最弱覚醒者は幾億の時を経て最強に至る

第15話 全てを粉砕する力（改）

「———なっ……！？」

「どうした？　俺が強いと分かっていたんじゃないのか？」

「チッ！　やれ『オオアナコンダ』！」

　オオアナコンダが口を大きく開き、俺に向けて先程の様にドス黒い酸液の様なものを超速で飛ばしてきた。

　更には再び透明な刃が幾つも俺に襲い掛かる。

　この２つの攻撃を全て防ぎ切るのは難しいだろうな……普通の奴らなら。

「ふぅ……はぁあああッ！！」

　俺は腹の底から全力で雄叫びを上げる。

　その咆哮から発生した衝撃波ひ先程の『オオアナコンダ』より数倍以上もの威力があった。

「ぐっ……わ、私を守れ『オオアナコンダ』ッッ！！」

　衝撃波は霧を吹き飛ばし、幾つもの木を根こそぎ薙ぎ倒し、地面を抉るが、流石にSS級巨神獣にダメージを与える程には至らなかった。

　しかしその威力に本能から警戒したのか、『オオアナコンダ』は巨体全体から魔力を噴き出し『シャー』と威嚇する。

「ば、馬鹿な……何だこの威力は……！　貴様、力を隠していやがったな！？」

「そもそも力を見せていないがな」

　俺は永遠と放たれる透明な刃を一つ残らず拳で軽々と破壊。

「そろそろ、その透明な刃の奴止めたらどうだ？　絶対に効かないぞ」

　いい加減鬱陶しいので身体に当たるのを無視して一直線に奴の下へ歩いていく。

　透明な刃は俺の身体に触れた瞬間にバキバキに砕け散るか、反射されて変な方向へと飛んでいった。

「何故だ……何故だ何故だ何故だ何故だ！！　貴様のその力はSS級なんて枠に収まっていないじゃないか！！　間違いなくSSS級はある……くそッ！　こんなポッと出の奴にこれを使わなければならないとは……」

