第13話 『双頭の大蛇』
「———公認して頂きありがとうございます!! 必ずや全世界の人間に神羅様が神であると示して見せます!! そしてその内神羅様がお金を使わなくてもいい様に全世界を変えてやります!! あっ、勿論神羅様は何もしなくてもいいですから。毎月写真を1枚お撮り頂ければ。いえ、負担であればそれも無しでもいいですから!! 何なら忘れてもらっても構いません!」
ミアさんが感極まった様に瞳を潤ませて頭を何度も下げる……が、それは普通にやめて欲しい。
「別に世界に示さなくていい。と言うか毎月写真は撮るからやめろ」
「承知致しました!! では日本をその内神羅様国に作り替えるだけで留めておきます!!」
……それも全然留めれてないんだけど。
ただこれ以上俺が何か言っても少し規模が小さくなるだけで、やる事は変わらないと思うので言わないでおこう。
それに実際に日本のすべての人間がファンクラブに入るなんて現実的に考えればあり得ないからな。
まぁそれをミアさんなら実現させそうだから怖いのだが。
ミアさんと話し合った結果、ファンクラブは俺の公認となった。
しかし俺のプライベートに侵入するのは禁止、仮に会ったとしても話し掛けるの禁止、例え俺に恋人が出来ても誹謗中傷するのは禁止など、挙げれるものは全部あげてみたのだが、全部一瞬で承認された。
ただ俺に恋人が出来ても、と言う所だけはミアさんが血の涙を流していたが。
「…………」
事情を知る心さんはずっと触らぬ神に祟りなしと言った感じで無言を貫いており、マジで空気みたいに気配を消している。
ほら輪郭も曖昧に……ってもしかして異能使ってないかこの人。
始めはよほど気配を消すのが上手いのかなと思っていたが、明らかにおかしい。
と言うか異能を使わないといけないほどミアさんが怖いのだろうか。
なんて思っていた時———突然心さんの次世代型のスマホに電話が掛かってきた。
心さんは画面を見て一瞬眉を潜めるが直ぐにスピーカーにして電話に出る。
「もしもし夕ちゃんどうしたの?」
『あ、突然のお電話申し訳ありません。実は心様が神羅様と共にいると聞いたもので……』
「どうした夕薙さん」
『神羅様! じ、実はですね……』
夕薙さんから聞いた話を要約すると、今まで協会側が俺へのクランやパーティーの招待を代わりに断ってくれていたそうだが、今日大手クランの会長自らが現れてスカウトをしに来たらしい。
流石に協会も本人がいない所で断る事は難しいらしく、俺に戻って来て欲しいとのことだった。
「急いで戻る。少し待っていてくれ」
『あ、ありがとうございます! それではお待ちしております!』
電話越しに安堵がありありと伝わって来たので、少し急いだ方が良さそうだ。
「———と言う事で急いで俺は戻るが、心さんはどうする?」
「私は勿論残るよ〜まだミアと話したいこともあるからね☆」
「行ってらっしゃいませ神羅様!! その内相手から神羅様の下へ訪問してくる様に私がして見せますから!!」
「……期待せずに待っておく」
俺は今後ミアさんに困らされるんだろうなぁ、と思いながらも急いで協会へと戻った。
———5分後。
「———夕薙さん、戻ったぞ」
「神羅様! 急にお呼び出しして申し訳ありません! いきなりで悪いのですが、お客様が会議室でお待ちになっており……」
「俺もそこに向かえばいいのか?」
「はい。相手は『双頭の大蛇』と言うクランです。会長は現SS級覚醒者で『赫い戦斧』の上杉剛毅の兄でもある上杉誠哉様。2人の仲は悪いことで有名ですが、何があるか分からないので一応警戒しておいてください。我々の方でも警戒しておきますので」
確かに夕薙さんの言う通り、俺が剛毅を倒して1週間と言う微妙な期間で兄の率いるクランが接触してくるのは怪しいとも言える。
兄弟仲が悪いと言う噂の真実は分からないが、夕薙さんの言う通り用心していて損はないだろう。
「忠告ありがとう夕薙さん。俺も用心しておくことにする。それじゃあ案内してくれ」
