脱出方法

ジェットコースターから離れて座り込んでいると少しずつ気持ちが落ち着いてくる。

それでも真っ青な顔をしているんだろうなと、自分でもわかった。



「クレジット人間の制度を利用して一括払いにするとああなるってことか……」



さっきから落ち着きなく歩き回っていた尋が呟く。

クマはたしかにそのようなことを言っていた。

何億もするダイヤモンドを一括払いで購入したのだと。



「どうしてあの子は拒否しなかったんだ?」



そう言ったのは智道だ。

あの子とは、死んでしまった男の子のことだろう。

ゲームに負けても一括払いにしなければ生きていたかもしれない。

過酷な労働が待っていたかもしれないけれど、それでも死んでしまうよりはマシだと思う。



「チームに問題があったとか?」



私はふと思いついたことをそのまま口にした。

それぞれのチームはどうやら顔見知り同士でできているらしい。

けれど全部のチームがみんな仲良しというわけでもないだろう。

自分たちのチームだって、繭乃や智道との接点は同じ高校ということだけだ。

そうやって選ばれたチームの中で、彼は元々立場が弱かったのかもしれない。

元に、目の前で死んだというのにチームのメンバーは悲しんでいる素振りも見せていなかった。

思い出すと胸が悪くなりそうな光景だ。



「なるほど。チーム内に上下関係があって、拒否できなかったか……」



尋がなにか考え込むような素振りを見せる。

だけど今の私にはそんなことどうでもよかった。

やっぱりこの遊園地は異常なのだ。

こんな大事故が起こったにも関わらず、スタッフたちは誰も出てこない。

対処する人が誰もいないのだから。



「早くここから出よう」



立ち上がると足元がふらついた。

あまりのショックでまだ体がふらついている。



「大丈夫か?」



智道が手を貸してくれて、どうにか足を前に踏み出した。

さっきの事故を見ていた子どもたちが一斉に出口へと向かうのが見える。

みんな、ようやく脱出する気になったんだろう。

重たい体でどうにか入場ゲートまでやってくると、20人ほどの子どもたちが集合してた。

これだけの人数がいればシャッターを壊すことができるかもしれない!

