第5話 再登録と模擬戦

「ど、どう言うことですか!? errorなんて初めて聞いたんですが!?」

「お、俺も初めて聞いたよ……神羅くんは一体どれくらい強いんだい……?」


 受付人が驚愕に声を震わせ、洋介さんも乾いた笑みを浮かべる。

 他にも心さんに綾人さん、咲良さんなど此処にいた殆どの者が2人と同じ様に驚いていた。

 

 一方で俺はと言うと……


「それで、次は巨神獣との戦闘か?」


 早く次に進みたかった。

 俺は元々聞いた瞬間にこうなる事が目に見えていたので特に驚きもしないし、何処ぞのラノベ主人公の様に「俺、何かやっちゃいました?」と自分の力を自覚していないわけでもない。

 俺はしっかり今の俺の力が異次元なことは理解している。

 

「……一応訊いてみますが、レベルはどのくらいですか?」


 受付人が恐る恐ると言った感じで訊いて来るが……どうしようか。

 一般的には目立ちたがりや人気な覚醒者以外は自分のレベルを公表しない。

 それはきっと15年だった今でも変わらないはずだ。

 だが俺は———


「———レベルは999,999,999だ」


 普通に言う。 

 別に隠した所で意味は無いしな。


「はい? ふざけていますか? 答えるならもう少しちゃんと答えてください。嫌なら嫌でいいので」


 受付人がそう吐き捨てる。

 今度ばかりは洋介さんも苦笑いをしており、信じていない模様。

 別に嘘を付いている訳では無いが、まぁ信じて貰えないのは重々承知のこと。

 流石に9億は巫山戯ているとしか思えない数値だしな。


「早く巨神獣と戦わせてくれ」

「そ、そうですね。では此方へ来てください」


 俺は受付人の後ろを追おうとすると、「神羅くん」と洋介さんの声が聞こえて、振り返る。


「どうした?」

「頑張ってね神羅くん。俺も見てるから」

「ああ、ありがとう」


 俺は洋介さんの応援に感謝を述べてから、受付人に連れられて、ラウンジの様な所の奥にある訓練場と書いてある部屋に入る。

 中は何も無い四角形の部屋だったが、どう考えても100メートル級どころか数十メートル級の巨神獣すら入りそうにない。


 俺が疑問に思っていると、すぐに部屋全体に響く様に先程の受付人の声が聞こえた。

 

『神羅様、聞こえますか?』

「ああ」

『取り敢えず先程レベルが分からなかったので、A級ではなく、B級から始めさせてください』

「別に構わない」


 俺がそう言うと、突然自分が小さくなったかの様に空間が拡張し、目の前に体長100メートル程の狼型巨神獣が現れる。

 

「グルルルル……」

「……これはどう言う原理だ? 俺が小さくなったのか? それともこの空間が広くなったのか?」


 俺は久しぶりに自分が疑問を感じていることに気付く。

 あの空間では初めの方は疑問ばかりだったが、それも2億年程で解決したので、もう数億数千万年は疑問なんて感じていなかった。

 

「ははっ……楽しみだ」

『———それでは開始してください』

「グルァア!!」


 受付人の声と共に、巨神獣が牙を突き立てて俺に向かって飛び掛かる。

 その速度は優にスポーツカーの最高速度を突破しており、さながら弾丸の様に俺に突撃していた。

 一般人どころか、そこらの覚醒者でも避けれる者は少ないだろう。


 しかし、この程度俺には止まって見える。

 巨神獣が俺に近付く前に、拳で空を撃ち、風圧だけでを巨神獣の頭ごと消し飛ばず。


 パァァァァンッッ!!


 頭が弾ける音が部屋全体に轟いて響き渡り、頭だけでなく、全身の3分の1を吹き飛ばされた巨神獣は体の制御を失い、攻撃を受けたままに俺とは反対側の壁に激突。

 その後で灰のように消えていった。


「まぁこんなものか。次行こう」

『な、な、そ、そんな馬鹿な……!?』


 驚き過ぎて受付人が敬語を忘れている。

 まぁB級を瞬殺なんてS級位でないと出来ないからな。

 一介の受付人が驚かない方が逆におかしいくらいだ。


「次行こう。早く」

『あ、は、はいっ! 次はA級行きますっ!』


 その言葉と同時に、今度は熊型の巨神獣が俺の前に現れるが、この種類は見た事がない。

 熊型ならパワー系だと思うが……。


「グォオオオオッッ!!」

「!?」


 俺は突進を予測していたが、見た目とは裏腹に口からビームを吐き出した。

 流石A級なだけあって、ビームの威力、速度、範囲共に悪くない。

 

「まぁそれだけなんだが」

「グオッ!?」


 俺はまるで虫を払うようにビームを片手で撥ね返す。

 見た感じ炎属性だと思うが、俺の防御力だとこの程度温い温い。

 

 本当は此処で先程の様に風圧だけで殺してもいいのだが、試験として戦っているので、計測が出来るまでもう少し遊ぼうと思う。


「よし、少し俺と遊ぼう熊さん」

「グォオオオオッッ!! ガァアアアアアア!!」


 俺が少し笑みを浮かべて言ったのが癪に触ったのか、怒りの咆哮を上げて、今度は前足を振るって先程俺がやった様な風の刃で攻撃して来た。


「こんなことも出来るんだな、お前。意外と強いじゃないか」


 そう言いながらも、当たる前に同じく拳圧を用いて的確に打ち消していく。


 確かにコレ程の強さであれば、A級と言われるのも納得だ。

 先程の狼と違って、この熊は近接に優れているのは言わずもがな、ビーム吐くし拳圧ならぬ爪圧を出してもくるので遠距離にも優れているため、パーティーでないと狩りにくいだろう。

 そもそも巨神獣自体が人が斃せる様な輩ではないのだが。

 

 しかしそろそろ終わらせてもいいだろうか?

 既に何回もビームや爪圧は防いでいるし、近接は力比べ(巨神獣は両手、俺は片手&異能なし)もしたので、そろそろ計測が終わっている頃だと思うのだが。


「もう倒してもいいのか?」

『えっ、今すぐに倒せるのですか?』

「ああ」


 俺は一瞬で熊の懐に入ると、鳩尾狙って強烈なアッパーをお見舞い。

 

 ズパァァァァァンッッ!!


 何も篭っていないただのパンチで熊の100メートル越えの体の中心に何十メートルもの穴が開き、声も上げる間も無く地に沈んだ。

 

「どうだった? 計測出来たか?」

『あ、あ、あっはい。け、結果をお伝えしますので、さ、先程の受付までお戻りください』


 めちゃくちゃ噛みながら受付人が言い、同時に部屋の扉が開いた。

 俺はいつの間にか戻った部屋の様子を一瞬観察するが、あまり待たせるのも可哀想なので、素直に戻る。


 受付には、何故か目が泳ぎまくっている受付人と、何とも言えぬ微妙な顔をした洋介さんの姿が。

 此処でラノベの主人公なら「何があったんだろう? 俺がまさか弱過ぎたとか?」なんて思うだろう。

 しかし俺の予想としては「さっきまで胡散臭い目で見てたの怒られないかな?」とか「こんなに強かったんだな……」などと思っているのではないだろうか。

 あながち間違いではない気がする。


「それで、結果は?」

「は、はい! 斎藤神羅様の取得等級は———SS級です!!」


 ———どうやら俺は、思った以上に過小評価されているらしい。


 そんなことを思った再登録検査であった。



—————————————————————————

 明日からは毎日18時投稿です。


 それとマジでフォローと☆☆☆宜しくお願いします。モチベ維持に繋がるので! 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る