「承知致しました」
そう言って訓練場から少し離れた会議室と書かれた部屋に向かうが、その途中からビシビシとそれなりに強い気配を感じていた。
中に居る人は3人で、剛毅と同程度が1人に剛毅よりだいぶ強い者が1人、そして———あの無機質な空間でも中の上にギリギリ入れるか入れないくらいの強者が1人。
恐らくその気配の者が剛毅の兄である誠哉とか言う奴だろう。
「此方におられます」
「分かった。———失礼する」
扉を開けた瞬間———威圧が襲うが、俺は夕薙さんに威圧がいかないように威圧で返す。
すると目の前のソファーに座っているスーツ姿の20代の強面なイケメンが少し驚いた様に目を開いたが、すぐに笑みを浮かべた。
そんな男に俺も同じく笑みを浮かべる……勿論本当に笑っているわけではないが。
「其方のクランは礼儀がなっていない様だな。受付人がSS級覚醒者の威圧に耐えられるわけないだろう」
「それは失礼した。だが、彼には部屋を出て行ってもらえないかな?」
「それはダメだ。夕薙さんは俺の専属受付人だ。彼には聞く権利がある」
お互いの視線がぶつかり合い、それだけで衝撃派が発生して部屋自体が揺れる。
しかしお互いに一歩も引かない。
「神羅様! これ以上はおやめくださいっ! 協会が崩れてしまいます!」
「誠哉様、協会の建造物が壊れれば損害賠償だけでなく、協会からの心象も悪くなってしまいます。此処はお控えください」
俺は夕薙さんに、上杉誠哉は後ろに直立していたS級と思われる眼鏡をかけた真面目そうな人に止められ、視線を逸らす。
部屋の揺れが収まり、俺と上杉誠哉以外の人間が安堵した様に胸を撫で下ろしていた。
「……すまなかった神羅殿。少し楽しくなってしまったんだ。限度を超えた行為については謝罪するよ」
「……俺も少し大人げがなかった。だが俺はあまり俗世に慣れていなくてな」
「それはそれは……本当に失礼なことをしてしまったね。まぁ取り敢えず座ってから話をしよう。勿論受付人の君も一緒に、ね」
笑みを深める上杉誠哉に夕薙さんは若干ビクビクしていたが、流石に受付人なだけあり覚悟を決めた様に座った。
やはり夕薙さんは肝が座っているな。
俺も夕薙さん同様、上杉誠哉の対面のソファーへと腰を掛け、足を組む。
此処で重要なのは、少し尊大に見せることだ。
此処でビシッと座ると立場が相手の方が上と自分から認めている様なものなので、そんなことをしてはいけない。
あくまで此方が優位な立場だと示さないとな。
そんな俺の意図に気付いたらしい相手側は一瞬不穏な気配を漏らすものの、すぐに引っ込めた。
流石に大手クランと言うだけあって、すぐにキレたりする単細胞はいない様だ。
もしかしたら剛毅はそれが理由で入らなかったのかもな。
「それで、今日は俺にどう言った用件で来た?」
「まずは———
そう言って3人が頭を下げる。
少し意外だったが、一応想定内だ。
どうせこれは俺に好印象を与えるためにやったことだろうし、そもそも初めの威圧でコイツへの好感度はただ下がりなので別に効果はないが。
「それはもう終わったことだから謝罪は不要だ。早く本題に入れ」
正直コイツと話したくない。
先程から俺の本能がコイツは屑だと警鐘を鳴らしているのだ。
俺は昔から虐めに会っていたからいつの間にか人の悪意には敏感になったし、その人が屑かどうかも見抜ける様になったのでかなり正確である。
「鋭いね。そうだよ、別に愚弟のことを謝りに来たわけじゃない。まぁ少しはそれも理由に入っているけど。ねぇ神羅殿———俺達の仲間にならないかい?」
そう言って笑みを浮かべる上杉誠哉の姿は普通の人が見れば善人に見えるだろうが———俺には全く別のものに見えていた。
まるで獲物を狩る時に静かに近付いて絞め殺す、蛇の様だ———と。
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