期待が胸に膨らんでいく。

どこで見つけてきたのか、バールのようなものを持っている子もいる。



「ここにいて」



智道に言われて私と繭乃は少し離れた場所で立ち止まった。

ここで近づいて行っても邪魔になるだけだ。

智道と尋のふたりがシャッターヘと近づいていく。

何人かで息を揃えてシャッターをあげようとするが、やはりうまくいかない。

今度はシャッターの下の隙間にバールをねじ込んで歪みを作ろうと試みる。

シャッターはガシャガシャとうるさい音を立てるものの、少しも歪む気配が見られない。



「ここまでしてるのに……」



やっぱり、私達に逃げられないように頑丈な作りになっているんだろう。

こうして逃げようとしているのに、止めに入る人が来ないということはそう簡単には突破できないということだ。

ついさっき感じた希望がどんどん小さくしぼんでいく。

きっと、園内にいる子どもたちが全員集まったとしても、このシャッターを壊すことは難しいんだろう。



「ダイヤモンドでも手に入るんだね」



明るい声に驚いて振り向くと繭乃が園の地図を凝視していた。



「そんなものいらないでしょ」



目を輝かせている繭乃に吐き捨てるように答える。

人がひとり死んでいるのにそんなことを言うなんて、不謹慎すぎる。



「さっきの彼は一括払いだったから死んだだけ。分割払いにすれば死ぬこともなかったってことでしょう?」



それはそうかもしれないけれど、今は脱出のことを考えるべきだ。

私はもう返事をしなかった。

男の子たちが力づくでシャッターを開けようとしているのを見守る。

少しでも歪んでくれれば、少しでも隙間が空いてくれればそこから希望が見えてくるはずだ。

知らない間に両手を胸の前で組んで拝むようなポーズをとっていた。



「それにしても暑いよね。ホテルで涼みたい」



繭乃がぶつぶつと文句を言って手の甲で汗を拭う。

さっきから衝撃的な出来事の連続で、暑さのことなんて忘れてしまっていた。

気がつけば私の額にも汗が滲んできていた。

長時間ここにいることはできなさそうだ。

シャッターを開けようとしている男の子たちの間にも、明らかな疲労が感じられた。

一旦休んだ方がいいのかも。

尋と智道に声をかけようとしたとき、ピンポーンと園内チャイムが鳴って私は動きを止めた。

こんな風にチャイムが鳴ったのは初めてのことだ。

男の子たちも動きを止めて不安そうな表情で耳を済ませている。

辺りは急に静けさに包まれた。



『入場ゲートにいるみなさまに連絡です』



その声は着ぐるみのクマの声だった。

スピーカーを通すと更に気味の悪さを感じる機械的な声だ。



『脱出方法をお教えします』



私は目を大きく見開いて繭乃を見た。

クマがここからの脱出方法を教えてくれる?

それは本当に信用できるものなんだろうか。

緊張からゴクリと唾を飲み込んで次の言葉を待つ。

繭乃は面白くなさそうに唇を尖らせている。



『この遊園地から出るためには……ひとり一千万円をお支払いください』



クマの言葉にスッと血の気が引いていく。

ひとり一千万円。

4人で四千万円も支払えっていうの!?

途方もない金額にめまいが起きて、その場に座り込んでしまった。



「そんな大金払えるわけねぇだろ!?」



シャッターを壊そうとしていた男の子たちから怒号が上がる。

そのとおり、そんな大金私達が支払えるわけがない。

つまり、ここから出ることはできないということ……!!

その事実に打ちのめされたとき、繭乃が微かに口角を上げて笑った。

だけど私はそれに気が付かなかったのだった。


☆☆☆


愕然として座り込んでしまってもクマの説明はまだ続いていた。



『みんなここで目を覚ましてから何時間か経過するけれど、そろそろこの遊園地の存在意義が理解できたかな?』



さっきまでとはうって変わって明るい声色になる。

それでも私の気持ちは落ち込んだままで、浮上することはなかった。



『この遊園地は無差別に選ばれた子供たちを連れてきたよ!』



本当にそうだろうか?

少なくてもチームには顔見知りという規則性がありそうだ。

他のチームに知り合いは見かけていないけれど。



『なぜ連れてこられたのかって? それはねぇ』



クマがもったいつけるように言葉を切る。

その呑気な間のとり方に、苛立った空気が流れてくる。

みんな外へ出ることができなくてストレスを感じ始めているみたいだ。



『君たちの欲と恐怖を丸裸にするためだよ!』



クマの言葉に私は眉を寄せた。

欲と恐怖を丸裸に?

