第4話 いざクラン『夜明けの証』へ②

「……一体何があったんだ?」


 見た所練習場の様で、恐らく俺が覚醒者登録をした時の練習場の様な空間拡張型の部屋だと思う。


 俺が朝霧会長に訊いてみると、原因はあの病院での出来事らしい。

 病院での出来事とは———


「君達が公衆の面前でキスをしたことだよっ!! あれから姫花君と男性覚醒者の9割が狂って神羅君と琴葉君を引き離そうとして、逆に優君と9割の女性覚醒者がそれを阻止しようと頑張ってるんだよ。君達のお陰でクラン一の抗争が始まっているんだ! 頼むから何とかしてくれ! 僕じゃ皆をボコボコにしても全く意味がなかったん———」

「…………私と神羅を引き離す……? ん? 私の聞き間違いかな? そうだよね……きっとそうだよね……。ふふふ……姫花とお話し・・・しないと……」

「こ、琴葉君!?」

「落ち着け琴葉」


 瞳のハイライトを完全に消し、全身から負のオーラを撒き散らしてブチギレている琴葉を止める。

 しかしいつもはすぐに収まってくれるのだが、今回は違った。


「止めないで神羅! アイツらは私のクランの人達だから私がヤるの!」

「———ストップ」

「ひゃっ!?」

「「「「「「「あ”あ” あ”あ” あ”あ” あ”あ”ッッ!! また神羅とか言う男が琴葉様とイチャイチャしていますッッ!!」」」」」」」

「「「「「「「キャアアアアアア!! 2人の尊い姿が……てぇてぇ!!」」」」」」」


 俺が最終手段として、少し恥ずかしいがバックハグをすると、琴葉がビクッと体を震わせた後、恥ずかしそうに首の辺りまで真っ赤に染めていた。

 それを見て姫花さん率いる俺嫌いな者達が発狂し、逆に肯定派の方は手を合わせて口から魂を抜いている。


「し、神羅……こんな大勢の前では恥ずかしいよ……でも嬉しい」


 そう言って俺に体を預ける。

 そんな琴葉を見て、この場にいる全ての覚醒者達が驚愕に目を見開いていた。


「あ、あのクールで高嶺の花の琴葉様が……」

「いつも表情を全く変えない琴葉様が……顔を真っ赤にして笑顔を……ァァァァァァ尊い……」


 殆どの覚醒者がこの2つの反応をしている中、姫花さんがズンズンと此方に近づいてきて、刀を此方に向ける。


「……何の真似なの、姫花?」

「申し訳ありません琴葉様。ですが、私達は未だ彼を認めて居ないのです。なので……私達1760人と決闘をしてください、斎藤神羅! SSS級覚醒者なら出来るでしょう?」

「姫花君! いい加減に———! 済まない神羅君。やはり僕が何とか———」

「大丈夫です朝霧会長」


 俺は止めようとする朝霧会長を止め、琴葉に少し離れてもらう。


 全く……有名人は大変だな。

 プライベートの恋人まで他人に口出しされるなんてな。

 俺のファンクラブはミアさんが「鎮静化させて御二方のてぇてぇの尊い姿を必死に説いて全員を『神羅様×琴葉様の尊い姿を見守る会』を新たに立ち上げました!!」と満面の笑みで言っていた。

 こう思うと俺のファンクラブは異質なのかもしれない。

 

 しかし……琴葉との関係を邪魔するならそれ相応の対価を取らせてもらおう。


「……姫花さんと言ったな?」

「ええ、それが? あと私のことは橘と呼んでください。貴方に下の名前で呼ばれる筋合いはありません」

「それは申し訳なかった。それに決闘は受けてもいい。でもな、橘さん———」


 俺は一瞬で此方に向けられた刀を奪い取ると、橘さんの足を引っ掛けて地面に倒す。


「———がはっ!?」



「———琴葉はお前らの物じゃない。ファンクラブだからと言って束縛するなよ。あと……人に刃を向けるのはやめておけ」



 俺がそう言うと、橘さんが悔しそうに顔を歪める。


「くっ……忌々しい……ッ! はぁあああああ———《刀術・飛斬》ッッ!!」

 

