」

「…………」


 どうやら俺は猛烈に面倒な事に巻き込まれた様だ。


 


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