それってどういう意味だろう。

確かにここへ来てから恐い経験ばかりをしているけれど、そうしたところでどうなるというんだろう。



『まず、この遊園地内には沢山のカメラが仕掛けられていて、リアルタイムで配信されているよ!』



その言葉に男の子たちがざわめいた。

遊園地なんだからカメラくらいあっても不思議ではないけれど、ここではそういう意味ではないと思う。

もっと、金持ちの大人たちが絡んだ、汚いイメージが湧いてくるのだ。



『視聴者さんはみんなお金持ちで、動画を見てもらうだけで園の収益になるよ!』



やっぱりそうなんだ。

ここの映像は高額販売されているということだ。

怖がる私達を見て喜んでいるヤツらがいる。

そう思うと腸が煮えくり返りそうになる。

自分たちと同じ用に、ここに連れてこられればいいのにと思う。



『更に面白いのが、君たちがなにを欲しがるかの集計を取っていることだよ!』



園内でクレジット人間を利用した買い物などの情報が、そのまま売買されているということだ。



『園内で購入の多かった商品は外の世界でもきっと売れる。そのための試験って感じかな!』



ただお金を支払って購入するのではない。

ゲームで負けた仲間に労働させて手に入れるのだ。

そこまでして手に入れたい商品なら、きっと売れると判断したのだろう。



『そうそう! ひとついいことを教えておいてあげるよ!』



クマが今思い出したという様子で話を進める。



『ここでうまく高額商品を手に入れた子たちは、外に出られたときに大手企業からのスカウトがあるかもしれないよ!』



大手企業からのスカウト。

ということは、誰でも知っているような企業がこの園に加担しているということだ。

だから、こんなに大掛かりな誘拐、監禁ができるんだ。

私はキツク下唇を噛み締めた。

これじゃ脱出することは不可能かも知れない。

クマが言っていたようにお金を手に入れるしかないのかもしれない。



「ふざけんなよ!」



男の子のひとりがスピーカーへ向けて怒鳴りつけた。

その目は釣り上がり、怒りで顔が真っ赤に染まっている。



「ここから出せ!」


「何が一千万円だ! 誘拐してきたくせに!」



ひとりの声が引き金となってあちこちから怒号が上がる。

そのとき、男の子がシャッターの凹凸に足をかけて登り始めたのだ。

シャッターの上部はアーチになっているが、その上はアーチの屋根になっている。

うまく上りつめることができればそこから逃げることができる!

私は息を飲んで男の子を見守った。

アーチの天井まで10メートルはある。

大橋くんが登ったフェンスと同じくらいの高さだ。

落ちたらひとたまりもないが、下にいる男の子たちからは「頑張れ!」と、声が聞こえてきた。



「ばっかじゃないの」



繭乃のつぶやき声に驚いて視線を向ける。

繭乃は園の地図をお尻に敷いて座っていた。

「あんなことしても、アーチの向こう側がどうなってるかわかんないのにね」

フェンスの向こうはすべて森になっていた。

アーチの向こうにも森が広がっているかも知れないと言いたいのだろう。

だけど私はその可能性は低いと思っていた。

森だとしても、車が通れるほどの道はあるはずだ。

じゃないと、私達をここまで連れてくることができない。

私はまた無意識の内に胸の前で手を組んで祈るポーズをしていた。

そして登っていく男の子を見守る。



「俺たちも登ろうぜ!」



下で待機していた数人の男の子たちも腕力に自信のある子たちはフェンスの凹凸を使って登り始めた。

最初に登りはじめた男の子はすでにフェンスの頂上に到達していて、どうやってアーチをまたぐか思案している様子だ。

だけど、アーチにも模様が施されているから、うまく手や足をひっっかけることができれば向こう側へ行くことができるはずだ。

暑さも忘れて男の子たちが登っていくのを見守る。



「もう少しだ! 頑張れ!」



智道が下から声をかけているのがきこえてきた。

そうだ。

私にだってできることはある。



「頑張って! ここから脱出して!」



両手をスピーカーのようにして声を張り上げる。



「ちょっとやめなよ。余計な体力を使うだけだって」



隣では繭乃が呆れ顔をしているけれど、関係ない。

私は懸命に声を張り上げて登っていく男の子たちに声援を送る。

その声は少しでも彼らの背中を押すことになったら、それでいいんだから。



「頑張って! もう少しだよ!」



何度目かの声をかけたときだった。

私の声は大きな音にかき消されていた。

耳をつんざくような、間近でバクチクを鳴らされたような音だった。

驚いて目を見開くと、一番上までよじ登っていた男の子が落下していくのが見えた。

え……?