 橘さんが人智を超えた速度で起き上がって刀を拾うと、振り向きざまに虚空に向かって刀を振り抜く。  

 すると刀から斬撃が生まれ、此方に向かって飛んで来た———が、俺は手を前に突き出すだけで受け止め、破壊する。


「なっ———!?」

「どうした? その程度で俺に挑んできたのか?」

「……そんな訳ないじゃないですかっ! ———《抜刀術・斬空》」


 橘さんが刀を鞘に収めると、神速の居合斬りを繰り出してくる。

 恐らくこれも異能力だと思うが……まぁ全く問題ないな。


 俺を斬ろうと迫る刀を折らない様に避け、そのまま鳩尾に拳を突き入れる。


「———カハッ!」


 モロに食らった橘さんは、身体をくの字にして吹き飛ぶ。

 俺は壁に当たらない様に一瞬で吹き飛ぶ橘さんに追い付いて受け止めると、既に橘さんは完全に気絶していた。

 取り敢えず彼女を地面に下ろすして呆然としている男性覚醒者達に視線を移す。

 俺が見るだけで1000人を超える覚醒者達が後ずさる。


「……それで、どうする? 彼女みたいに気絶させられたいか? それとも、もうやめるか? やるなら異能は使わないでやるぞ?」


 俺が異能を使わないと言った瞬間、覚醒者達の間に流れていた絶望的なムードが消え、一気に希望が芽生えたかの様に瞳に光が宿りだした。


「……異能なしならいけるんじゃないか?」

「一応俺達日本最強クランのメンバーだし……いけるかも!」

「や、やるぞ! 琴葉様を救い出すのだ!!」

「「「「「「「おう!!」」」」」」」


 その瞬間、一気に数百人が俺を倒さんと迫ってくる。

 さすが日本最強のクランのメンバーなだけあり、どれも昔の俺が当たれば一撃で骨も残らず消滅していたであろう威力を誇る異能を発動させていた。


 しかし———この程度なら手を使わずとも制圧できる。


「…………はッ!」


 ズドオオオオオオオオオ!!


 俺が蛇の巨神獣の時の様に雄叫びを上げて衝撃波を生み出すと、俺に近づこうとしていた覚醒者達が一気に吹き飛ぶ。

 

「う、うわぁアアアアアア!?」

「何だよアイツ! 異次元すぎ……うわあああああああ!!」

「ちょ、ぎゃあああああああ!!」

「近付いたら駄目だ! 遠くから異能を発動させろ!」


 誰かの号令と共に炎に水だけでなく、風や雷、氷などの多種多様な異能攻撃が飛んで来る。

 その数は軽く数百を超えており、1つ1つの威力もそれなりに高い。


「これならいけ———は?」 

「……ば、馬鹿な……!」


 誰が確信の言葉を言った瞬間、全ての異能攻撃が消し飛ぶ。

 まぁ俺が全ての異能攻撃に向けて拳圧をぶつけただけだが、側からは俺が一歩も動いて居ない様に見えているため、何が何だか分からないと言った風に困惑していた。


 俺はそんな覚醒者達に向けて拳をグッと握り、腰を落として構えると……虚空に打ち出す。


 ———ゴォオオオオオオオオオ!!


 極大の拳圧が床を削りながら覚醒者達の元へ届くと———


「皆、防御態勢を———グハッ!?」

「《防壁》!! これで……ゴハッ!?」


 あらゆる防御を貫通して、敵対していた全ての覚醒者を吹き飛ばした。

 全てが終わった頃には、立ち上がっているものは誰1人存在して居なかった。





 



「「「「「「「「生意気言ってすいませんでした!!」」」」」」」


 男性覚醒者諸君が見事に綺麗な土下座を繰り出す。

 皆吹き飛ばされたことによって至る所に痣が出来ており、完全に戦意を喪失していた。


「もう余計な揉め事は起こすなよ? 今度は琴葉がやるかもしれないぞ」


 その言葉と同時に男性覚醒者諸君は一斉に、全身に黒いオーラを纏ってハイライトの消えた目で笑っている琴葉を見て顔を真っ青にする。


「「「「「「「「もう2度と揉め事は起こさないと此処に誓います!!」」」」」」」」」


 俺は再び土下座を始めた男性覚醒者から視線を逸らすと、気絶している橘さんを優さんに手渡す。


「橘さんを救護室的な所に連れて行ってくれないか?」

「あ、は、はい! あ、いえ! 僕はヒーラーなので此処で直します! 《回復》」


 その言葉と同時に橘さんの身体が淡く光り、直ぐに目を覚ました。

 ガバッと起き上がった橘さんは、辺りを見回して自分が負けた事に気付いたのか、ガクッと肩を落として絶望した様な表情になる。


「……私は負けたのですね……仕方がありません。琴葉様は貴方に任せましょう」

「———ひ・め・かぁ?」

「こ、琴葉様……ご、ご機嫌麗しゅう……ひっ!?」


 琴葉がにこやかな笑みを浮かべて座り込んでいる橘さんと目線の高さを合わせると、突如真顔になってハイライトの消えた目で橘さんを覗き込む。


「よくも私の神羅に刀を向けるだけでなく、異能まで使ったわね? 貴女には少しお仕置きが必要なようね? ん? 何か言うことは?」

「い、いえ、え、えっと……あ、あの……」

「私は神羅の様に優しくない。覚悟しておいてね?」

「あっ…………はい……」

「神羅、私、少しこの子と話があるから会長と話してて」

「……ほどほどにな」

 

 俺のそんな言葉にニコッと綺麗な作り笑いで返して来る琴葉。


 ……これはほどほどでは終わらないな。


 橘さんは観念した様にがっかりと肩を落とし、真っ青な顔のまま琴葉に首根っこを掴まれて部屋から出て行った。

 

「……お互い大変だね」

「……そうだな」

 

 俺と朝霧会長は大きなため息を吐いた。


—————————————————————————

 何とか2話目出せた……疲れた。

 また☆4000超えたらその週の土曜日に2話投稿しようかな。


 なので、マジでフォローと☆☆☆宜しくお願いします!! 

 モチベ維持にも繋がるので!  

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る