第24話 先輩コラボ配信(1)

 私、有澤叶は今ある見知らぬ人物と同じ部屋にいる。

 まぁそれだけならベつにいいのだが1つだけ問題がある……それは……


「えっと……名前聞いても?」

「あっ……え……その……」

「「……」」


 この人多分俗にいうコミュ障なのだ。

 私が話しかけようとすると無茶苦茶片言みたいに話してくるし、あっちからは話しかけてこないし……

 おかげですごい気まずい空気が流れている。

 そんなことを思いながら静かに座ってるとドアが勢い良く開く。


 「す、すいません!遅れました!」


 入ってきたのは私のマネージャーの坂本さんだ。

 今回私をここに呼び出したのも彼女である。


「あの坂本さん……」

「?なんでしょうか?」


 坂本さんに向けて手を招いきこちらに来させる。

 

「これどいう状況ですか」

「それこみで今から話すんで待っててください!」

「……わかりました」


 そう言うと坂本さんは私の側を離れ、私と目の前の女性の中間らへんに立つ。


「それでは今からミーティングを始めたいと思います」


 そう言うと坂本さんはタブレットを操作する。


「まずは紹介から。こちらは3期生の【榛野カスミ】さんです」

「成程……同じ配信者……ってえぇ!?」


 私はそれに驚愕を覚える。

 配信者とはいわばリスナーとコミュニケーションを取ったりするのが大事だ。

 それなのにこんなコミュ障気味な人が配信なんて本当にできるのだろうか。


「そしてこちらが3.5期生の【アリシア・アンモライト】さんです」

「うぇ……あ……よろ……おなしゃす……」

「よ、宜しくお願いします……」


 でも坂本さんが言ってるのだからそうなんだろうなと思う。

 様子を見ていた坂本さんがタブレットをまた操作し、口を開く。


「今回はお二人のコラボについて話していきたいと思います」

「コラボですか」


 まぁ確かにこれまででコラボといえば詩織としかやってなかった。

 だから坂本さんは他の人とのコラボを組んでくれたのだろう。


「それでコラボは何をするんですか?」

「コラボの内容は……ゲームですかね……」

「無難ですね」

「日程は?」

「来週の土曜辺りかなと」

「了解です」


 私と坂本さんで話をどんどん進めていく。

 ふとカスミさんの方を見るとガクガク震えながらこっちを怯えた顔で見ているのが分かる。

 それが猛烈に気になった私はもう一度坂本さんに声をかける。


「あれ大丈夫なんですか……?震えてますけど」

「え?……あぁ……カスミさんのマネさんにはこっち出全部きめてもらっていいって言われてるんで」

「いやそういう問題じゃなくて」

「とにかく!ここはコラボしといたほうがいいですよ」

「はぁ……」


 そうして私達のコラボが決まったのだった。


 ――――――――――


「ふぅ……大丈夫ですかね……」


 あの会議から一週間が経った後、私は配信準備を終わらせて通信アプリを開いていた。

 カーソルが指しているのは今日コラボ配信をする榛野カスミのアイコンだ。


「本当に行けるんですかね?」


 あのコミュ障具合を見たら本当に不安になってくる。

 それに今日はゲーム配信だ。私とカスミさんが話してかつ、ゲームの内容にも触れるという行為をしなければならない。


 不安で仕方ないが通話開始のボタンを押し、電話をかける。

 するとピロンっという音がなり、通話が開始されたことを伝えてくる。

 さて……相手は話さないだろうから私から話そうかと思い、口を開こうとした瞬間、あちらから声が聞こえてきた


「もしもーし?聞こえてるー?」

「えっ?……あっはい聞こえてます」

「そう。では改めて……私がGO!ライブ!3期生の武家娘!カスミよ!よろしくね!」

「は、はぁ……アリシア・アンモライトです」


 私はかけるとこを間違ったと思い、通話アプリを確認する。

 だがいま通話してるのはちゃんとカスミさんであることがわかった。

 なんでこんな流暢に話せているのか甚だ疑問になり、頭がゴチャゴチャになってくる。

 そんな中、私は一つの可能性にたどり着いた。


「あの……」

「ん?なに?」

「中身変わりました?」

「ブフッ!?」


 考えられるのは1つだけ。中身が変わったということだ。


「あんた中々失礼ね……変わってないわよ。先週あったカスミよ!」

「え……えぇ……」


 じゃあなんでそんな流暢に話せるんですかね……


「私ね。顔をあわせて話すと途端に緊張で声が出なくなるけどネットとかで話すとペラペラ話せるの。だから先週はあたふたしてたんだよ」

「……そういうこともあるんですね」

「ちなみに先週のことはミジンも覚えてないわ!」

「そんなに緊張してたんですか!?」


 そんなレベルのコミュ障だとは思わずに声を荒らげてしまう。

 まぁでもこれなら配信できるかと思い、私は配信開始のボタンにカーソルを合わせる。


「それでは今から始めたいと思うんですけどいいですか?」

「ええ!構わないわ!」


 ――――――――――


「皆さん。今回もご縁がありとても嬉しいです」

「そこになおれ!私こそがGO!ライブ!3期生カスミである!」


 コメント

▷きたー!

▷ははっ!

▷5円ー!

▷この二人のコラボは予想してなかったwww


「今日は二人でア○ビ大全をやっていきたいと思います」

「私が圧勝するから覚悟なさい!」


 コメント

▷え?アリアって……

▷しっ……

▷カスミが調子乗ってるんだから黙っとけ


「?なんかアリアあるの?」

「いや特にありませんけど……」


 果たしてこの配信は無事におわれるのだろうか……

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