男の子体は力なく地面に叩きつけられ、その瞬間血しぶきが散った。

なにが起こったのか理解が追いつく前に、再びパンパンパンッ! とバクチク音が響く。

その度にフェンスに登り始めていた男の子が落下していく。



「拳銃だ!」



誰かの悲鳴でそれがバクチク音ではなく、銃声であることに気がついた。

悲鳴と同時に逃げ出す子供たち。

私は呆然とその場に立ち尽くしてしまった。



「なにぼーっとしてんの! 逃げるよ!」



いつの間にか立ち上がっていた繭乃に腕を掴まれて無理やり走らされる。

何度も足が絡まりそうになりながらも、私たちは近くの建物の陰へと身を隠した。



「だから余計なことだって言ったでしょう!?」



息を切らしながら繭乃が怒鳴る。



「でも……だって……」



拳銃で撃ち落とされていった男の子たちの光景が脳裏にこびりついて離れなくて、放心したようにしかしゃべれない。

地面に落ちた子の体は手足が奇妙な方向へ折れ曲がり、頭をへしゃげていた。



『わかったら遊べ! 好きなだけな!!』



スピーカーからクマの乱暴な声と笑い声が聞こえてきて、プツリと途切れた。



「ここからは逃げられない。無駄なことして体力を消耗したくないの」



繭乃に睨みつけられて私はなにも言えなくなってしまった。

繭乃のようにいとも簡単にこの状況に適応してしまうことなんて、私にはできないから。

走って疲れたせいもあってしばらく物陰に隠れて座り込んでいると、智道と尋がやってきた。



「ここにいたのか。大丈夫だったか?」



尋の言葉に私は曖昧に頷く。

私自身はまだ無傷だけれど、次にはどうなってしまうかわからないという恐怖が常につきまとっている。



「外にでるのは無理みたいだ」



重たい声色で言ったのは智道だ。

その顔は青ざめていて汗が流れ出している。

みんなで脱出を試みて、相当体力を消耗したのだろう。



「外に出るのに必要なのは一千万。4人で協力してお金を貯めるしかないのかもしれない」



智道の言葉に繭乃が顔をしかめた。



「一千万円なんて大金、どうやって稼ぐのよ?」



園内にいるかぎり、その中でお金を稼ぐ以外に方法はない。

つまり、労働だ。

4人全員が一致団結すれば支払えない金額ではないかもしれない。

だけど、全員分で四千万円が必要になるのだ。

大人が稼ぐのだって大変な金額。

更には、生活をしていく必要だってある。

稼いだお金をすべて脱出のための費用に回すことはできないということ。

そう考えると途方のない時間がかかることがわかる。

私達はこの遊園地から何十年も出られないことになるんだ。



「でも稼がないと出られない!」



繭乃の言うことも、智道の言うこともわかる。

だけどどうすればいいかわからない。



「……とにかくここにいてもどうしようもないよね。もう少し園内を歩いて、どこかに脱出できるところがないか探そうよ」



今私達にできることはそれくらいだ。

従業員たちが常に出入りしているような扉がどこかにあるかもしれないし。

私はよろよろと立ち上がったのだった。


☆☆☆


この遊園地は普通の規模の遊園リよりも少し大きいようで、奥へ進むとうさぎやモルモットといった動物たちを見ることもできた。

広いから、簡易的な動物園が併設されているみたいだ。



「動物か。ちょっと安心するな」



尋が私の隣に立ち、小屋の中に入っている白いウサギを見つめる。

ウサギは外の世界の惨事なんて知らない様子で細切りになったニンジンを食べている。

その食べ方が可愛らくして思わず頬が緩んだ。



「そうだね。ずっと見ていたいね」



ここにいれば辛い現実なんて忘れることができそうに思えた。

だけど、ここだって所詮は遊園地の中だ。

そう簡単に現実から目をそむけることはできなかった。



「よっし! じゃあ、ババ抜きな!」



そんな声が聞こえてきて視線を向けると、ひとつのチームが今まさにゲームを開始しようとしていた。

ゲームにトランプを選んだようで、テーブルを挟んでふたりずつに別れてベンチに座っている。

彼らはなんのためにゲームをするんだろう?

食事?

それとも買い物?

みんなの動向が気になってつい耳をそば立ててしまう。

少し離れた場所から彼らのことを伺っていると、挙動がおかしい女の子がいることに気がついた。

おかっぱ頭でメガネをかけたその子のジャージがやけに汚れていることも気になる。

他のみんなは仲良さそうな雰囲気なのに、おかっぱの子だけなにか怯えているのだ。



「ほら、配れよ」



一番リーダー格そうな男の子がおかっぱの女の子にトランプを投げてよこした。

女の子はトランプを取り損ねて地面に落としてしまう。

慌ててトランプを取ろうと手を伸ばせば、その手を踏みつけられる。

3人から笑い声が漏れて、おかっぱの子は下唇を噛み締めて耐えている。

その光景に胸のあたりがムカムカしてくるのを感じた。

まさか、イジメ……?