「ブツブツ独り言はいいからとっととやれ」

「ふ、ふふふっ……そうやって余裕でいられるのも今の内だ！！　———【大蛇化】ッッ！！」

　———瞬間、上杉誠哉の身体が光ったかと思うと、人間の姿を失い、どんどん蛇の身体へと変化していく。

　その大きさは『オオアナコンダ』よりも少し小さいくらい。

『あははははははっ！！　どうだ神羅君！　これが私の奥の手だよ！！　2体の大蛇を君は相手にできるかな！？』

　2頭の大蛇が薙ぎ倒された木を、抉れた土を更に破壊しながらその図体に似合わない速度で疾駆する。

　更にどうやら蛇になっても異能は使えるらしく、体と共にデカくなった透明な刃が俺を襲って来た。

「はぁ……」

　俺は先程と同じ力で透明な刃を殴ってみるが、『ガキンッ！』と言う甲高い音を響かせて弾かれてしまった。

　どうやらこの程度では破壊できない様だ。

　そこで俺は先程の3倍くらいの力で殴ってみると、透明な刃は辺りに破片を撒き散らしながら粉砕した。

　俺は手当り次第に透明な刃を破壊しながら、いつの間にか接近して来ていた『オオアナコンダ』に向かって軽めのパンチを撃ち込む。

「———ふッ」

「シャアアアアアアアア！？」

　しかし『オオアナコンダ』の敏捷性が思った以上に高く、すんでの所で急所を外されてしまい、鱗を数枚吹き飛ばすに終わってしまったが、間髪入れずに再び拳を振るう。

　だが、透明な刃が邪魔で『オオアナコンダ』を気絶させる程には至らない。

　それなりに本気を出せれば簡単なんだが……やはり手加減と言うのはどれだけ経っても難しいものだ。

「鬱陶しい」

　俺は破壊するのが面倒になったので、全て無視して刃の嵐に突っ込む。

　幾つもの透明な刃は俺の速度に追いつけず、追尾することすら叶わない。

『クソッ……どこに行ったッ！！』

「此処だ馬鹿。いや、自分の位置を言っている俺も馬鹿か」

　スパンッッ！！

　俺は最早誰もが視認出来ない速度で上杉誠哉の巨大な頭の下に移動すると、首目掛けて気絶させるために速く軽い殴打を繰り出す。

　コイツには色々と白状してもらわないと俺がもしかしたら訴えられる……なんて可能性もあるので此処で死なれては困る。

『ぐっ……ま、まだだ……『オオアナコンダ』ッ！　早く私を助けろ！！』

「シャアアアアアアア———！！」

　どうやら俺の力が足りなかったらしく、辛うじて意識を保っていた上杉誠哉が『オオアナコンダ』に命令を出す。

　すると『オオアナコンダ』の瞳から完全に俺への恐怖の色がなくなり、狂戦士（バーサーカー）見たいな雰囲気に変わった。

　同時に感じられる気配も強くなっており、理性が消えたことで家事場の馬鹿力的な状態になっていると考えられる。

「……面倒だな」

　俺は何とかしてもらおうと上杉誠哉を見てみるも、残念ながら意識を失っており、通常の人間の姿に戻っていた。

　どうやらあの異能は意識を失うと効果が切れるらしい。

　俺は上杉誠哉から視線をそらし、此方に襲いかかる『オオアナコンダ』を見据える。

　移動するだけで常人が立っていられないほどの揺れが発生するが、空を飛べる俺には全く障害にならない。

　俺は空を蹴り、空中で一瞬で速度を上げ、その速さを拳に乗せて『オオアナコンダ』が幾重にも吐き出した酸液のブレスの様な物に衝突し、軽く皮膚が爛れる。

　しかし数億年の間に何度もあの世が見えたこともあったし、意識が吹き飛ぶほどの痛みに襲われたことすらあるので今更この程度の痛みに構ってやる意味もない。

「シャアアアアアアアッッ！！」　

「はっ！！」

　『オオアナコンダ』が衝撃波を伴う咆哮を上げたので、俺も同じ様に魔力を込めて雄叫びを上げると、お互いから発生した衝撃波がぶつかり、一瞬にして『オオアナコンダ』の衝撃波は消し飛び、俺の衝撃波を食らって大きく後ずさった。

　そんな光景の隅に上杉誠哉や高橋学、赤司翔吾の姿が映る。

「あっ、マズい」

　俺は若干焦りながら急いで3人を回収し、森の外まで飛んで3人を降ろす。

　彼ら———特に高橋学と赤司翔吾には生きていて貰いたい。

　2人は俺に対して特に何もしていないからな。

　だが、そろそろ終わらせないと、この森全てを破壊してしまう。

　流石にこの森全てを破壊すれば協会とか他の奴らに何を言われるか分からないので、それだけは避けたい。

「よし———行くか」

　俺は再び『オオアナコンダ』の下へと飛んだ。

「……また面倒な事を」

　再び戻って来た俺の目の前には『オオアナコンダ』がやったであろう、直径3、4キロメートル程のドス黒い酸液の沼が出来ていた。

　そしてそこにはボロボロになって尚、舌をチロチロだして『シィィィィ』と威嚇している『オオアナコンダ』の姿があった。

「しぶとい奴」

「シャアアアアア———ガァアアアッッ！！」

　『オオアナコンダ』の口が開き、今までより遥かに巨大で高速なブレスが襲う。

　しかし俺は避けるどころか迎撃すらしない。

「こんなの避ける意味もない」

　直撃したブレスは、俺の圧倒的な防御力の前に敗れ、殆ど効果がなかった。

　無傷の俺を見た『オオアナコンダ』は、普通にすれば勝てないと分かったのか、突然数キロメートルの巨体で遥か上空にジャンプしていた。

　やっと全長を見ることができたが、やはり数キロメートルはあり、その巨体が落ちて来た後の被害を考えるとゾッとする。

　俺は助かるだろうが、その余波で間違いなく近くの第16安全地帯にまだ被害が及ぶ。

　第16安全地帯は昔の福岡にあり、この森と隣接している。

　———と言うことは、コイツが地面に落ちる前に俺が何とかしなければならないと言うことだ。

「……好奇心に任せて行動したらダメだな。次からは自重しよう」

　俺は上空にいる『オオアナコンダ』を見据え、酸液の泥沼に降りて拳を構える。

　その瞬間にバトルスーツを貫通して俺の足を少し侵食していくが、取り敢えず無視して遂に帰還して初めて異能を発動。

「【———】」

「———シャアアアアア！？」

　シャ———ズドオオオオオオオオオ！！

　その瞬間に俺は一瞬にも満たない速度で『オオアナコンダ』に拳をぶち込んでいた。

　踏み込んだ地面はクレーター状に陥没しており、今になって地面を踏み締める轟音が響き渡る。

　———そして『オオアナコンダ』の姿は既に吹き飛んで跡形もなく、空はまるで今まで何もなかったかの様に雲一つない快晴が広がっていた。

「……軽くやったつもりが、やり過ぎた」

　やはり異能は使わない方が良さそうだ。

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