そうとしか思えない光景。



「由紀子って本当にトロイよねぇ。学校でもそうだったし」


「体育のときとかひどかったよなぁ」



そんな会話が聞こえてきておかっぱ頭の子が由紀子という名前だとわかった。

由紀子は引きつった笑みを浮かべてトランプをテーブルに置いた。

その手の甲は少しすりむけて血が滲んでいる。

痛かったに違いないのに、由紀子はさっきからなにも言わない。

いや、なにも言えないんだ。



「はやく配れよ」



ババ抜きだと宣言したいた男の子は自分ではなにもせずに由紀子にすべてをやらせている。

由紀子がトランプを配る様子もどこかおどおどしていて、みんなに怯えているのがわかった。



「あれじゃ可愛そうだよ」



ポツリと呟くと智道が小さく頷いた。

だけど、ここでは自分の命だって危険な状況なのだ。

人のことを助けている場合ではない。



「弱いからイジメられるの。そんなの仕方ないじゃん?」



軽い声色で言ったのは繭乃だ。

繭乃はいつの間にかペットボトルの水を持っている。



「それ、どうしたの?」



驚いて尋ねると「一本100円だったから、数分の労働で買えたけど?」と、ペットボトルを振って見せる。

そうか。

ペットボトルの飲み物程度なら簡単に購入することができる。

だから繭乃はいちいちゲームなんかせずに、自分で労働して手に入れたんだ。

繭乃の性格ならなんでもかんでも人に購入させようだけれど、そうじゃなかったみたいだ。

少なくても、今見ているチームほど悪くはないのかもしれないと思えてくる。



「なにニヤニヤしてんの? 気持ち悪い」



つい繭乃のことを見つめてしまって嫌な顔をされてしまった。

慌てて視線をさっきのチームへ戻すと、すでにババ抜きが始まっていた。

しかし、明らかに様子がおかしかった。

由紀子以外の3人が目配せをしあって、どこにババがあるか教えあっているのは明白なのだ。

由紀子から見てもそれはわかっているはずなのに、なにも言えずにいる。



「よし! あがり!」



ババ抜きを提案した男の子が一番に上って立ち上がる。

かと思えば、男の子が由紀子の後ろに立ったのだ。

ジャージのポケットから小さな手鏡を取り出したかと思えば、それで由紀子の手元を映し始めた。

残りの2人はそれを確認しながら行きこのカードを引いていく。

そうすると、当然2人の手札はどんどん少なくなっていく。

最悪なのは由紀子が途中でババを引いてしまったことだ。

こうなるともう決着がついたようなものだった。

2人はゆうゆうと勝利し、由紀子が負けてしまう。



「お前、トランプもできねぇんだな」



最初にあがった男の子がバカにしたように由紀子の頭を叩く。

由紀子だって不正があったことに気がついていたはずなのに、なにも言えないまま俯いてしまった。

きっと、学校内で毎日のようにイジメられていて、ここでもなにも言えずにいたんだろう。



「あんなのずるいよ!」



思わず声を上げる。

由紀子のいるグループへ近づこうとすると、尋に腕を掴まれて止められてしまった。



「他のグループのことに首を突っ込むなよ」


「でも、ほっとけないよ!」



このままじゃ由紀子がクレジット人間になってしまう。

残りの3人がどんな風に由紀子を扱うかわかったものじゃない。

下手をすれば、ジェットコースターにいた男の子みたいになるかもしれないんだ。

でも、今ならまだ助けることができる!

この不正をクマに伝えれば、対処してくれるかもしれない!

私は尋の手を振りはらって駆け出したのだった。

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